中絶から立ち直るには

相談者名
あかね
私は3年前に夫の子供を中絶しました。結婚2年目でした。
その頃夫はアルコール依存症で殴られはしなかったものの、家具を壊したり暴言を吐いたり、首を絞めたりすることもありました。

予期せぬ妊娠は夫の自分勝手な欲求から発生したものでした。
そのときは避妊をしてくれず、私も激しく抵抗するのが怖く、不安な気持ちのままのセックスでした。

その後妊娠が発覚したとき、生きた心地がしませんでした。夫からさらに逃げられなくなると考えたのです。子供を盾にされ、ずっとこの先夫に恐怖を覚えながら、子供に暴力が及ばないように、私は自分と子供を守られるか必死に考えました。
考えた末、現状では自分の命さえ危ういのに子供を守る余裕がないと答えが出ました。

夫も私が自殺しようとしたり、ひたすら自分を責めて壊れていく私を見て
中絶に同意してくれました。

あれから3年が経ちました。夫はアルコール依存症から抜け出し、カウンセリングも受けて私に対する暴力も無くなりました。夫は以前の自分を反省し、一生償うと言ってくれるまでになりました。

夫婦関係は良好なのですが、私自身、まだ中絶の苦しみから解放されることはありません。むしろ上文は子供を堕ろす言い訳に聞こえてくるようになりました。
時々、フラッシュバックが起こり、自己嫌悪になります。楽しいことをしていると我に返って、死んだ子供に申し訳ないと思う日々です。
これは普通のことなのでしょうか?
自己嫌悪や自分の幸せへの罪悪感が無くなり、ただ悲しみと子供へ感謝になるには
どんな気持ちで乗り越えればいいのでしょうか?

カウンセラー
中村友美
あかねさん、はじめまして。
今回担当させていただく中村友美と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。

3年前に中絶したことの苦しみから抜け出せないのですね。
とってもつらかったですね。

「もう3年」なのかもしれませんが、
「まだまだ3年」とも言えます。

でも、あかねさんは
もう十分にがんばってきましたよ。
もう十分に苦しみました。
もう十分です。

もう、解放されていいんです。
あかねさんは、しあわせになっていいんですよ。

さて、突然ではありますが、
あかねさんは阪神淡路大震災を経験された消防士さんたちの話は
聞いたことがあるでしょうか?

あれから、20年経ちますが、未だにPTSDで
それこそフラッシュバックや眠れない、などで苦しんでいる人が
たくさんいらっしゃるそうです。

彼らは、助けられなかった、数えきれない命のことを思い、
救えなかった仲間たちを思い、
翻って自分が平和な世の中でのうのうと生き延びている、
という事実に苦しんでいるのです。

では、彼らはやるべきことをやらなかった人たちなのでしょうか?

違いますよね。一生懸命力の限りを尽くしたんです。
それに、助からなかった命だけではなく、
救えた命だってたくさんあったはずなんです。

本当は自分を責める必要はないのに、
「自分は無力であった」
「もっと方法はなかったのだろうか?」と
自分に問い続けているのです。

でも、こういった自分を責める気持ちが出てくるのは
気持ちに一区切りがついて自分の生活が多少落ち着いてきたころなのです。

自分の毎日にゆとりが生れてはじめて、過去のことを悔やむわけです。

それは、そうですよね。
今自分の目の前に救うべき命があるなら、
過去をなげき悲しんでいたのでは、作業がすすみません。
そのせいで、また救えない命を増やしかねません。

それに自分自身が生きるのに必死なときは
自分の食べるものを確保するなど、やることが盛りだくさんで
過去を振り返る余裕なんてないのです。

お分かりになったかもしれませんが、
今、あかねさんはご主人がアルコール依存症から抜け出し
生命の危機がなくなったからこそ、
「あの時、私がもっと頑張ればなんとかなったのではないか?」
とご自分を責めて苦しんでおられるんです。

まずは、ご主人との生活が安定したことを喜んでください。
ご主人がアルコール依存症から抜け出せたこと
本当によかったですね。
きっと、あかねさんと二人三脚で頑張られたのでしょうね。

そして、赤ちゃんのこと、当時は確かに力が及ばなかったのかもしれませんが、
それでも、自分なりに精いっぱいやったうえでの判断であったはずです。
自分の守ることに必死でしたよね。
子どものことも守らなきゃと不安でしたよね。
決して簡単に責任を放棄したんじゃないんです。
苦渋の決断だったはずです。苦しみ、迷い抜いたはずです。
そう、本当に「余裕」がなかったのです。
ただただ、それだけが真実なんだと思います。

あかねさんが悪いわけではないんです。
状況が許されない状況だったのです。
だからこそ、どうぞご自分を許してあげてほしいんです。

そしてもう一つ、池川明さんというお医者さんをご紹介させてくださいね。
「赤ちゃんはお腹にいた時の記憶を持っている」という
【胎内記憶】に関する本を多数書かれている方です。
池川先生がおっしゃるには、赤ちゃんがどの親の所に産まれてくるのか
産まれてくるかどうかも含めて自分で決めているのだそうです。
流産する子も中絶となる子も自分の意志で天に還るのだそうです。

地上がどんなところか下見にふらっとやってくる子もいれば、
何か伝えたいメッセージがあってやってくる子
命を懸けてお母さんを助けに来る子など色々なのです。
でも、ここで大事なのは本人がそれを希望してやってきているのだということ。

あかねさんの赤ちゃんに直接聞くことはできなので、想像するしかありませんが、
きっとお母さんを助けるためにやってきてくれたのではないでしょうか。

妊娠・中絶はご主人の立ち直りを後押ししてくれる理由にはなりませんでしたか?
あかねさんの苦しみがご主人に伝わる機会にはなりませんでしたか?
あかねさんが、自分自身を守ろうと思うきっかけにはなりませんでしたか?

もしも、赤ちゃんの目的があかねさんを助けるためであったとしたら、
あかねさんには笑顔でいてほしいと思うはずです。
泣いてばかり、自分をせめてばかりでは、
それこそ赤ちゃんが報われないと思うのです。

赤ちゃんは、あかねさんのことを恨んでなんかいませんよ。
ぜひ、あかねさんも自分を許してあげてください。
楽しく幸せに笑顔でいてください。
赤ちゃんの一番の望みは、きっとそれに尽きます。

これからは、「ごめんね」ではなく「ありがとう」
を伝えていきたいですよね。
赤ちゃんの応援に応えるためにも
必ずしあわせになってくださいね。

最後までお読みいただきありがとうございました。
あかねさんの心が晴れ渡りますように
心よりお祈りしておりますね。

中村友美

この記事を書いたカウンセラー

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