愛を受け取るということ

こんにちは、平です。

恋愛に関するさまざまなご相談の中で、とくに深刻なものの一つが家のために養子をもらわねばならない」という女性たちのお悩みです。

たとえば、農家や料亭・旅館などを営む家に女の子しか生まれなかたために、「養子をとっても、なんとかしてこの家業を続けていかなければ‥‥」というような場合です。

ひどいケースでは、その娘さん個人の好みなどはまったく顧みられず、「家の存続のために、代々そうしてきたのだから‥‥」という理由で自己犠牲を強いられるケースもよくあります。

それでもまだ、養子さんが決まればよいほうなのです。
養子を探している間に娘さん自身がかなり年配になり、結局、結婚できなかったという場合もけっして少なくありません。

そして、「私の人生、いったいなんだったんだ?」と悔やむことになったり、つらいケースでは、家族から「おまえが養子を見つけてこないから、先祖代々の家が断絶してしまう」と責められたりする場合もあるわけです。
私の地元はけっこうな田舎で、まわりに農家が多いので、似たような状況のお宅が何軒かあります。

結婚しないまま高齢となってしまった女性は、おとうさんが亡くなり、おかあさんが亡くなり、当然、子どももいませんから一人になり、
「自分が死んでしまったら、この家はどうなってしまうのだろう‥‥」と危惧しながら生きているわけです。

私は、この養子に関するご相談をいただいたときはいつも、「あなたが養子をとらず、家を出て好きな人と結婚したとしても、子どもがいれば、ずっとお墓参りぐらいはできるでしょ?」などとアドバイスしています。

実際、いまのご時世で、婿養子を見つけるのはとても難しいことであるようです。
昔々、日本という国がとても貧しく、人々がごはんも満足に食べられなかったような時代には、婿に入れば豊かな暮らしができるということから、養子に入るという選択をする男性もいたようなのですが、いまはまったく違います。

それでも、おとうさんやおかあさんは、「自分たちもそうしてきたのだから、娘にもなんとか同じようにしてもらいたい」と思ってしまうのですね。
その結果、下手をすると、娘から恨まれたり、家を出ていかれたりと、とてつもなくつらい状況になることも多いようなのです。

そうしたご両親とお話ししてみると、ほとんどの方の口から「ご先祖様に申しわけなくて‥‥」という言葉が出てきます。
でも、はたして、ご先祖様はほんとうに怒っていらっしゃるのでしょうか?

たとえば、ご先祖様は「できるだけ多くの田畑や山を子孫に残したい」と考えたことでしょう。
しかし、それは「子孫が食べるのに困らないように」と思ってしたことであって、もちろん、残したものが子孫の苦労の種になることなどは望んではいらっしゃらないはずです。

わが家は意外と古い家系で、家には古文書のようなものがあります。
それを見ると、どうも、お米があまり収穫できず、食べるのもたいへんだった飢饉の時代があったようでで、「そんなときのために、できるだけ多くの田畑を子孫に残したい」というようなことが記載されていたりするのです。

しかしながら、現代の農家は農作物を作ることだけでは生活が成り立たなくなってきています。そこで、サラリーマンをしながら生計を立てているものの、もらったボーナスをすべて農機具の購入費用に充てたりしなければならないなどという状況で、なんのために農家を継いでいるのかがわからなくなってしまっている家もとてもたくさんあるのです。

‥‥なにぶん、私は農家のことにはものすごく詳しいカウンセラーですから、このへんのこともいっぱい知っているのです。

心理学では「受け取れない」という言い方をするのですが、愛情ある行為を受けることを、「相手に迷惑をかけている」と誤解することが私たちにはよくあります。

たとえば、あなたが子ども時代、夜中によく熱を出し、そのたびにおかあさんに病院に連れていってもらったとします。それを私たち大人は、よく、こんなふうに誤解します。

「私は子どものころ、夜中にちょくちょく熱を出しては、母親におぶられて病院に連れていってもらった。母親には迷惑をかけたなぁ」。

でも、おかあさんに「夜中にさぞや迷惑だったことでしょうね」

とインタビューしてみると、みな、「親として、当然でしょう」とおっしゃるはずです。
つまり、事実は「親に迷惑をかけたなぁ」ではなく、「親に愛されていたなぁ」なのです。

どうも、誤解があるがゆえに、愛を受け取ることを「迷惑をかける」と思ってしまうことが私たちにはあるようです。
ご先祖様の愛についても、同じことがいえるのではないでしょうか。

では、次回の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。