人生の転機を活かす心理学(2) ~転機は隠れていた不満を刺激する~

ついつい自分なりのやり方にこだわってしまうものですね

「あー、4月から転勤だってさ、しかも〇〇に。どうしてこうなるかなぁ。仕事だから仕方がないけどさ。」
「私、今までの部署を離れて〇〇に行くのよね。やっていけるかどうか不安だわ。」
年度末は「転機」になりやすい時期。会社の中でもこういった声が聞こえてきやすいですよね。
私達は「変化」を感じると「怖れ」を感じやすくなります。
この怖れを感じている状態が続くことで、どうしても不満を感じやすくなるのです。

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◇「転機」では「不満」も溜まりやすい

「あー、4月から転勤だってさ、しかも〇〇に。どうしてこうなるかなぁ。仕事だから仕方がないけどさ。」

「私、今までの部署を離れて〇〇に行くのよね。やっていけるかどうか不安だわ。」

年度末は「転機」になりやすい時期。会社の中でもこういった声が聞こえてきやすいですよね。

それはどれだけキャリアを積んだ人であっても、自分の想定外の変化にはなかなかついていけないこともあるようです。

このように私達は「変化」を感じると「怖れ」を感じやすくなります。この怖れを感じている状態が続くことで、どうしても不満を溜め込みやすいのです。

例えば、先に書いた会社での部署異動の例。

異動を気にしない人、むしろ楽しむ人もいらっしゃるでしょう。が、長く勤めた部署から全く畑違いの部署に移動することになり「移動後もやっていけるのだろうか?」「不慣れな仕事に向き合う不安もあるよなぁ・・・」そんな怖れを感じている方がいたとしましょう。

これは「先の見通しを立てる」という怖れへの対処法が使えない状態です。

ある程度先の見通しを立てることは「上手な怖れとの向き合い方」でもあるわけですが、転機など先が見通せない状態になると、怖れや不安などの感情に影響されやすくなります。

普段は感じないような「怖れ」を感じやすい状態になり、気持ちも落ち着かなくなるものです。

この状態で、例えば、パートナーから不満を伝えられた、親から愚痴を言われた、仲間がミスをした・・・そういった少しネガティヴな出来事が起きたとしましょう。

すると、普段なら「いいよいいよ」と気にしないことであっても、いちいち心にひっかかり「もういい加減にしてほしいぁ・・・」と感じやすくなるかもしれないですよね。

どうしても怖れと向き合うことになる「転機」では、普段気にならないようなことにも反応し、不満として感じやすくなるのです。

別の事例で考えてみましょう。

例えば、結婚を機に転居し、新生活を迎えた女性が生活に馴染めないというケース。

慣れない日常の中にいると「分からないこと」が増え、怖れが強まります。

すると、ついついパートナーに対して言いたくもない不満をぶつけてしまったり、パートナーの日常の行動に不満があると伝えたくなったり、人によってが「私(僕)のことなんて考えていないんでしょ?」とあてつけのような言葉を投げかけたくなってしまうことも起こるのです。

表面的には「ただ不満を伝えている」と見えますが、その行動動機を見つめてみると怖れを感じている、という事情が存在していることが多いものです。

なお、これは「不満を口のすることで感情のバランスを取ろうとしている状態」といえます。もちろん不満は「被害者意識」から生まれていることが多いので、なかなか気分はスッキリしませんし、感情のバランスが取れるとも限りませんが、一般的にあまり好まれない愚痴や不満にも一定の意味はある、ということですね。

◇自分のやり方にこだわる

「転機」をむかえ、自分自身が新しい環境におかれたとき、

ある人は「新しい環境に早く馴染もう」とするかもしれません。
しかし、ある人は「誰かに頼りたくて仕方なくなる」かもしれません。

「今まで不安を口にしなかったが、急に不安や愚痴を言いたくなる」かもしれません。
「何かにつけて自分のやり方・考え方にこだわりたくなる」かもしれません。
「慎重になりすぎるほどに、今後のことを考え込む」かもしれません。
「自分だけの世界に閉じこもり、人との関わりをできるだけなくそう」とするかもしれません。
「新しい環境で出会う人々と謙虚に関わり、つながりを作ろう」とするかもしれません。
「不安をひたすら我慢して耐え続ける」かもしれません。

これらは「怖れ」に対処しようとする反応といえます。

私達は変化とそれに伴う怖れに対して「自分なりの方法」で対処しようとするものです。

もちろんその方法が自分にとってメリットのあるものであれば、気持ちが安定する時期も早まり、自分本来のポテンシャルを発揮しやすくなるものです。

しかし中には、使えば使うほど、辛さや苦しさ、不安が増す方法も存在しますから、できれば「上手な怖れの対処法」を使いたいものですね。

ただ、人はどうしても自分なりの方法にこだわりやすいもの。たとえデメリットを感じていても、自分なりのやり方にこだわることも多いものです。自分なりのやり方以外の方法を試すこともまた、不安を刺激するからですね。

だから、
本来は言いたくもない愚痴や不満を言ってしまい、周囲との関係が悪化する。愚痴を言ってしまうがゆえに、自分の気分も悪くなり、人にも誤解されやすくなる。

そんなことも起きるわけです。まさに頭で理解していてもそうなってしまう、なのです。

他にも、いくら考えても先のことは分からないのにうんうん悩み続ける。

自分のやり方にこだわるあまり、疲れ果ててしまう。

人との関わりを断つことで孤立すると分かっていても、一人で頑張ろうとする。

どこか自分自身でも「うまくいかないよなぁ・・・」と感じていても、それはまるで習慣のようにパターン化され、なかなかやめられないことも多いのです。

この自分自身の怖れへの反応は「今、自分が感じる気持ち」を作り、それを使って私達は次の現実を見つめていくのです。

この怖れへの反応次第で、自ら生きづらさを作ることもあれば、怖れは感じるけれど前向きな気持ちでいられる場合もあるわけですね。

ならば、怖れ・不安との向き合い方、その上手な方法を知っておくとより楽に「転機」を乗り越えることができるといえますね。

なお、この上手な不安との向き合い方については最終回(第4回)にまとめてお伝えしようと思います。

>>>『人生の転機を活かす心理学(3) ~抑圧していた怖れの影響とその具体的事例~』へ続く

この記事を書いたカウンセラー

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年間400件以上の面談カウンセリングを行う実践派。「男女関係向上・男性心理分析」「自信・自己価値向上」に独特の強みをもち、ビジネス・ライフワーク発見なども対応。明快・明晰かつ、ユーモアと温かさを忘れない屈託のないカウンセリングは「一度利用するとクセになる」と評され、お客様の笑顔が絶えない。