「自分が子供時代に親に甘えられずにきたので、子供の甘えが許せない」と悩まれる方って実は少なくありません。
「自分がもらえなかったのだから、人にはあげれない」と思うのであれば、この思いは代々受け継がれ、同じくその苦しみも子供に受け継いでしまうでしょう。でも、そんなことをしたくはないからどうしていいのかわからずに苦しいんですよね。
今回はこの「どうしたらいいの?」といったお悩みにお答えして、これまでとは異なる視点で物事を見たときにどうなるのか、そのヒントをお届けしたいと思います。
◎リクエストを頂きました◎
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子供の頃甘えるのを我慢していたため、子供が甘えてくると「私が我慢していたんだから、あなたも少しは我慢してよ」と甘えてくるのを受け入れられません。子供は常に甘えたい欲求を我慢しているのが分かり申し訳ない、どうにかしたいと思いつつ、寂しかった子供の頃の自分を癒すことが出来ず苦しいです。この状況から抜け出せるヒントを頂けたらと思いメールしました。
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リクエストをありがとうございます。
今回、担当させていただく熊谷佐知恵です。どうぞ、よろしくお願いします。
期待と理想と現実のギャップ
「私の人生、ずっと辛かったし、寂しかったんです」
「この気持ちを誰かに聞いてもらいたい、受けとめてもらいたいって、ずっと思っていたけど、誰にも打ち明けることが出来ず、どうやって甘えたらいいのかもわからず、本当に苦しかった」
カウンセリングでは、こんな風に感情を込めて言ってもいいんですよ。
でも、できないでいたからこそ、苦しい。
体はすっかり大人でも心の世界では、長い間、膝を抱えて顔を伏せ、泣きじゃくる子供のようになっていたのかもしれません。そして、どうしていいかわからずに、泣き疲れて眠るまでずっと泣いている。大人になった今でもこの感覚を繰り返している人は他にもたくさんらっしゃるかもしれませんね。
私は、そのような方にこそ「だったら面談においでよ!」と言いたいです。
実際それが転機になる方も少なくありません。
「たとえ、それが小さな、小さな変化だったとしても、まずはカウンセリングを受けてみよう!」そのくらいの気持ちで、期待が大きくなり過ぎずに動き出せる方が、上手くいくことが多いのです。
期待が大きいと、理想と現実との狭間で大きなギャップを作ります。
「子供の甘えが許せない」という中で起こっている苦しみも、実はこのギャップの大きさがあることを物語っているのです。
なぜ、子供の甘えが許せないのか?
「人は自分を扱うように人を扱う」といいます。
特に遺伝子的にも似ている自分の子供は、まさに自分のインナーチャイルド、あるいは子供時代の自分を投影するには格好の存在です。
そして、ここで起こっている八方塞な苦しみは、子供時代の痛みと、大人(親)になった今の痛みを同時に感じていらっしゃるということではないでしょうか。
「子供が甘えたい欲求を常に我慢している」ように見えるのも、実は親である私たち大人側が抱えている「甘えたいのに甘えられなかった」未完了な思いを投影しているといえそうです。
このような時、自分の中にある「甘えたい」という気持ちをどう扱っていくかが、大きなポイントになります。
自分の周りの誰かの甘えが許せないのは、自分にそれを許していないから。
もしかしたら、これまでは、甘えたかった対象であるお母さんが、あまりにも頼りなく見えていて、甘えることを遠慮していたのかもしれませんし、そのうちに自分が甘えるチャンスを失い「誰も当てにできる人がいない」と感じるようになったのかもしれません。
無垢な子供の無償の愛
「甘えられなかった」という未完了な思いを抱えた大人がみると、そこに心理的な癒着や投影が起こるので、子供はすごく欲しがりな存在に見えてしまうこともあります。でも、実際は、親に無償の愛を与えようとしてくれるのは、子供の方なのかもしれません。
思い出してみてください。あなたにもありませんでしたか?
お父さんやお母さんを喜ばせたくてがんばったり我慢をしたりしているうちに、なかなか笑顔が戻らない親との関係で、「私は(生まれた頃のようには)喜んでもらえていない(存在なんだ)」と感じて傷ついてしまったことを。
親のために、たくさんの我慢や犠牲をして沢山たくさん傷ついてしまった人って、それだけ大きな愛の人だったのだろうと私は思うのです。
理屈や理由や言い訳をたくさん抱えているのは、いつも大人の方なのかもしれません。
あなたのお子さんはどうでしょうか?もし、来るな!オーラ満載のあなたに「お母さん、抱っこ!」といえる子だとしたら、それは相当なチャレンジャーなのかもしれませんよね。
「もしかしたら、子供はもらうフリをして私に親密感を届けてくれているのかも」そんな風に子供の行為を好意として受け取ってみるのも効果的です。あなた自身が親密感を得られるチャンスを拒まないであげて欲しいと思います。
理想の母を手放す
「もらってないものはあげられない」という思いに捕らわれていると世代間で悲しみと苦しみのループを永遠と作り続けてしまいます。そうはしたくないですよね。
ここで、子供から与えようとしてくれている行為を好意的に受け取るとともに、もうひとつ取り組んでいただきたいのが「理想の自分(母という役割)を手放す」ことなんです。
「親は子供の面倒を見るべきだ」「親は子供のニーズを叶えるべきだ」こんな風に思ってしまうことで、親としてのハードルを上げていませんか?
理想の親を追及するあまり、今、あなたは、ご自分を責めてしまっているのだと思います。
もしかしたら、あなたのお母さんも、今のあなたと同じように、本当はもっと上手に子供を愛してあげたいのにどうしていいのかわからなかったのかもしれませんよね。それは、やはり、今のあなたと同じようにとても苦しかったと思うのです。
自覚しにくいことかもしれませんが、「子供にとって理想の母になれてないんじゃないか?」とご自分を責めたり、頑張りすぎてしまうのは、子供を愛しているからですし、ちゃんと愛してあげたいと思うからなんです。
ですから「私はこの子のことを愛してるんだ。ちゃんと愛してあげたかったんだ」という思いに気づき、まずはあなたの中にある愛を認めてみてくださいね。
笑顔を取り戻すこと
そして、本当に子供のために「理想の母」になりたいのであれば、あなたの笑顔を取り戻すことが次のポイントです。
理想の母でいることを「それは無理だな」と認めてしまうというのも一つの方法としてOKです。子供に甘えちゃってもいいのです。自分を責めるのではなく「甘えさせてもらっている」その自覚があることが感謝の気持ちや優しさの循環にもつながります。
お母さんの笑顔は子供にとって大きな安心感を与えるものなんだと思います。
自分が頑張りすぎずに、適度に肩の力を抜いて過ごせる、いい加減を見つけていってみてくださいね。
(完)