失った情熱

相談者名
「Canvas2 虹色のスケッチ 」という作品があります。
言ってしまえば、アダルトゲーム(アニメ・漫画)なのですが、
画家志望だった主人公が、ある事件がトラウマとなり、絵に対する情熱を失ってしまうという設定なのです。
それが、なんとなく、今の自分とかぶさってしまってます。

私も絵を描くのが大好きでして、将来は「その道に」と思っていたのですが、ある事件がきっかけで、絵を描くことがトラウマになってしまい、今ではすっかり、その情熱を失ってしまいました。
というよりも、今では絵を描く事事態が苦痛になってしまいました。
そんな心理状態で絵を描いても、絵に暗い影を落としてしまいます。
いい絵なんて、描けるはずもありません。楽しんで描いていた昔に戻りたいです。やる気を取り戻してみたいです。

「Canvas2 虹色のスケッチ 」の主人公が、どういう結末を迎えたのかは、
作品をよく見てないので知らないのですが、私ももう1度、その情熱を取り戻してみたいです。
ですが、なかなか上手くいきません。
このままでは、応援して下さった方もいるのですが、その方の期待も裏切る事となり、大変心苦しいです。

もちろん、自分次第というのは、わかっているのですが、なかなかうまくいきません。
もう一度、あの頃の気持ちを思い出したいです。
自分自身に腹が立って仕方ありません。
自分の心の弱さが原因というのはわかっています。
それでなおさら、腹が立つという悪循環です。

カウンセラー
嶽きよみ
Hさん、はじめまして。今回、担当させていただきます 嶽と申します。

なんだか、とても お辛い様子が伝わってきました。

以前は、あんなに情熱を持って出来たことが、今はそれを苦痛にさえ思う…。
それって 本当に苦しいですよね…。

私自身、「Canvas2 虹色のスケッチ 」という作品を見ていないので その主
人公がどんな様子なのかはわからないのですが、Hさんは、過去の事件の傷
がまだ癒えていらっしゃらないにもかかわらず、描くことが辛いという今の
状況までも、重ねて ご自分を責めていらっしゃるかのようですね。

応援してくださっている方が まわりにいらっしゃるならなおさら、そのお気
持ちは辛いのではないかと思います。
少しでも、何か 心の助けになれば、と思って お返事を書かせていただきます
ね。どうぞよろしくお願いいたします。

では今回は「情熱」というものについて 少しお話をさせてくださいね。

Hさんが、

> もう一度、あの頃の気持ちを思い出したいです。

と書いてくださっているのは、いつごろの ことだったでしょうか?

もしもそれが、絵を志した初期の頃であるとしたら、その情熱というのは、
きっとものすごいものがあったのだろうな、と お察しいたします。

わたし達は、未知のものを知っていく、つまり、知らないことが多ければ多い
ほど(もしくは 未熟であればあるほど)、進歩のスピードが速いため のめり
こみやすくなり、そこに「熱」を感じます。
それは、恋愛の初期に、相手の事が もっと知りたい、もっと近づきたい、と
いう想いととても似ています。

でも、そうやってどんどん自分が向上したり、いろんなことを学んでいくうち
に、進歩のスピードはだんだん緩やかになり、そのうち全く先に進んでいない
ような気がして、ジレンマを感じて苦しくなってきたり、落ち込むような出
来事が起こったり、飽きた、という感覚が出てきたりします。
それは、わたし達が成長した、ということでもあります。

少し話しは変わりますが、例えば わたし達の「色」の記憶は、実際の色より
も鮮やかな色として記憶に残ります。
つまり、過去の記憶は 実際のその場のものより強い印象に感じるということ
なんですね。だとしたら、過去の「情熱」という記憶もまた、実際のその時
の感覚よりも強いものとして記憶に残っているのではないかと思うんです。

今のHさんは、これまでいろんな経験をされてきたことで、その頃のHさん
よりも、ずっと 先に進んで来られたのではないかと思うんですね。
だからこそ、楽しんで描いていた昔「そのもの」の感覚に戻ることは難しい
と思うんです。
それは、知ってしまったことを 知らなかったことにする、というようなもの
だからです。

なのでもし、その頃の感覚に戻れるとしたら、それは、過去のHさんが感じ
ていたように、さらにまた大きな未知の領域を感じる、ということが必要な
のではないかと思います。

それは、熟練の人が、一度 全くの基本に戻ることで、今まで見えなかったも
のが見えてきたり、全く違う角度のものをやってみることで 初心者にになっ
てみることに似ているのかもしれません。

> そんな心理状態で絵を描いても、絵に暗い影を落としてしまいます。

と、いうことですが、Hさんがお描きになりたいのは、「明るい絵」のみな
のでしょうか?

絵は、きっと Hさんの心を写し出す鏡のような存在なのではないかと思いま
す。だからこそ、向き合うのが苦しい部分もあると思うのですが、その苦し
い想いそのものを表現することもまた、Hさんの新たな作品作りのステップ
となるのではないだろうか、と感じたりもしました。

Hさんが、どんな画家を目指していらっしゃるのか分からないのに こんなこ
とを言っていいのか わからないのですが、
もしかしたら まずはHさんが思う、理想のいい絵を描くことを目指すのでは
なく、ありのままのHさんを表現する手段、という在り方で絵と向き合って
みる、ということもひとつなのではないでしょうか。

> 自分の心の弱さが原因というのはわかっています。

ただ、心の弱さは、作品を作る人にとって、言い換えれば 必要な要素でもあ
るのではないかと私は思います。それは、Hさんには 微細なものを感じる力
がある、ということだからです。

ですから以前の気持ちに戻ろうとするのではなく、Hさんの心にある「気」
を新たに「育てる」というつもりで、まずは種を蒔くことから始めてはいか
がでしょうか。
種を蒔く、というのは Hさん自身が たくさん感動する、ということです。

過去のトラウマを 一人で乗り超えていく必要はありません。Hさんは、罪悪感もたくさん持ってしまわれているようなので、それを解決して行くのが難し
いようなら、カウンセラーと一緒に向き合ってみてくださいね。
これから少しでも、楽な気持ちで絵に向かえるようお手伝いをさせていただ
ければ嬉しいです。

ご相談いただき ありがとうございました。

嶽きよみ

この記事を書いたカウンセラー

About Author

柔軟な視点で問題を捉え「人間関係」「自己表現」「セクシャリティ」に関する悩みを多く扱う。 特に、現役で自身のビジネスも続けていることから、やりたいことを見つける、夢を叶える、など自己実現のサポートを得意としている。 「見た目の印象とは違い、声に癒される」との声が多く寄せられている。