あなたという、ひとりの人間を愛する
こんにちは 平です。
彼女がおつきあいしている男性は、モテる条件をすべて備えているような人でした。
税理士として独立し、年収は1,500万円ぐらい。身長175センチ、65キロ、フットサルを趣味にするというイケメンです。もちろん、これまでもずっとモテる人生を送ってきました。
今回の彼女のご相談は、この彼がなぜか結婚に踏み切ろうとしないということについてでした。
おつきあいも2年近くになり、そろそろゴールインをと彼女は思うのですが、彼がなかなか煮え切らないというのです。
そんな彼女に私はこう言いました。「一般に、成功している男性は疑い深いものなんです」
彼の心の中にはおそらくこんな思いが渦巻いています。
(いまは成功しているから、その光り輝く自分を見て、みんな近づいてくる)
(でも、それは、ほんとうにオレを愛してくれているからなのか、オレの財布の中身を愛しているだけなのか‥‥)
(いまはいいけれど、事業がうまくいかなくなるようなことがあったら、金の切れ目が縁の切れ目ということだってあるかもしれん‥‥)
(どんな自分であっても着いてきてくれるのか、しっかりと見定めなければ‥‥)というわけですね。
昔、甲子園の優勝投手としてドラフト1位でプロ球界に入った選手がいました。
彼は入団した年の夏の終わりには一軍に上がり、初登板でノーヒットノーランを記録。輝かしいデビュー年を飾りました。
が、まもなく肘を壊し、なかなか期待どおりの成績が出せずに二軍落ち。
長い二軍生活を送ったあと、ようやく肘の調子も万全に戻り、一軍に復帰したのです。
そして、最高の仕上がりだと思ってマウンドに上がった復帰戦、中継ぎで登板した彼は相手打線に打ち込まれ、5失点を喫しました。
「これ以上ないという最高の投球をしたつもりだった。自分はもはや通用しないのか‥」
彼は激しく落ち込みましたが、そんなとき、奥さまから1通の手紙をもらったのです。
そこには、こう書いてありました。
「私は甲子園の優勝選手と結婚したわけでも、ノーヒットノーラン・デビューのヒーロー投手と結婚したわけでもなく、あなたという、ひとりの人間と結婚したつもりです。
あなたがプロ野球の選手ではなく、どんな仕事についていたとしても、私はあなたにどこまでも着いていきます」
この手紙を読み、彼は自分がずっとしがみついていたヒーローのイメージを脱ぎ捨てることができ、家族のためにバッティング・ピッチャーという下積みの仕事をすることを選びました。
という話を、ご相談にみえた彼女にしたところ、彼女は彼が昔話してくれたというある話を思い出しました。
彼は地方出身で、跡取り息子なのだそうです。
そのため、いまは都会の一流税理士として光り輝いているのですが、いずれは地元に戻り、細々と活動していくことになると思っているとか。
「しかし、結婚して、あんなになにもない田舎に連れていくことが、彼女にとって幸せなことなのか‥‥」と、彼は悩んでいるようなのです。
そこで、彼女はあの投手の妻のように、彼に手紙を書いたのです。
「あなたがどんな仕事をしようが、どんなところに住もうが、あなたとともに人生を送ってみたい」、と。
そして、その後、「なんにもない田舎だけれど、嫁に来てくれる覚悟があるなら‥‥」という彼のプロポーズを受けることになったのです。
私の知るかぎり、男性とは成功が大きいほど、その成功というヨロイの中に恐れに満ちた自分を隠していることが多いようです。
そして、ふだんは恐れなど見せませんが、じつは心の奥では、そんな自分のことを愛してくれる女性を求めているのですね。
素敵な彼の中に、一人の恐がりの少年が隠れている‥‥。
その少年を見つけ、愛してあげることができれば、恋愛は成就に向かうことが多いようです。
では、来週の『恋愛心理学』もお楽しみに!!