せっかく育て上げた部下が、「会社を辞めて独立したい」と言ったとき。
「よし、これで契約が取れる」と確信を得ていたはずの顧客から、急にお断りの連絡が入ったとき。
上司に忠誠を示して一生懸命に取り組んだのに、蓋を開けてみたら、上司が手柄は全部、自分のものとして話しているのを聞いてしまったとき。
信頼して任せていたはずの経理担当者の横領が発覚した!など、ビジネスの現場でも「裏切られた」というような経験をしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
このようなショッキングな体験をしてしまうとき、私たちの深層心理にはどのような背景があるのでしょうか?
●「裏切られた」と感じる体験をしたときの心理
「裏切る」という言葉がありますが、私たちが「裏切られた!」と感じるような体験してしまうときというのは、自分が相手に「依存」していたことをお知らせしてくれるサインです。
たとえば、小学生や中学生の頃、仲良くしていたお友達が他の子と親しそうにしているのをみて「裏切られた!」と思って、とても悲しい思いをした経験がある方もいらっしゃるのではないかと思います。
それはその友達に「依存」していた証拠。
この依存は、実は大人になってからも原理は同じなのです。
たとえば、会社の上司が部下を一生懸命にサポートして育て上げ、自分の右腕となるくらい実力を発揮できるようになった頃、「会社を辞めて独立したい」などと言われてしまうことがあります。
そんな時、上司が「こんなに育ててやったのに、恩を仇で返す気か!」「俺の下でもっと忠誠を尽くして働け!」と思ってしまったり、実際に言動で示すようなことがあるのなら、それは部下に依存していた証拠なのです。
その人がたとえ上司という立場だったとしても、上司としての「器」はまだまだだったのかもしれません。
だからこそ、その部下は見切りをつけて自分の道を切り開いて行こうと思ったのかもしれません。
経理担当者の横領問題なども、そのような事態になってしまったというのなら、信頼して任せていたつもりが、実は、仕事を預けすぎて依存していたと言えるのではないでしょうか。
「裏切られた」と感じる背景には、「依存心」が働いています。
その深層心理には、「この部下を手元に置いておく方が便利だ」「自分よりも成功して欲しくない」と思っていたり、「自分の知らないところで新しい人脈をつくって欲しくない」などの気持ちがあります。
そして部下も「この上司の力で、自分を売り出してもらいたい」「この上司に目をかけてもらって、大きなビジネスチャンスをもらいたい」など、深層心理での隠れた取引や「共依存の関係」が存在しているときに、「裏切られた!」となり、嫉妬や絶望感を感じてしまうようなことが起きてしまうのです。
従業員の横領問題なども、このように何らかの「共依存」的な状態の背景が長らく潜伏していたということが多くあります。
横領した側が「このくらいならいいよね」と思えるような出来心が生まれやすい背景には、管理者や上司との関係で、上司側の心理的な「依存」状態にこれまで耐えていたなど、感情レベルの問題が潜んでることが少なくないのです。
●成功者の心理と視点
さて、ここからは、少し視点を変えてみていきましょう。
成功者と呼ばれる人たちには、この「裏切らる」という概念がなくなっていくと言われています。
たとえば、ある成功者が、とても可愛がっていた部下がいたとします。
その部下もまた、上司のために心を尽くして、自分ができうる限りのことをすべてしてきました。
そんな部下が、ある日「これから独立して、自分の力で仕事をやってみたい」と切り出したとします。
その時、成功している人ほど、そこで引き止めたり、凄んだり、罵ったりなどということはしません。
では、どのような対応をするかというと、「君の人生なんだし、君が挑戦したいなら、思う存分やるといい」「必要ならば、私はいつでも君のことをサポートするよ」と言って、一人前になった部下の成長を、喜んで送り出します。
そんなことができる上司や成功者は、それだけ心の「器」が大きいのです。
本物の成功者と呼ばれるような人達は、依存の関係をつくりません。
なぜなら、立場の違いがあったとしても、一緒に仕事をしていく仲間は「対等な関係」として扱うからです。
それぞれの立場の違いを尊重した上で、「自分主体の目標」を持った人を育てるようにすることが、本当の成功者です。
けっして権威を乱用し、人に何かを押し付けたりコントロールすることがないので、ここでは真の「信頼関係」が育っていくのです。
だからこそ、このような方の部下は、自分をひとりの人間として尊重してくれる上司に対して、依存することなく、自分なりの目標を持って経験を積んでいくことができます。
また、「自分主体の目標」で取り組みますから、自信も責任感も育ちますし、そのような育て方をしてくれた人に対しても信頼が増していくような関係性が得られるのです。
ビジネスにおける人間関係について、ぜひ、この辺りを目指していきたいですよね。