こんにちは、平です。
先日、私どもの古い受講生が結婚しました。
彼女はとても優秀で、キャリアも十二分に積んだ女性でした。
ご両親が早くに離婚され、おかあさんに育てられてきたのですが、そのおかあさんから口グセのように「手に職をもつなどして経済力を身につけておかないと、おかあさんのように苦労するわよ」と言われてきたのだそうです。
性格的には負けん気が強く、親分肌もあったせいか、男性とは競争する場面が多かったようです。そのため、それなりの男性と知り合ってもすぐに競争相手になってしまい、なかなか上手に恋愛できずにきました。
が、負けん気が強いがゆえ、「べつに、男なんてどうでもいいもん」とか「結婚して家に入るなんて、私には向いてないもん」などと自分に言い聞かせ、彼女なりに独身生活を謳歌していたわけです。
そんな彼女なのですが、私どものセミナーに来ると、「みんなは癒されているのに、私はいつもセミナーのあと、しんどくなるんです」と言うのです。
「なんで、しんどくなるんだろう?」
「‥‥なんとなく」
「淋しくなったりしないかい?」
そう聞くと、彼女は泣きはじめました。
子どものころからずっと、彼女は淋しい思いをすることが多かったようでした。が、それは彼女にとって、「仕方がないこと」だったわけです。
おかあさんは一生懸命働いている、それは生活のためにしょうがないことでした。だから、彼女も努力家のがんばり屋さんになり、弱音を見せずにきたのです。
そして、淋しさについても、彼女はただ「しょうがない」とがまんしつづけてきたわけですが、ここにきて、その淋しさを貯めていたダムがいっぱいになり、ついに決壊してしまったようなのです。
そんなあるとき、大きな仕事が終わり、彼女は会社の同僚であったいまのご主人と二人で打ち上げをしていました。
そこはちょっぴりロマンチックなバーでした。カップル・シートなどもあって、恋人たちは夜景を見つつ、甘い雰囲気でカクテルを飲んだりしているわけです。
今回は打ち上げとはいえ、男女二人で行ったわけですから、お店は当然、カップル・シートを用意しました。
まわりはイチャイチャとしているカップルばかり。いつもなら男まさりのリーダーシップを取る彼女ですが、このときはその場でどうふるまえばいいかわかりませんでした。
すると、同僚であったいまのご主人がこう言ったそうです。「こんなとこぐらい、いつも来てるんじゃないの?」
でも、実際、彼女は一度も来たことはなかったし、そもそも、自分を女性として扱ってもらうという経験がほとんどなかったのです。
そして、お店の雰囲気に負け、おどおどと自信なさげな態度になってしまったわけですが、ご主人には、ふだんとはまったく違うその様子がものすごくかわいく見え、彼女に恋をしてしまったそうなのです。
その後、つきあうようになった二人ですが、彼女はどんどん疑い深くなっていきました。
彼との親密感を感じれば感じるほど、離れているときに、彼女が長いこと封印してきた淋しさを感じてしまうからです。
彼に対しては、「ほんとうに、ほんとうに、ほんとうに?」とばかり聞いていたそうです。
そこで、彼が言ったのが、「だったら、結婚すればいいじゃない」という言葉。
それでもなお疑いつづける彼女を彼は口説きに口説き、ようやく、彼女も彼のことが信頼できるようになって、結婚へとこぎつけたわけです。
昔、私が書いた文章に、「淋しさという感情がなかったら、だれも結婚しないと思いませんか?」というものがあったのですが、彼女はどうもこれがずっと気になっていたようでした。
そして、彼女がずっと押し込めていた淋しさという感情のフタを開け、この感情を感じるようになってきたとき、いつも頭の中に浮かんできたのが、いまのご主人の顔だったそうです。
読者のなかにも、いま、淋しさを感じているという人はいらっしゃることでしょう。そんなあなたがほんとうに求めているのは、淋しさではなく、親密感であるはずです。
では、次回の恋愛心理学もお楽しみに!!