手放しはあなたを生まれ変わらせてくれる
やれることの全てをやったら、あとは「手放す」だけです。「手放す」というと、諦めることのように思いがちですが、「結果を天に委ねる」という方が近いです。自分が正しいという思い込みを手放して、最大限の誠実さで事に当たると、追い求めているものが、ホンモノかどうかがわかります。
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「手放し」は、心の真空を作る
「ドンづまったら、一旦手放してみるといいよ」。
恋愛でも、仕事でも、家族や友人との関係性でも、私は、そんな、ちょっぴり乱暴に聞こえるようなアドバイスをします。
「ドンづまっている」とき、私たちは、もうそのことばかりを四六時中考えています。なんとかならないものかと、何度も、何度も、問題をこねくり回し、ちょっとでも希望が見えるとそこにまた期待をかけては、のちにガッカリし、今度は過度に悲観的になっては、焦り、慌てふためきます。もう、心が忙しないったらありゃしない。
こんな時は、いいことも悪いことも、「妄想」がたくましすぎるものです。その「妄想」に駆られて行動しても、的外れになりがちです。
「ドンづまる」ということは、これまでなんらかの形で頑張ってきた、ということ。結果がまだ出ていないからといって焦るのではなく、自分が一生懸命やってきたことに自負を持って、「運」が味方してくれるのを信頼して待ちたいところです。
でも、心が汲々としていると、「追い風」が吹き始めても、その微風を感じられなくて逃してしまいそうです。自分が描いた解決策の通りに物事が進まないと、せっかくのチャンスすら、逆風に感じられます。
「もう、このままではいたくないんです」。
そう思えばこそ、自分にとってのホンモノを選びたいですよね。そのために欲しいのは、落ち着いて、冷静に状況を見渡せる、平静な「心持ち」です。
そんな「心」が欲しいから、「どうしても彼じゃなくちゃ嫌だ」とか、「どうしてもあの人に謝って欲しい」、「何がなんでもこの役につきたい」、といった執着を手放したいのです。今まで、「彼と結婚するために」とか、「あの役職につきたい」とか、「あの人に負けたくない」など、自分が「幸せ」になるために必要だと思って頑張ってきたことを手放すと、心にポカンと穴が空いたような感じがします。
私たちは、よく、「宇宙は真空を嫌う」という言い方で、見えない心の力学を説明しようとします。心に、真空ができると、空いたスペースに新しいものが入ってきます。そこに、あなたが幸せになるために、本当に必要なホンモノが入ってきますように。
もし、今、どんづまっていて、あなたが欲しいものを手にできずにいらっしゃるのなら、なおのこと、いったん、あなたの心を占めているモノへの執着を手放して、意識にスペースを作りましょう。キャッシュメモリをギリギリまで使ってスタックしたコンピュータをリセットして、すっきりとしたところから再度チャレンジすればいいのです。手放したものが大きければ大きいほど、ハートは生まれ変わったようにリフレッシュして、人生の再スタートを切れます。
何を、どう、手放したらいいのか?
「手放し」のお話をすると、必ずといって、恋愛関係のお話なら「別れた方がいいってことですか?」と聞かれますし、お仕事ならば「辞めるってことですか?」となります。
必ずしもそうとは限りません。「別れたい」と思っているのに、別れられずにいるのであれば、別れればいいですし、「辞めたい」のに、辞められない事情があって困っているのであれば、辞める方向で働きかけを始めればいいのですが、ここで言う「手放し」は、執着する心の手放しのことで、結果として「別れる」「辞める」ことになる場合もありますが、そうなるとも限りません。
夢やヴィジョンを持つことは大事なのですが、その過程で、私たちはどうしても自分のやり方や自分の描いたストーリーにこだわり、必要以上に人や出来事をコントロールしようとします。それが逆に、自分にも他人にもプレッシャーになって、反発や失敗を招くことが多いのです。
「願い」は願いとして、自分なりに努力はするのですが、状況をコントロールするのではなく、起こることから学び、しなやかに反応します。あなたが「別れたくない」ならば、別れなくていいのです。ただ、だからといって、相手をコントロールもしません。あなたの、「相手を変えたい」という気持ちを手放して、自分が幸せでいられるように生きるのです。相手が何を選ぶかは、相手次第です。相手が、自分の思いに応えてくれないことが辛すぎるのであれば、もちろん、別れてもいいのです。
あなたが、「こうでなくっちゃ!」という気持ちを手放せると、あなたも自由になりますが、相手や周りの人たちも、自由になります。結果として、物事がまた「フロー(流れ)」に乗りやすく、例えば恋愛関係だと、再び二人が「いい」コミュニケーションを重ねることができ、関係性が劇的に良くなります。
相手の態度に悶々とするならば、その悶々とする気持ちを風船に詰めて空に飛ばすイメージワークをお勧めします。繰り返し、上がってくる自分のニーズを「手放す」時は、その度ごとに「空に放つ」と思うことで囚われずに済みます。「手放します」と言葉にしながら、一歩ずつ歩くのも、しがみつきたい気持ちを昇華するのに役に立ちます。
「子供が欲しい」、「つきあっている人と結婚したい」、「長年取り組んできたライフワーク」など、大きな夢や願いを手放すときは、私は、その大きな「夢」ごと、神さまに預けるイメージワークをします。心の奥深くにある聖堂に入り、祭壇に「夢」や「願いごと」を捧げます。「真実が見えますように」と願いながら、神さまに預けることにします。
苦しくなるくらい執着する人や事柄は、これまであなたにとって、とても大切に思ってきたものです。「失う」と思えば、大きな悲しみや寂しさを感じるでしょう。大切なものだからこそ、必ずそれを善いものとして大切にしてくれるものでなければ預けられません。そこで「信頼できる存在」の象徴として「神さま」を使いますが、「神さま」は「ご先祖さま」でも、子供の頃に悩みを聞いてもらった「大木」でOKです。
わからないときほど「コミットメント」が必要
それでも「何を手放したらいいのかわからない」と感じるかもしれません。「手放したくない」という思いが強すぎて抵抗しているのかもしれませんが、そうではなくて、自分が本当に「コレ」と決めるのが怖くて覚悟できずにウロウロしているから、物事が滞っていることもあります。
「今の彼でいいのか?」、それとも「別れた方がいいのか?」。
「この仕事を続けていいのか?」、それとも「辞めて出直した方がいいのか?」。
迷いが強く、わからないときほど、「今」、この時に目の前にあることに全身全霊で取り組んでみましょう。これ以上ないくらいに誠実に向き合います。これを「コミットメント」と言いますが、とことん自分の心を捧げると決めてみましょう。するとほぼ2週間くらいのうちに、方向性が正しいかどうかがわかります。
別れるべき相手ならば、一番いい形で別れられるように物事が展開しますし、逆に、やり直しがきくのなら、そのとっかかりが見えてきます。
私たちにとって一番大切なことは、私たちが本来の「自分」を思う存分生きることです。自分が自分らしくあることで、他者にも社会にも貢献できるとき、大きな喜びと満足を感じられるのではないでしょうか。そんな自分らしい生き方を選べると、世界中から応援されているかのように、物事が簡単に進むから不思議です。
ブレイクスルー(突破口)を探しているときは、新しい自分のあり方を模索しているときです。慣れ親しんだ自分を脱ぎ捨てるのは勇気のいることですが、自分の心の真実を生きていると自信が湧いてきます。迷っているなら、「自分にとってホンモノはどれだろう?」と、真実を知りたいと願ってみましょう。きっと、ホンモノは、あなたの真剣さに応えてくれますから。自分自身を再誕生させる気持ちで、「ホンモノが欲しい」と願ってみてください。
ホンモノでないものを手放したら、もっとあなたにとってピッタリのものがあなたの人生に入ってきます。ぜひ、そんな、心が小躍りするような喜びを抱きしめてくださいね。
(完)