この自分を壊したいという欲求
こんにちは 平です。
先日、「娘が美容整形をどうしても受けたいと言っていて‥‥」というおかあさまからのご相談を受けました。
お嬢さんからは、「かわいい顔に生まれていたら、私の人生、もっとよくなったはず。こんな顔に生んだ責任を取ってほしい。美容整形の費用を出せ!」と迫られているとか。
しかし、おかあさまは美容整形には反対の立場であるわけです。
30年にわたる私のカウンセリング人生ですが、じつはこの手の相談を受けることは意外と多いのです。
もちろん、「女性として美しくありたい」という思いにはまったく問題はありません。
そして、お化粧の延長線上のこととして、シミやシワのケアをしようというのはだれもが考えることですし、もう一歩進んで、「目を二重にしてみようかな」、「鼻筋だけ矯正してみようかな」と思うこともあるでしょう。
しかし、それらを一気に飛び越えて、「顔かたちを抜本的に変えたい」と考える人もしばしばいます。
顔を変えることが、自分の人生を変えてくれると思い込んでいるのです。
実際に美容整形によって顔を変え、人生が変わったという人がいないわけではありません。しかし、私の知るかぎり、それは1割以下にとどまります。
この願望をもつ人に圧倒的に多いのが、「いまの自分は醜い、だからダメなんだ」という思い込みです。
この考え方が変わらないかぎり、実際に顔を変えても「自分の思ったようになっていない‥‥」と感じてしまいます。
その結果、何度も何度も整形を繰り返すという人も少なからずいらっしゃるわけです。
美容整形クリニックの医師もこのあたりのことをよくわかっていらっしゃるようで、だれにでも整形をすすめるということはないそうです。
むしろ、そうしたお客様はクレーマーになる確率が高いので、十二分にコンサルティングを行い、整形を思いとどまらせることもあると聞きます。
顔を変えたいという願望をもつ人の多くは、そうとうに強い自己嫌悪や劣等感というネガティブな感情をもっています。
その中には、「いまの自分のままなら、死んだほうがましだ」というぐらい、ひどく自分を責めている人も多数おられます。
しかしながら、「死にたい」という思いの奥底には、「生まれ変わりたい」という欲求があるものです。
自分では気づいていないかもしれませんが、「整形を受けたい」は、すなわち「生まれ変わりたい」という深層心理を表しているわけですね。
したがって、今回のようなご相談をいただいたとき、私たちが取り組むのが、「形を変える」ではなく「心を変える」というアプローチです。
自分を変えたいというケースでは、“怒り”の感情がその人を苦しめていることが多いようです。
怒りは、多くの場合、破壊衝動を伴います。その衝動が「自分を壊してしまいたい」、つまり、顔を変えたいという欲求をつくることがあるわけです。
すると、「美しい自分になりたい」のではなく、「この自分を壊したい」という欲求からの美容整形なので、実際に受けたとしても、その結果に納得できないことが多いのです。
似たようなことは美容室でも起こります。イメージチェンジを図るために髪型を変えたものの、なかなか納得できず、何度となくクレームを入れてしまったりするのです。
そう、外見が物理的にどう変わろうと、それを見る自分の目が変わらないかぎり、自己嫌悪と劣等感を解消することはできないのです。
私の経験でいえば、このパターンにハマる人の深層心理には、「私はやるべきことをやっていない」という自責感があることが多いようです。
心の中になにかポッカリと穴が空いており、人と比べ、「自分は大きく後れをとっている」、「自分は不十分だ」という思いがその人を苦しめているのです。
そんなときは、なんでもかまわないので、達成感や充実感を感じる体験を積み重ねていくことをおすすめしています。
すると、意外と簡単に現状から抜け出せることも多いのです。
では、来週の『恋愛心理学』もお楽しみに!!