知らぬまに彼女を女性として扱うようになっていきました
こんにちは 平です。
その日、おみえになった彼女は、ショートカットがよく似合う女性でした。
中・高・大とずっと女子校。明るく、スポーツも得意な彼女は、宝塚の男役のようにハンサムなエネルギーをまき散らす人気者だったのです。
そんな彼女なので、男性との浮いた話はまったくなかったんですね。
しかし、このたび、インストラクターとしてバイトしているスポーツジムの同僚の男性を好きになってしまったのです。
あまり女性らしくふるまったことのなかった彼女は、男性スタッフとはまるで男友だちのようにつきあってきました。
すると、男性陣も気さくに接してくれるので、どうしても女心や女性性は抑圧してしまいがちです。
早い話が、男性を好きになっても、その思いをどう表現すればいいかが彼女にはわからなかったのです。
彼女によると、母親はとても女性らしいタイプで、妹さんもやはりそうなのだそうです。
では、彼女はどんなきっかけで、また、いつごろからボーイッシュな女の子になったのでしょうか?
彼女が2歳のときに妹が生まれると、週末は妹の世話で忙しい母親に代わり、父親がいつも彼女と遊んでくれたそうです。
それは6歳になるころまで続いたのですが、そのとき、キャッチボールやサッカーなど男の子の遊びばかりを仕込まれたそうなんですね。
どうやらそこからボーイッシュな彼女ができあがっていったようなのです。
家の中でも、女らしい母親と妹、男っぽい父親と彼女という構図ができていったとか。
そして、彼女が思春期だった中学2年生のときに、おとうさんは単身赴任。
彼女は家庭の中では孤立しがちで、母親と妹の女子トークに加わることもあまりなく、ボーイッシュな雰囲気のまま大人になっていったようなのです。
私は彼女にこんな宿題を出してみました。
「おかあさんと、たがいに大人の女性として話をしてみてください。おとうさんとのなれそめを聞いてみるとかね」
「さらに、お化粧の仕方を聞いたり、女性らしいコーディネートのアドバイスをもらったりなどしてみてもらえますか?」
これに、彼女はたいそう抵抗しました。
が、このままでは自分が女性らしさを表現する日は来ないと心のどこかでわかっていたようで、だいぶエネルギーは必要でしたが、チャレンジしてくれたのです。
そして、妹の服を借り、母親に洋服をコーディネートしてもらったりししながら、女性らしさを学びはじめました。
また、彼女の定番であったショートカットを少しずつ伸ばして、イメージチェンジも図ってみました。
当初、スポーツ・インストラクターの彼女にとって、長い髪はすごく鬱陶しく感じられたようです。
しかし、髪が伸びてくるにつれて、カラーを入れてみようかなとか、ゆるふわパーマをかけてみようかなとか、試したいこともいろいろと出てきたのです。
そう、それは、髪が伸びるのと同じように、とてもゆっくりとした変化だったのです。
周囲の人々もその変化に違和感を感じることもなく、自然と受け入れ、彼女の中にある女性性を見るようになっていきました。
それまで男どうしのようなつきあいをしていた彼女の男友だちも、知らぬまに彼女を女性として扱うようになっていきました。
そうしてついに、彼女は思いを寄せていた彼とデートができるような関係になったのです。
が、ここにまたハードルがありました。
外見的には大人の女性らしさをかもしだすようになっていた彼女ですが、内面はまだまだウブで、極端な恥ずかしがり屋。
二人きりだと会話も弾まないダメダメちゃんだったのです。
つまり、ふだんとはまったく違う彼女になってしまうのですが、なんと、その彼女を見た彼は「カワイイ」と思ったのです。
そして、おつきあいが始まったのですが、これがまた恥ずかしいことばかり。
自分の中の女性性を思い知らされるような場面ばかりがどんどん出てくるわけです。
それは、思春期のころ、女性らしい体つきになっていく自分を父親に見られるのと同じ恥ずかしさでもありました。
それに気づいた彼女は、ドイツに単身赴任している父親に女性らしくなった姿で会いにいったのです。
そのときはじめて、父親とほんとうの大人どうしの会話ができた気がして、それによって彼女は女性であるということの恥ずかしさを乗り越えることができたのです。
では、来週の『恋愛心理学』もお楽しみに!!