大人の視点で母親を理解できると、自己肯定感がかなり上がる
母親に理想の女性であってほしいという気持ちは、セルフイメージがかかっているだけに切実です。母親のダメなところが自分にもあるとは思いたくないので「許せない」のです。特に、娘は、同性なので無意識のうちに母親と競争してしまうので、母親の、素晴らしくて自分には敵わないと感じているところも、ダメなところと同じように否定的に見ます。母親を許せないところは、自己攻撃しているところでもあるので、大人の視点で母親を理解できるようになると、それだけで自己肯定感がかなり上がります。
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こんにちは。
カウンセリングサービスのみずがきひろみです。
私たちが、「お母さん」が「女神さま」のように優しい人であって欲しいとこれほどまでに願う気持ちは、それがセルフイメージに関わるから、でもあります。
子供の頃、人としてのあり方を教わったのは、「親」から、でした。その「親」が「いい」親ならば、自分も「いい」大人になれそうに思います。でも、その「親」を「いい」ものとして尊敬できないと自分のことも「いい」大人とは思えないので苦しいのです。
思春期には入り、子供の頃に絶対だと思っていた「親」の嘘や弱さが見えてくると、親を批判して「自分流」を確立しようとしますが、「親」の弱さが自分の中にもあるかもしれないという不安は、どんなに親を否定しても拭い去ることはできません。
「自分にも同じものがあるかもしれない」と思うからこそ、「素晴らしい親であってほしい」と思うのです。特に、女性の場合は、同性ですし、母親のありようは、何かと自分を確立する上での基準になりますから、「お母さん」の嫌なところからは、なるべく遠いところに自分のアイデンティティを作りたくなります。
例えば、お母さんがヒステリックなタイプで、いきなり怒り出す理由がよくわからずに怖い思いをした子供は、怒りという感情が自分にあると思いたくありません。誰かを自分のように傷つけたくないのです。なので、怒りを深く抑圧して、けんかにならないようにまわりの人の気持ちを汲み、気を使うタイプになることが多いです。
そうまでして怒らないように頑張っているのに、おこりんぼのお母さんを許すと、その子供である自分もおこりんぼになりそうで怖くて許したくありません。
逆に、「お母さん」のことを素晴らしいと思っているからこそ、同性である娘は、そんな「お母さん」にかなわないと思うと、同じところで競いたくなくて、「お母さんを許せない」と思ってしまうこともあります。
例えば、とても女性らしく、華やかでセクシーな「お母さん」だとすると、そんな「お母さん」の魅力にはかなわないと思う娘は、おとなしく、しとやかだけれど、地味なセルフイメージを作り上げて、セクシーな魅力を閉じ込めてしまいます。これは、自覚しにくいので、「私にはセクシーな魅力なんて無い」と思い込んでいらっしゃる方が多いですが、「お母さん」を許せると上品でセクシャルな魅力が輝き出します。
「お母さん」に対する自分の恨みつらみを受け入れられたら、次の段階では、「お母さん」をこれまでとは違う視点から理解できるかどうかにチャレンジしてみましょう。
子供に対して怒って、罵詈雑言を浴びせて気分がいい母親はいません。大抵は、しばらくして落ち着くと、今度は自分を責めて、持っていき場のない思いを相方である「お父さん」にぶつけたり、お酒を飲みすぎたり、浪費したり、と憂さ晴らしをしているのではないでしょうか。私は、カウンセリングで、夜になると子供の寝顔に謝る「お母さん」たちの思いも聴いてきました。
「お母さん」がヒステリックにならざるを得なかったのはなぜなのでしょう?「お母さん」が自分の気持ちは、誰にもわかってもらえないと思っていたとしたら、それはどうしてでしょうか?「お母さん」も、「お母さん」の「お母さん」にわかってもらえなかったのでしょうか?「お母さん」にも、「優しいお母さん」がいなかったのでしょうか?
「お母さん」は、どんなことに悩み苦しんでいた人なのでしょうか?子供の目で、「お母さん」を見ると、「お母さん」がしてくれなかったことへの恨みつらみが上がってきますが、一人の女性として「お母さん」を見たとき、彼女はいったいどんな人生を歩んでいる人なのでしょうか?大人の目で、「お母さん」の人生を見てみましょう。大人になった「今」だから、理解できることがたくさんあるはずです。
一人の女性としての「お母さん」は、どんな素晴らしい資質をもっていますか?思いつくままに書き出してみてください。それは、「あなた」も、「お母さん」から引き継いで持っていらっしゃるものです。もし、そうとは思えないとしたら、まだ「あなた」がそれをご自分の中にあると承認できなかったから、使いきれずにいるものです。必ず、「あなた」の中にも、その「素晴らしさ」はあります。
一人の女性としての「お母さん」は、どんな「痛み」を抱えていましたか?「あなた」は、それをどう助けたい、と思っていたのでしょう?「お母さん」の役に立つ人になりたかったですか?「お母さん」の気持ちに寄り添ってあげたかったですか?「お母さん」を笑わせて楽しませてあげたかったですか?思い通りに「お母さん」が反応してくれないこともあったかもしれませんが、「あなた」は、「お母さん」に「つながり」や「安心感」や「喜び」「楽しさ」といったものをたくさんプレゼントしてきたはずです。
もう一度、「あなた」が「お母さん」にプレゼントしたかった「つながり」や「安心感」、「喜び」「楽しさ」を、心の中で贈ってみましょう。心の中の「お母さん」が笑顔になるまで、繰り返し贈るといいようです。
そして、「今」だから、大人の「あなた」として、「お母さん」にしてあげられることを考えてみませんか?そんな大げさなことでなくていいのです。ご機嫌伺いの電話を入れてみる、母の日や誕生日にカードを贈ってみる、「お母さん」の手料理をご馳走になりに行くというような、「お母さん」がちょっと笑顔になれることでできそうなことは何でしょうか。
「今」だから、「理解」できること、「今」だからしてあげられること、ありますよね。一つでも、二つでもできると、「あなた」の自己肯定感が上がることを実感していただけると思います。「お母さん」を理解して、承認することは、「自分」のルーツを承認することなので、「あなた」の自信を大きく後押ししてくれます。
>>>『お母さんを許せない心の癒し方(4)〜受け取り上手になるために〜』へ続く