隠すのではなく、自分の笑顔が輝くように
こんにちは 平です。
ご相談におみえになった彼女は、収入の大半を美容に注ぎ込んでいました。
彼女は自分のことを“醜い女”と思い込んでおり、それをなんとか隠したいと思っていたのです。
たとえば、ちょっとした小じわやたるみも許せず、見つけるたびに美容器具を買い込んだり、プチ整形にチャレンジしていました。
しかし、ある時期から、「さすがに、このままではキリがない‥‥」と思うようになったのです。
だって、年齢とともに、隠さなければいけないものはどんどん増えるわけですからね。
そんなある日、「あなたはけっして醜くない。自分を醜いと感じてしまうその心を直しましょう」という一文を美容雑誌で見つけました。
それをきっかけに、彼女は私どもにご相談に見えるようになったのです。
美しくなりたいと思うのは、もちろん、悪いことではありませんし、お化粧やファッションで自分を飾るのは素晴らしいことともいえるでしょう。
ただ、その行動動機が「自分は醜いから」というものであるとしたら、どんなにきれいになっても、その思いはなかなか消えません。
彼女の話をいろいろと聞いてみると、彼女はおばあちゃんのことが大嫌いだということがわかりました。
おばあちゃんは戦争体験者で、大空襲の折に顔の左半分と足にヤケドを負い、その跡がケロイドとして残っているのだそうです。
ご本人はそのことを気にしているので、つい厚化粧になります。
しかし、ヤケド跡は簡単に隠せるものではなく、孫の彼女曰く、「逆に目立ってしまうようなメイク」でした。
それで、「ああはなりたくない」と日ごろから思っていたわけですが、じつは深層心理の中には、「もっと上手におばあちゃんのあの傷を隠してあげたい」というやさしい思いも隠れていました。
おばあちゃんはどうも、お化粧が下手だったようなのです。
それがかえって痛々しい印象をつくっていたので、彼女としては、「もっと上手にすればいいのに‥‥」と思っていたのです。
それをおばあちゃんに言ったりもしたのですが、おばあちゃんにしてみれば、自分の一番隠したいキズが隠れていないと、大好きな孫から指摘されることといえます。
それはつらいことであり、攻撃されているようにも感じてしまうのですね。
だから、そのたびにおばあちゃんも攻撃的になり、「あんたはやさしくない」、「人の嫌がることばかり言う」などと彼女に言うわけです。
それもあって、おばあちゃんのようにはなりたくないと彼女は思うようになったわけです。
そんな彼女に私は言いました。
「あなたが嫌っている人は、あなたの愛が不足している人だといいます。その人との愛を回復するだけで、大きなご褒美がありますよ」
そこで、彼女はおばあちゃんにメイクを施してあげることにしました。
彼女は自分自身の醜さを隠すためにメイクをしてきたわけですが、それで磨いた腕で、おばあちゃんにお化粧してあげたわけです。
そのころは、すでにおばあちゃんはあまりお化粧はしなくなっていたのですが、彼女がメイクをしてあげたところ、それはそれは完ぺきにヤケドの跡がわからなくなったのだそうです。
それには、おばあちゃんも大喜び。彼女とおばあちゃんの心の距離も、これをきっかけに急速に縮まりました。
そして、おばあちゃんからは「ほんとうにおまえはやさしい娘だ」、「おまえが孫でうれしい」などという言葉をかけてもらうようになり、彼女の内面も大きく変わっていったのです。
そのせいか、最近の彼女は、隠すのではなく、自分の笑顔が輝くようなメイクに興味が湧いてきているようです。
では、来週の『恋愛心理学』もお楽しみに!!