がまんばかりしていても

離婚しない唯一の方法は、結婚しないこと?

こんにちは 平です。

彼女の両親は、彼女が小学校5年生のときに離婚しました。

そして、高校1年生のときにおかあさんが再婚し、新しいおとうさんができました。

いま、彼女は31歳。自分の結婚に関し、おおいに迷い、私どもにご相談にお見えになりました。

両親が離婚すると聞かされた小学校5年生のとき、彼女はそれがほんとうにいやだったのですが、「離婚はやめて」と言うことはできませんでした。

おかあさんが再婚することになった高校1年生のときもやはりいやでしたが、そのときも「いや」と言うことはできませんでした。

いつも「ノー」が言えずにきたわけです。

そして、いつも「私さえがまんすればいいことだから‥‥」と彼女は考えていました。

そうしているうちに、「愛すること=がまんすること」という図式が彼女のなかにできてきたようです。

そんな彼女が、いま、求めているのは、がまんしない生き方です。

しかし、対人関係において、彼女にはいつもまわりにいるだれかに辛抱させられると感じていました。

一人でいるときだけが彼女にとってがまんしなくてよく、自由でいられる時間だったのです。

これまでに、何人かの男性とおつきあいをしましたが、彼女はどうしても相手を優先してしまい、自分の望むことを伝えることができません。

中には彼女の気持ちを優先し、「なにがしたい?」、「どうしたい?」と聞いてくれたボーイフレンドもいましたが、彼女は自分がなにをしたいか、なにが欲しいのかを上手に言うことができませんでした。

じつは、「好き!」が言えない人は、「嫌い!」も言えません。

「ノー」が言えない人は、「イエス」も言えません。

好き嫌いというのは一貫したもので、「嫌い」がわからないと「好き」がわからない、「好き」がわからないと「嫌い」もわからないものなのです。

そして、彼女のように「ノー」が言えない人は、「イエス」や「好き!」を言うことができないのです。

そこで、私は彼女が小5のときや髙1のときに言えなかった「ノー」‥‥、つまり、「離婚しないで」や「再婚しないで」という思いを、イメージの中であらためて伝えてもらおうとしました。

なかなかうまくできませんでしたが、彼女はようやく、子どものころの気持ちに戻ってその「ノー」を言うことができました。

彼女は泣きわめきながら大きな悲しみを吐き出し、必死になって「ノー」を言いました。

そんな彼女の心の中には、「もしも、私がノーを言ってしまうと、だれかをひどく傷つけてしまう」という思い込みがあったようです。

さて、今回の本題は結婚に関することだったわけですが、彼女が求めていたのは、「けっして別れない結婚」、「けっして離婚しない結婚」でした。

そして、そのための彼女の選択は、「離婚しない唯一の方法は、結婚しないことだ」というネガティブな方法でした。

彼女は人生を通じての「真実の愛」、「けっして切れない絆」‥‥、いわばエンドレス・ラブといえるものを求めていました。

それこそが彼女の心を満たし、喜ばせるものだったわけですが、「万が一、別れることになったらどうしよう」という大きな恐れももっていました。

そこで、「ぜったい別れないためには、最初からおつきあいしない」、「ぜったい離婚しないためには、最初から結婚しない」という防衛的な方法をとろうとしていたのです。

そんな彼女なので、だれかと出会って少しでもダメだと思うと、自分から身を引いてしまうことが多かったようです。

私はこんな質問をしてみました。

「ほんとうにあなたが“大好きなの! 別れたくないの!”と絶叫しながらでも言いたい人は、これまでの人生の中でいましたか?」すると、「一人だけいました」と彼女は答えてくれました。

なんであのとき、それだけの思いをぶつけなかったのかという悔いが、いまも彼女の中に残っているそうです。

そして、いま、彼女は、「だーい好き!」が言えるパートナーを探しています。

がまんすることではなく、「好き!」を表現する生き方をすること、それが、彼女の新しいライフプランになりました。

では、来週の『恋愛心理学』もお楽しみに!!

 

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。