誰かを責めている時、それはあなたが自分を責めている時だという視点を持ってみる
夫婦問題解決の糸口は、相手を変えるのではなく自分の内面に気づいて視点を変えること。「自らの罪悪感を感じることが辛すぎて、それを感じないようにするために誰かのせいにしてしまう」ということに気づくこと。罪悪感の正体とは「あなたの本質は愛と優しさ」であることを隠していることなのです。
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問題解決の糸口は「罪悪感の正体」を知ることです。
私たちの心は、自らの罪悪感を感じることが辛すぎて、それを感じないようにするために誰かのせいにしてしまう、という性質を持っています。
今回の心理学講座では、この視点から夫婦問題を解き明かしていきたいと思います。
例えばこんなご相談
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夫がいつも不機嫌でうんざりします。
仕事が忙しいのも、責任ある役職をこなすプレッシャーがあるのもわかるけど、家にそれを持ち込んでくるので、家族としてはいい迷惑です。
帰宅時に夕飯ができてなくて怒ったり、休みの日に子どもと出かけようとすると不機嫌になったり。
いつ夫が不機嫌になるのか気を使って疲れます。
こんな夫を変えること、できるのでしょうか。
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夫がこんな態度だったら、うんざりしてしまうのは無理もありませんよね。
それでも、夫婦、家族が仲良くやっていきたいという思いがあるなら、相手ではなく自分を変える、つまり、自分の内面を見ていく意欲を持ってみましょう。
私たちの心は、誰かに対して怒りや不平不満がある時、
1.相手の悪いところを感じている怒っている
→夫の「いつも不機嫌」「些細なことで怒る」という悪い態度へ怒り
2.自分自身の悪いところに対して自分を責めている(相手への罪悪感)
→「夫が不機嫌なのは私のせいだ」と自分を責めている(夫への罪悪感)
この二つ合わせたものを同時に感じています。
そして、2の自らの罪悪感の方がはるかに大きく自分を苦しめています。
夫が悪いのは明白ですが、自分を責めているところ、夫に罪悪感を感じていることには気づきにくい。一番の苦しみは、この罪悪感なのです。
冒頭の話
「自らの罪悪感を感じることが辛すぎて、それを感じないようにするために誰かのせいにしてしまう」
この罪悪感は、誰かのせいにして責め続けたり、不平不満を持ち続けたりしても、なくなりません。
誰かが持っているものではなく、自分が持っている罪悪感がその正体だからです。
抜け道は、この罪悪感の正体に気づくこと。
すると、罪悪感を持つ必要がないことにも気づいていけます。
今回の例で言えば、
「私のせいで夫は不機嫌だ」という罪悪感を持っているのかもしれないと気づくこと。
次に、なぜ自分を責めているのだろうかと考えてみること。
この視点で整理すると、過去の後悔や反省などが思い出されてきます。
「子どもが生まれてから夫のことを放りっぱなしだった」
「仕事が大変な時に愚痴を聞いてあげられなかった」
こんな感じです。
次に、一つ一つの後悔や反省について、やむ得ない事情があった、と当時の自分を理解してあげる必要があります。
「初めての子育てで一杯いっぱいになって心に余裕がなかった」
「実家の親が病気で看病につきっきりだった」
この例のように必ず過去の後悔には
「やむ得ないきちんとした事情」
があります。
そうやって、自分自身の過去の後悔の誤解を解いてあげてください。
そんな態度を取りたくてやっていたわけではないのです。
やむ得ない事情があっただけなのです。
カウンセリングでは、このようにして、過去の体験を振り返っていただくことがありますが、それは過去の苦しみを感じてもらうためにやっているのではありません。
誤解を解くため、その下に隠れている、あなたの愛情や優しさに気づいてもらうために、ここを通ってもらっています。
こうした整理は自分でやるのはとても大変なので、信頼できる人やカウンセラーと一緒に整理してもらうのをおすすめしています。
さて、自らの罪悪感が苦しみの元なら、それが誤解であることがわかれば、自分を責める必要も、さらに、相手を責める必要もなくなることになります。
相手が悪いところは伝えてもいいのです。
ただ、自らの罪悪感を持ったままだと、相手への怒りは大きすぎてしまうし、うまく自分の怒りと付き合っていくこともできなくなります。
こんな風に、自分の罪悪感が誤解であることに気づきながら、改めて夫を見てあげましょう。
すると、今まで見えなかったものが見えてきます。
「夫も不機嫌になりたくてなってるわけじゃないのかな」
「もしかしたら、夫も私や子どもに罪悪感を持っているのかな」
「夫は私を責めているのではなく、自分自身を責めているのかな」
そんな風に見方が変わっていけたら、あなたは「夫も私も同じように苦しんでいたのかもしれない」ということに気づけます。
「夫が不機嫌なのは、夫自身の罪悪感を感じられないから、私を責めているのかもしれない。私がそうであったように。」
ここまでたどり着けると、夫が不機嫌であるという苦しみは、ぐっと減らせます。
なぜなら、あなたは、夫のことも、あなた自身のことも責めなくなってきているからなのです。
すると、夫のことを見守ったり、段々と優しく接することができるようになります。
そうして、本当は夫のことを愛したかったという、あなたの本当の気持ちに気づいていけます。
あなたの罪悪感の正体は、あなたの本質は愛と優しさであることを隠していたということなのです。
(完)