心の成熟さを持った関係性
私たちの心の成長プロセスは、最初はいかにして愛されるか?という「依存」のステージ。
次にいかにして傷つかないか?という「自立」のステージ。
そして、自立の先にある「相互依存」というステージへと進んでいきます。
「相互依存」のプロセスに入ると、自立と依存を行ったり来たりすることでどちらの立場の喜びも受け取れるようになります。
そんな自由で楽な関係性へ進んでいくための基礎的なお話をお届けします。
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こんにちは。カウンセリングサービスの近藤あきとしです。
今日の心理学講座は私たちの『心の成長プロセス』についてお届します。
とても基礎的な理論なんですが、それだけに恋愛・家族・ビジネスなどあらゆる対人関係に応用ができるお話です。
皆さんなりに活用していただければと思います。
心理学では、私たちの心は「依存」⇒「自立」⇒「相互依存」という3つのステージを経て成長していくと考えられています。
たとえば、産まれたばかりの赤ちゃんは何もできませんよね。
ミルクを飲ませてもらったり、オムツを変えてもらったりと、親にすべてをお世話してもらわないと生きていけません。これは依存の段階にいるということです。
次第に成長するにつれて少しずつ自分でできることが増えてきます。
オモチャを片付けたり、一人で着替えをしたりと、親を頼らなくても自分の力で解決できるようになり自立の時代が始まります。
しかし一人で頑張るのはいずれ限界を迎えます。
そこで誰かと協力し合い、お互いに助け合いながら、共通の目標へ進んでいく道を選べるようになります。これは相互依存のステージでできることです。
私たちは【相手】次第で他人まかせの依存の段階からスタートして、【自分】一人で何とかする自立の時代を通り、【誰かと共に】喜びを分かち合うことのできる相互依存のステージへと成長するのです。
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この成長プロセスは、様々なジャンルの対人関係に当てはめることができます。
恋愛の場合で考えてみましょう。あなたにおつき合いしている彼(彼女)がいると思ってみてくださいね。
<依存のステージ>
恋愛当初は【彼(相手)】から愛されているかどうかが、とても気になってしまう人は多いのではないでしょうか。
彼から連絡が来ると幸せな気持ちになれるけれど、そうでないと不安になってしまったり。
「こんなこと言ったら嫌われるかな?重い女になってないかな?」と、わがままを出さないようにしたり、彼の望むことにNOを言わないように我慢してしまうこともありますよね。
いかにして愛されるかを学ぶのが「依存」のステージです。
<自立のステージ>
依存の時代にたくさん頑張ったけど上手くいかずに傷ついた経験があると、今度はいかにして傷つかないかを学び始めます。「自立」の時代の始まりです。
彼に合わせて振り回されて傷ついたので、今度は【自分】のやり方で関わりたくなります。なぜなら自分が振り回す側になればもう傷つかなくて済むと思うからです。
それに依存のステージでは表現できなかった「あなたの言うことより、私の考え方のほうが良いわよ」「それって男性目線の一方的な見方じゃないの?」など、自分の意見を主張することで彼をコントロールしたくなります。
彼とのお互いのやり方や自己主張が衝突することが増えます。これも自立のステージの特徴の一つです。
ここでは自分の依存心を嫌い、禁止することが増えてきます。
自分が嫌ってきた依存心の要素(たとえば「甘える・人に頼る」など)を彼が持っていると、そんな彼を受け入れたくない気持ちが出てきます。すると彼を遠ざけたくなったり、衝突してケンカになったりします。
そうしてケンカが続くとすっかり疲れ切ってしまい、彼との関係そのものが苦しくなって関係性を壊したくなることもあります。
<相互依存のステージ>
依存時代に傷ついた分、二度と傷つかない為に自分の依存心を嫌って自立しました。
しかしその為に彼と上手くいかなくなったのであれば、昔傷ついた自分を受け入れて、心の痛みを癒すことが大切なテーマになってきます。
自分の依存心を許せると、彼が同じ要素を持っていても受け入れられるようになるので、今度はお互いに手を取り合うことができるんですね。
こうして自立するに至った依存時代の痛みを癒し、【彼と共に】手を取りあい、支え合う選択をすることで「相互依存」という全く新しい関係性を育むことができるようになります。
彼との関係性では、あなたの弱さを正直に見せること・頼ること・お願いすることで、一人で頑張らずに済む、自由で楽な関係に変化していけるのです。
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私たちは誰かとの関係の中で、ずっと依存、ずっと自立の立場でいることは、じつはとっても辛いものなんですね。
いつも「相手に頼りっぱなし」だと不安や無力感でいっぱいになって、よけいに人にしがみつきたくなることもあるでしょう。逆に、いつも「誰かを助け続ける」だけだと「なんで私ばっかり」という孤独感に苛まれたり、疲れきって無気力になってしまいかねませんよね。
時には人を頼り、時には人を助けられる。どちらの立場にも回ることができれば、どちらの喜びも受けとれます。そうすれば、お互いを支え合うことがもっと楽しくなり、喜びも分かちあうことができます。
そんな依存と自立を行ったり来たりできる、心の成熟さを持った関係性のことを「相互依存」と呼ぶのです。
(完)