私の目から見れば、ほんとうにできた女房です。なのに、私ときたら‥‥
こんにちは 平です。
彼の父親は地元の名士であり、地域ではけっこう有名な人でありました。
その息子ということで、彼も子ども時代からなにかと注目を浴びてきたのですが、彼にとってはそれがプレッシャーとなっていたわけです。
「どんなにがんばっても、あの素晴らしい父親を超えることはできない‥‥」というかんじですね。
セミナーなどで私がよく言うことに、「よかったですね、あなたのおとうさんやおかあさんがショボい人たちで」というのがあります。
子ども時代の私たちが親に対してもつ不満の一つに、「もっと素晴らしい父親や母親ならよかったのに‥‥」というのがあります。
しかし、そんなみなさんに、私はこう聞きます。
「もしも、あなたのおとうさんがダライ・ラマで、おかあさんがマザー・テレサだったら、どうしますか?」
子どもですから、当然、「パパのバカ!」、「ママなんか大嫌い!」というのが出てくるはずですが、ノーベル平和賞コンビの両親には言いづらいと思いませんか?
しかも、「あんなに素晴らしい両親に不満のある自分は最低最悪だ‥‥」と思うと、本来なら親にぶつけたい怒りを自分に向けなければ仕方なかったりするわけです。
相談者の彼も、父親があまりに立派な人だったので、その父と自分を比べては劣等感を強めていき、自分に自信がまったくもてなくなっていました。
しかし、そんな彼を救ったのが、旅行でした。
いわゆるバックパッカー、リュック一つの旅行者に彼はなり、自分を知る人などだれ一人いない外国の国々を訪ね歩いてみたのです。
その旅で、彼は自由を謳歌することができたのですが、日本に戻るとやはり“社会の目”、“人の目”が気になって仕方なく、本来の自分ではいられなくなってしまいました。
いつもだれかから監視されているように感じると、まわりがすべて敵のように感じられ、心から安らぎが消えてしまったのです。
しかし、いまの奥さまと出会ったことで、彼は人生を取り戻すきっかけを得ることができたのです。
じつは彼は会社ではひねくれ者として有名でした。
しかし、生まれもった育ちの良さと人の良さは隠しきれず、同じくお嬢様育ちである彼女と波長が合い、二人は恋に落ちることとなったのです。
ただし、つねに劣等感をもっていた彼は、「こんなオレなんかに‥‥」という思いがつねにあり、恋愛においても卑屈でした。
その彼に奥さまは「じゃあ、結婚したら信じてくれる?」と言い、結婚に行きついたわけです。
が、結婚してもなお彼は自信をもつことができず、私どもにご相談におみえになったのです。
「私の目から見れば、ほんとうにできた女房です。なのに、私ときたら‥‥」
そう言う彼に、私はこう言いました。
「では、そんなにできた女房の奥さまが、男を見る目だけはなくて、あなたを選んだってことですかねぇ?」
「え‥‥!?」
彼は奥さまのことを人望の厚い女性として、非常に尊敬していました。
「そんな素晴らしい女性が、人生を賭けて選んだのがあなたなんですよ。そのあなたが、ダメな人間であるわけがないじゃないですか」
この言葉は、奥さまを深く愛するご主人には、否定できない説得力があったようなのです。
では、来週の『恋愛心理学』もお楽しみに!!