職場の人間関係に潜んでいる投影という心の働き

★職場の悩みの多くは「仕事」そのものではなく、「人間関係」

カウンセリングの現場でいただく「職場」に関するご相談の多くは、「仕事」そのものではなく、「人間関係」の問題です。
わたしたちは「人」である以上、「職場」であっても、いろいろな感情を感じます。
(「好き」「嫌い」「イライラする」「苦しい」「腹が立つ」等々。)
そして、その感情を感じる原因の多くが「人間関係」なのです。「人間関係」がうまくいきはじめると、「仕事」もうまくいきはじめるということも多いのです。
 

★「組織」には「上下関係」がつきもの・・

「職場」の規模は別として、どんなにフランクであっても、「職場」という組織には、社長がいたり、リーダーがいたり、管理職がいたり・・と「上下関係」が存在します。また学校と違い、幅広い年齢層が同じ職場で働いているため、年長者と若者という形の「上下関係」も存在します。

上下関係がはっきりしているほうが楽な人もいれば、そういった関係が苦手な人もいるでしょう。
また、年長者が部下というようなねじれた関係に悩むこともあるかもしれません。
 

★「人の好みは十人十色、人の苦手も十人十色」

「人の好みは十人十色」と言われますよね。十人いれば、十通りの「好み」がある。人の価値観が一人一人違うように、「苦手」ポイントも一人一人違うようです。

自分が苦手な上司であっても、、その人を「苦手」と感じていない人もいる。
みんなから、怖がられている上司に平気で近づける人がいる。

そんなことはありませんか?

「怖い人」や「嫌味な人」が嫌われる人だとしたら、すべての人から「嫌われて」「疎まれて」もおかしくないのに、なぜか、「嫌わない」「疎まない」人がいたりする。

なぜ、こんなことが起こるのでしょうか?
 

★「投影」という不思議な「心のしくみ」

わたしたちは「自分の体験」や「自分の価値観」・「自分のその時の感情」などを「心のフィルター」にして、自分の周りにいる人や周りで起こる出来事を見ています。

これはまるで、サングラスをかけて、周りの世界を見ているようなものです。

黒いサングラスをかけて周りを見ると、なんとなく全体的に暗く見えるし、サングラスの色を青にすれば、周りの景色は青く見える、というように、どの色のサングラスをかけるかで周りの景色の見え方は変わります。

心の働きもこれと同じように、心のフィルターが変われば、出来事に関する感じ方も変わるのです。
 

★代表的な投影のパターン

1.過去の体験を投影する

「上司」が口うるさく指示してくるとイライラする。そういえば、自分の父親も細かく指示してくるタイプだった。父に口出しされると、いつも自分を否定される気がして、父のことが嫌いになった。どうも、「上司」を見ると「父」との間で感じていた「嫌な気分」を思い出すらしい。

このような場合、過去に感じたこと(父)と「今」(上司)を切り離して考えることができると、「嫌悪感」を減らすことができます。

※職場の人間関係に投影しやすい「過去の人物」
「上司」 親・先生など
「部下」 部下だったときの自分・子ども、弟
「同僚」 兄弟・姉妹 学校時代の友達

2.観念・思い込みを投影する

「自分で引き受けた仕事は、当然自分の力でやり遂げるべきだ」と思っている人は、後輩が「引き受けたのに、すぐに誰かにやってもらっている」のを見ると腹が立ちます。「こうあるべき」という自分のルールを相手に投影しているので、そのルールを破る人が許せないのです。

このような場合、「自分は○○だと思うけれど、そういうやりかたもあるのかな?」という見方ができると自分のルールを破る人と出会ったときの「イライラ」が減ります。

3.自分に対するイメージ

例えば「自分は背が低いから、きっとバカにされるだろう」という自己イメージを持っていると、「バカにされるだろう」というフィルターをつけて周りの人を見てしまいます。
すると、ちょっとした視線や軽口や冗談が「自分をバカにする視線や言葉」のように感じてられるのです。

このような場合は、「きっとバカにされるだろう」というフィルターを外すことができれば、相手は、親しみを表現しようをしただけなのかも??という見方もできるようになるので、不愉快な気分になりにくくなります。

4.今の気分を投影する

とてもいい気分の時に、コンビニの新人店員のレジでの対応が悪くても腹が立たないけれど、「上司に理不尽に叱られたあと」だと「ムカッとする」というように、わたしたちは、自分の気分を周りの世界に投影します。

そのため「自分の機嫌を上手にとる」ことができると、職場での「イライラ」感、腹立ちなどを感じることも少なくなります。
 

★「投影」に気づくだけでも気分を変えることができる

「投影している」ということに気がつくだけでも、必要以上に相手を嫌ったり、苦手意識を持たなくてよくなるので、その分、その人との関係は楽になります。

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