「職場の人間関係に関する相談」でよくお伺いするものの中に「嫌われるのが怖くて、ガマンしすぎてしまう」というお話があります。
もし、上司や同僚に「できません。」「違うと思います。」などと言ったら、それだけで嫌われてしまうのではないか?
そんな怖れがあると、言いたいことも言えなくなってしまいます。
◆コーヒーより紅茶が好きと言えなかったAさんの例◆
嫌われるのが怖くて周りに合わせてしまったAさんの話です。
ほんとはコーヒーはあんまり好きじゃないんだけど、自分以外の人が全員コーヒーを頼んでいたので、飲めないわけじゃないから、みんなに合わせて注文した。
「コーヒーより紅茶が好き」と言いそびれてしまったために、その後も、「コーヒーはあんまり好きじゃないの」とは言えず、なんとなく笑顔を作って「おいしいね」と相づちをうつAさん。
だって、嫌われたくないから…。
嫌われたくないからという思いで自分の好みを言えずにいたAさんは、職場の同僚たちとのコーヒータイムがだんだん憂鬱になり、それがもとで職場に行くことが辛くなってしまいました。
◆「ガマンすれば嫌われない」という思い込み◆
この場合、「Aさん」は「みんな」に嫌われたくないのでガマンしてコーヒーを飲んでいる状態です。
このとき、「Aさん」は心の中で「嫌われたくない」以外にも次のようなことを思っていました。
・わたしがガマンすればうまくいくはず
・ガマンしていれば、いつか気がついてくれるはず
・「みんな」の好みを優先してるんだから仲良くしてくれるはず
Aさんのように、気がつけばいつも
「いい人」になっている
「ガマン」しちゃっている
という場合、
「いい子になる」「ガマンする」ことで「愛された」「認められた」経験が土台になっていることがあります。
例えば
バスや電車の中ではしゃぎたいのをガマンして、いい子で座っていたら
「よくガマンしたね〜」
「えらかったね」とほめてもらった。
というような経験です。
このような経験を重ねて「ガマン」=「愛されるコツ」という感覚が出来上がるため、会社の人間関係でも「ガマン」していれば、いい関係を築けると思い込みやすくなるのです。
ところがガマンしても、ガマンしても、そのガマンをわかってもらえなかったり、受け入れられているという実感がわかなかったらどうなるでしょうか?
◆自分の「ガマン」が足りないと感じてすぎてしまうとどうなる◆
自分のガマンが足りないからだ!と自分を責めます。
そして、もっとガマンを重ねていくのですが、ガマンが重なると苦しくなってしまいます。
その状態になっても、自分を責めるので「こんなことくらいで、しんどくなっちゃうなんて…」と自分のことを情けなく感じるかもしれません。
逆に自分を責め続けるのが辛すぎて「わかってくれないなら、もういい!」とあきらめを感じ、自分から心の距離を置いたり、関係性を終わらせたくなったりします。
◆わかってくれない相手への不満がたまる◆
それだけではありません。
こんなにガマンしてるのに、どうしてわかってくれないの?
いったいいつまでわたしは頑張ればいいの?
というような不満もたまってきます。
不満があるので、楽しくなさそうな表情をしてみたり、会話に加わらなかったりと「この態度を見て、わかって欲しい」という行動をとりやすくなります。
それでも相手が気づかないと「もう、こんな人たちとはやっていけないっっ!」と感じます。
この場合も、自分から関係を終わらせたくなります。
◆「ガマン」しすぎる人は自分への高評価を受け取れない◆
「ガマン」を続けるタイプの人は、「ガマンするわたしは愛されるけど、ガマンをやめたら愛されない」と感じがちです。
そのため、周りの人が優しくしてくれたり、いい評価をしてくれても「それは、わたしが『いい人』をしているからで、『いい人』じゃないわたしを見たらきっと嫌うに違いない!」
と素直に受け取れなくなってしまいます。
すると、周りの人達はどことなく近寄りにくい雰囲気を感じて、距離をとるようになっていくのです。
◆「ガマンしない」=わがまま、ではない◆
わたしたちは誰でも「いい子」のわたしだけでなく、ダメなわたしも認めてほしいという欲求があります。それ自体が悪いことではありません。
ところが、ガマンしがちなタイプの人は「ダメな自分は愛されない」という思いが人一倍強いのです。
自分を愛してあげましょうね。
自分を認めてあげましょうね。
カウンセリングでは、そんなご提案をすることがあるのですが、それは、「ダメな部分がある自分も悪くない」と感じることができる分だけ「ダメな自分でも受け入れられる」と思いやすくなるからです。
ガマンしない=わがまま、駄々っ子
ではありません。
ガマンしない=自分の思いを伝える、理解してもらう
ことです。
もしあなたが「ガマンしがちだなぁ」と感じているのなら、自分の持っている「ガマンしない人」のイメージをチェックしてみるといいかもしれませんね。