僕たちみんなの心にある「欲求」。特に「重たさ」を作る過剰な欲求について研究してみました。
「彼に重たいと言われて・・・」という経験のある方。
意外に多いのかもしれません。
あるいは部下や後輩、恋人から頼られすぎて重たい思いをされた方も多いでしょう。
その重さとは、多く無理な欲求(ニーズ)によるもののようです。
「どうして電話くれないの?」
「私のことだけ見て」
「わかんないからやって頂戴」
などなど。
これって実際に言葉に出してなくても、態度や言葉遣いから相手に伝わってしまうものなんですよね・・・。
無理な要求だと分かっていても、気持ちがついていかなくてついつい彼にぶつけてしまった経験をしたこともあるかもしれませんし、その後にものすごい自己嫌悪に襲われてしまったこともあるでしょう。
そして、誰も分かってくれない・・・と常に怒りや悲しみのオーラをいっぱい発している人だっているかもしれません。
僕たちはみんな誰か(何か)に依存しなければ生きていけない反面、依存しすぎると重たく感じて遠ざけられてしまうというジレンマを抱えながら生きています。
ある人は誰にも依存しない生き方を選ぼうと自立し、ある人は自分は何も出来ないと思って常に依存できる人を探しています。
人に頼らないと決めた人もアルコールや仕事に依存してしまうこともありますし、誰か頼る人を探しているとしたら、常に不安や恐れにさいなまれてしまうでしょう。
そのバランスは誰もが難しいと感じていることなのかもしれませんね。
カウンセリングで出会うそんな悩みを持った方々は、皆さん自分のこと、自分の感情のこと、驚くほど分かってらっしゃいます。
でも、どうしようもならない・・・どうにもならない・・・という思いでいっぱいのようです。
無理な欲求をしてしまう訳
「彼がとても優しくて、一生懸命与えてくれるんだけど、満たされない思いを常に感じて『もっと、もっと』と要求してしまう。それどころか、優しくしてくれればくれるほど、その欲求はどんどん強くなって、ますます無理な要求を押し付けてしまうんです」
なぜなんでしょう?
それを解くカギは大きく分けて二つあると僕は考えてます。
本当は誰に対する欲求なんだろう?
ひとつは「自分が本当に欲しているものは実は彼から欲しいものではない」という潜在的な欲求による場合です。
普通の大人であれば、彼氏とは言え、他人に対して過剰な要求をぶつけることはなかなかできません。
「私ってすごく彼の負担になってしまうんです」という方も、知り合った最初からそんな態度を取っていたわけではないでしょう。
もちろん、彼の優しさが自分の心に隠れていた欲求を引き出してくれたことも確かですが、その一方で、彼の姿が心理的に他の誰か(多くは両親)にダブってしまっていることが多くあるようです。
だから、彼にどれだけ優しくしてもらっても満たされたという満足感は得られません。
だって本当に欲しいのはお母さんからの愛情だから・・・。
僕はそんなときによく「あなたの心の中にはお母さんからの愛情を欲しがって、飢えてしまった小さな女の子がいるみたいですね」という表現をしています。
大人の女性がそんな態度を取るのは自分自身でもなかなか理解できないもの。
でも、小さな女の子が「寂しいよー。かまってよー。」と言ってる思えば比較的理解しやすいでしょ?
(この女の子のことを「インナーチャイルド(心の中の子ども)」といいます)
こんなときはその小さな女の子の部分を満たしてあげる必要があります。
誰に?お母さんに?そんなことできないわ・・・と思われる方。
それはまだまだ先のことですので、ご安心下さい。
まずは、大人の自分がその子をかまってあげることです。
この講座の色んなところで出てくるインナーチャイルドワークというのは、実はこの目的でもよく使われるものです。
感情というのは、実際に体験しなくても、こうしたセラピーやイメージワークを使うことで実際に体験したのと同じ効果を得ることができます。
そして、この体験をすることで、自分の心や感情と上手に付き合って行くことができるようにもなっていきますし、徐々にお母さんへの怒りや不満を解消してくれますので、お母さんとの距離を縮めていくこともできます。
欲求が悪者なんじゃなくて・・・
さて、もうひとつは、欲求というのは果ての無いものであるということが言えます。
例えば、朝ご飯を食べても昼過ぎにはお腹が空きますね。
それで悩む人ってあまりいないと思うんです。
「昨日の夜はたっぷり睡眠取ったのに、また眠たくなっちゃった・・・」と真夜中に嘆く人もあまりいないでしょう。
実は欲求ってそういうものなんです。
一度満たされてもまた欲しくなるもの。
だから、彼に今日優しくしてもらったら、またその次の日も優しくして欲しいと思うのが自然な心の原理なのかもしれません。
でも、そこに「もう優しくしてもらえないかも・・・」という不安があったらどうでしょう?
朝ご飯を食べてるときに、もう二度とご飯を食べられないかも・・・としたら、お腹がいっぱいになってもまだまだ食べておかなきゃいけない気持ちになるでしょうし、ご飯を食べ終えることもできなくなるかもしれません。
満たされたとしても、まだ足りないという心理はもともとある欲求にこの不安な思いが作り出すとも言えるのではないでしょうか。
そういう意味では欲求自体は自然なものだけど、そこに不安や恐れなどの感情が絡んでくるのが問題のようですね。
無理な欲求が招くもの
そんな過剰な依存心が作り出すものは様々な心理・行動です。
欲求そのものよりも、この二次産物(?)が他人に対して重たい印象やウザい感覚を与えてしまうようです。
要求的態度
いけないと思っていても「何で私のこと放っておくのよ!!」という要求をしてしまうことです。
これが「彼氏なんだから私を愛すべき」という観念になったり、「どうせ、電話なんてしてくれないよね」と意固地になったり、色んな態度に変形することもあります。
心の中ではサイテーな自分と思いながらも、ついついしてしまう態度かもしれません。
執着
上に紹介した「もう二度とご飯を食べられないかも」というくだりです。
欲求に不安や恐れが混じれば、しがみついて失わないようにしたくなります。
それが重たい印象を余すところなく相手に伝えてしまうのでしょう。
恨みや憎しみ
僕たちはみんな愛されたいという欲求のために頑張ったり、犠牲をしてしまうことが良くあります。
「頑張ってテストでいい点取ったら誉めてくれる?」
「お手伝いをしたら、お菓子を食べさせてくれるの?」
という経験から学んだ法則かもしれません。
でも、そこで誉めてくれなかったら、お菓子をくれなかったら・・・?
そこで頑張った分だけ怒りを感じます。
「なんでくれないの!?頑張ったじゃないの!!」と。
傲慢さ
「何でくれないの!!!」という部分。
心の中では「もらって当然」と思っているのでしょうか?
上の恨み・憎しみが固定化すると、常に自分の心の中には不足感や不満がたまりますから、誰かに何かをしてもらっても、それが当然の報酬のように感じられて与えてくれたものを素直に受け取ることも、その人に感謝することも出来なくなってしまいます。
誰かのせいにしてしまう
「私がこんなになってしまうのはお父さんのせいだ!頑張ったのに全然誉めてくれないじゃないか!ふんっ。もういらないもん!!!」
と自分を不幸の道へと自ら足を踏み込んで行ってしまうことって案外良くあるものです。
お父さんのせいでこんなになってしまうとしたら、お父さんが変わらない限り(出来れば丁重に私の気分をもてなして、平身低頭謝るべきだ、とか思うこともある)私はここを一歩も動かない、と固い決意をしてしまうでしょう。
そのときは誰の助けや慰めも一切不要。
これは裏を返せば、お父さんに対する復讐として自分を不幸にしているとも言えます。
脱!依存体質
そんな自分を変えていこうと思うときの一つの目標が「与える自分」になることです。
欲求は常に当たり前のように存在するものですから、満たしきることはできません。
それを満たそう、満たそうとするのは、いわば常にご飯を食べつづけるようなもので、仮に手に入ったとしてもオデブになってしまいます。
そうすると「欲張り」「わがまま」「自己中」なんてレッテルがぺたぺたと張られてしまうわけですね。
もらうことよりも、あげることに意義を見出せるようにシフトチェンジしていくことが大切な目標になります。
そんなん出来ないわ・・・と思ってしまうかもしれませんが、案外、そうせざるを得ない状況がやってきたりします。
誰かを失ったり、周りから孤立してしまったり、子どもが生まれたり、部下の教育係になってしまったり。
彼に負担をかけすぎて彼を失ってしまったとしたら、とても辛い状況になりますね。
自分を責めてしまったり、彼に執着したり、自暴自棄になってしまったり。
でも、そこで「自分を変えていこう」という勇気がどん底から自分を救ってくれます。
多くの方のお話を伺って分かってきたことですが、このチャンスを逃して自分を変えずにいると、もっと深刻な状況がやってくるようです。
まるで、神様がいて「早く自分を変えた方がいいよ」と変わる決意が出来るまで何度も何度も繰り返し辛い状況を作ってくれているようです。
ヴィジョン
ここまで読まれてきて、気分が悪~くなってしまった方もいらっしゃるかもしれません。
そしたら、それがあなたのインナーチャイルドの葛藤と思ってもいいですが、やはりハッピーエンドにしましょう。
過剰な欲求をしてしまう人には、自分ではなかなか気付けないけど、大きな価値を持っているのも確かなようです。
そのひとつは、繊細な心を持つことから、他人への配慮・気配りがとても上手なこと。
また情の深さも一級品です。
例えば、友達を招いてホームパーティを開いたりすると、参加者にとってはとても居心地のいい場を作ることができるでしょう。
あるいは誰かにプレゼントを選ぶときも、その人の好みやセンスにフィットしたものを選ぶことができます。
そして、誰かの話を聞いてあげるのも実はとっても上手だったりします。
ですから、結果的にみんなから慕われる「人気者」になります。
人に配慮できるのも、その人を大切に思う気持ちがとても強いから。
だから、誰かの愛を求める立場から、与える立場になったときにはパートナーにとってはこの上ない理想的なパートナーになることもできます。
また、意外かもしれませんが、自分から与えて行くことを意識して行くだけで、勝手に欲しいものを楽に手に入れられるのも特徴です。
人気者、というところからなのかもしれませんね。
今本当に欲しいものが手に入らないとすれば、今のやり方を変えてみることで、欲しいものを手に入れられる自分になることができるでしょう。
※今回の本文中で触れるとまるで女性ばかりが過剰な欲求を持っているように思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、男性も同じです。特に最近は、20代前半以下では男性の方が以前よりもこの傾向を強く持っているようです。