嫌な感情は、自分の中にある抑圧された感情を教えてくれるサイン
怒っている人を見ると、「あんなに怒るなんて…」と嫌悪感を抱いてしまうのに、周りは「そんな日もあるよね」とあまり気にしていない様子。そんな時は、なぜ自分だけ?と疑問に思うかもしれません。実は気になるのには理由があります。どのようにしていけば、気にしない自分になれるのか見ていきましょう。
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こんにちは。
今日の心理学講座はカウンセリングサービス『高見綾』が担当します。
職場などで怒っている人を見ると、「あんなふうに怒るなんて…」と嫌悪感を抱いてしまうのに、周りは「そんな日もあるよね」とあまり気にしていない様子。すると、「私が気にし過ぎなのかな?」「私は心が狭いんだろうか?」と不安になってしまうかもしれませんね。
怒っている人を見るとすごく嫌な気分になるという場合は、何か理由がありそうです。どんな心理があるのでしょうか。
◆なぜ怒っている人を見ると過剰に反応してしまうのか?
怒っている人が特に苦手だという人にお話を聞くと、身近(多くはお父さんやお母さん)にヒステリックに怒る人がいて、さんざん嫌な体験をしてきていたりすることが多いです。子どもの頃は黙って耐えるしかなく、自分の気持ちは聞いてもらえなくてただ我慢するしかなかったというケースも少なくありません。
そのため、怒っている人を見ると、かつての嫌な感情が思い出されてしまって、その人に対して嫌悪感を抱いてしまうということがあるようです。
一般的に職場などの社会的な場所では、感情を露わにすることは子どもっぽいことだと考えている人もいます。「大人なら気持ちをコントロールすべきなのに」という思いがあると、余計に不快に感じてしまうのもあるかもしれませんね。
自分は今まで嫌なことがあっても怒らないように気を付けてきたような場合は、余計にイライラしてしまうものです。私たちは自分が禁止していることを、他人が堂々をやっているのを見ると腹が立つものなんですね。
「私はなんでこんなに嫌な気持ちになるのかな?」と気づいたら、それは自分の中にある抑圧された感情を教えてくれるサインなのです。
◆怒っている人を反面教師にして、怒りを抑圧してきた
かつてのお父さんやお母さんに対して思ったように、「あんなふうに怒るなんて迷惑だ、すごく気分が悪くなる」と自分が感じているので、反面教師にして「自分は絶対にあんなふうにはならないぞ」と決める人もいます。
すると、自分が怒りを感じたときにも「そんなふうに思っちゃいけない」となるべく感じないようにしようとするのです。子どもの頃から我慢をしなければいけない環境にいた場合も、その頃の癖で気持ちを抑えようとします。
でもネガティブな感情が湧いてきても見ないふりをしていると、その感情は解放されずに溜まっていきます。心の垢みたいなものですね。
本来であれば、ちょっとした不満を感じたときに「こうしてほしい」とちゃんと言葉で伝えることができていたら、それほど心の垢は溜まっていきません。でも言わずに我慢しようと思っていると次第にイライラや怒りが膨らんでいき、我慢に我慢を重ねた末に大爆発…なんてことになりかねないのです。
言いたいことが言えない自分が嫌で自己攻撃がひどくなってしまう、NOが言えないあまりに人間関係が嫌になって何も言わず関係をバサッと切ってしまうこともあるでしょう。いずれにしても、あまり良い方向には進まないんですね。
もともと、怒る人が嫌いでそうはならないようにしようと思っていたのに、自分の心の中は怒りでいっぱいになってしまうのです。
◆自分の中にある怒りや悲しみを受け入れよう
怒ってる人が嫌いという人にお話を聞くと、たいてい「怒ることが苦手」といったお話になります。どうやら、怒ることは良くないから抑えなければならないというイメージが強いようなんですね。
確かに他人に対して感情に任せたまま怒りをぶつけたら、関係性はうまくいかないでしょう。怒りは本当の気持ちではなく二次感情だと言われていますので、怒りの下にある本当に伝えたい気持ちを言葉に変えて相手に伝えることがとっても大切になってくるんですね。
でもそのためには、まずは自分の怒りを受け入れる成熟さが求められているのです。本当に穏やかで前向きな人というのは、自分のネガティブな感情を素直に認めて、ちゃんと向き合って消化していける人だと思うのです。
自分の中に抑圧された怒りがいっぱい溜まっている状態だと、怒っている人を見たときに自分の中にある怒りが共鳴して余計に気になってしまうのです。
まずは、今まで溜め込んできたさまざまな思いを吐き出していきましょう。もちろん親など身近な人との間に感じていたものも癒していくといいですね。あの時辛かった、悲しかった、自分のことをもっと見て欲しかった…そういった今まで抑えてきた気持ちを吐き出して認めていきます。
自分の中にも怒りがあること、悲しみがあることを受け入れることができたら、誰かが怒っているのを見ても、以前に比べて過剰に反応しなくて済むようになります。そうすれば人間関係が随分楽になりますよね。
ネガティブな感情を嫌うのではなく、上手に扱える自分になることを目指していきましょう。
(完)