仕事が出来る部下が欲しかったと嘆く前に

職場の人間関係は大抵自分で選べませんよね。自分で選べない上に、人が自分の期待するように動いてくれないとストレスを感じてしまうでしょう。

もっと仕事のできる部下だったら良かったのに、と、溜息まじりに思ってしまう前に、部下があなたの思い通りに仕事を進められない理由とその対応策を心の面から探ってみませんか?

●仕事の質問ができない

仕事を効率的に進められるあなたは、部下がなぜ仕事を思い通りに進めてくれないのか、理解し難い時もあるかもしれません。

そのような時、部下が仕事を進めるために本当にわからないことは、上司のあなたが説明を十分したから大丈夫、と思う事とは別にあるのかもしれません。
しかも直接上司に聞くことが出来ないという点がそもそも問題なのかもしれません。

心理学には転移という考え方があります。

これは過去の人間関係、例えば親に対する態度や感情を目の前の人物、この場合上司に対して向けるようになる事を言います。多くの場合は無意識に行われます。

そのため、かつて例えば両親が高圧的で、わからない事や出来ない事を正直に伝えると叱られる等の状況であったとすると、現在目の前の上司に対しても、わからない仕事のことを「わからない」と言えないことになり、その結果仕事がいつまでも適切に行われないという事が続く場合があるでしょう。

部下が質問をすることさえ躊躇しているかもしれない状況を理解し、何に躓いているのかを一緒に整理してあげることも有効かもしれません。

上司としての圧力をかけるのではなく、部下が「こんなことを言ったら叱られるかな?」と思っているかもしれない、ということを心に留めておくだけでも、部下が親の転移を手放すきっかけになるかもしれません。

●プライベートに問題?

部下が仕事に集中していないように見えるとき、プライベートに何か問題を抱えていて、それを人には言えないために気もそぞろ、ということがあるかもしれません。

会社の上司と部下の関係では、プライベートはどこまで立ち入って良いものか難しいと思うこともあるかもしれません。しかし、実際にプライベートの問題の相談に乗ることがなくても、部下のプライベートを思いやるということはできるのではないでしょうか。

最近では介護や育児など、会社ぐるみでプライベートを大切にするしくみが整備されつつあるようですが、仕事の現場が必ずしも気持ち良くプライベートを優先出来るところばかりではないかもしれません。

そのためにも、プライベートに軽く触れる会話を普段から続けてみることで、部下が今何か問題を抱えていないかアンテナを張りながら、何かあれば心配せずにプライベートを優先して良いことを常々部下に伝えることが大切なのではないでしょうか。

もちろん部下がプライベートを優先しなければならない状況になると、上司のあなたに負担がかかることも考えられます。しかし緊急事態にはお互い様、ということかもしれません。

自分が大切にされていると思うことで相手に心を開き、相手をも大切にしたいと思えることは、その相手が会社や上司であっても、大切な家族やパートナーであっても同じことなのかもしれません。

●仕事に興味がない

管理職になるほどのあなたは、もしかしたら仕事の面白さを自分で見つけているかもしれませんが、部下は仕事に興味がなく、単に生活のため、お金のために仕事をしている場合もあるでしょう。

仕事の楽しさや面白さは上司であるあなたが楽しく仕事をしている姿を見せることで伝わることも多いでしょう。人は何かを楽しそうに集中している人を見ると、なぜそんなに楽しくやっているのか興味を持つものかと思います。

あなたが仕事を楽しみながら、何を楽しいと思っているのか、どのようなことにやり甲斐を感じているのか、それを伝えていくことは、部下にとっても新鮮な驚きや楽しみになるかもしれません。

●つながりを感じられる職場に

部下が思い通りに仕事をしてくれないと思う状況に共通するのは、上司から部下への積極的なコミュニケーションが改善の要になるということかもしれません。仕事の実績に対する評価で物事が決まることが多い職場であったとしても、人と人が関わっている場であることに変わりはありません。

人はつながりを感じている時こそ自分の力を発揮しよう、相手に対しても出来るだけのことをしてあげよう、また職場全体をも良くしよう、と前向きになれるのではないでしょうか。

仕事そのものの実績のあるあなただからこそ、部下に自らコミュニケーションして行き、部下が「一人でやらねばならない」というプレッシャーを軽減させて仕事のやる気を起こさせる、そんなことを行える力をも持ち合わせているのではないでしょうか。

この記事を書いたカウンセラー

About Author

職場の人間関係、夫婦・家族の問題を主に扱う。 「解決したい問題がある時に、悪いところを探して正そうとするのではなく、自分の魅力や才能を受け取れば物事を全く別の見方で捉えることができ、自分の枠から自由になり、のびのびと楽に毎日を送れるようになる」というスタンスでカウンセリングを行っている。