相手にもしてこなかったようなタイプの人が〇〇を教えてくれるなんて
こんにちは 平です。
彼女は自他ともに認める“計算ずくの女”でした。
その彼女が、今回、恋をした相手は、なにを間違ったか、8歳も年下の23歳の青年だったのです。
彼は地方出身の純粋な男性で、彼女の勤務先企業に派遣社員として送り込まれていました。
ことの発端は、彼がキャバクラの女性にカモにされているらしいことに、彼女が気づいたことにありました。
なんといっても計算ずくで生きてきた彼女ですから、相手の女性のやり口が手にとるようにわかります。
「その相手から、こんなこと言われなかった?」
「こんなリクエスト、されなかった?」
彼に聞いてみると、案の定、すべてがあてはまっていたわけです。
「ほらね、あなた、たかられているのよ。純粋でだましやすいタイプだからね」
彼はキャバ嬢の身の上ばなしを鵜呑みにし、同情し、その時点ですでにだいぶ入れあげていました。
しかし、彼女の忠告を素直に受け入れ、そちらの女性とは縁を切り、仕事にも身が入る日々が戻ってきたのです。
「お金もなくなっちゃったので、当分、土日は寝て暮らしますよ。トホホ」
「しょうがないわね。晩ごはんぐらい、おごってあげるわよ」
‥‥というところから始まった、二人のつきあいだったわけです。
当初は純粋な彼に同情し、まるで弟の面倒を見るおねえさんのような気分だった彼女、途中からはだんだん子どもを見守る母親のような感覚になってきていました。
そこに、彼からの「好きになってしまいました」という突然の告白。彼女はものすごく動揺し、たくさんの友人に相談しました。
で、そのうちの一人、計算ずく仲間の友人に、「あんた、惚れちゃったわね!」と笑い転げながら言われたとき、自分が迷っているのは好きだからなのだということに気づいたのです。
そうして彼とのおつきあいが始まったわけですが、とにかく、すべてが恥ずかしいのです。
少年といってもいいぐらい若くて世間知らずの彼のことを好きになってしまったことが恥ずかしい。
これまでにターゲットにした人たちとは違い、地位も名誉もお金もない彼のことを好きになり、自分が貢ぐハメになっていることもまた恥ずかしい。
そして、考えるわけです。「なんで、こんな人を好きになっちゃったんだろう‥‥?」
しばらくして、思いあたることが出てきました。
それは、彼女が小学校のころ、飼いたかったけれど、あきらめざるをえなかった子犬のことです。
「純粋な子犬のような彼を見たときに、あのとき、母親にさんざん叱られ、手放さざるをえなかった子犬のことを重ねていたんだ‥‥」。
彼のことをそんな見方で見ていた自分に気づき、それもまた彼女にとってはショックなことでした。
しかしながら、彼女の心がほんとうに望んでいたのは、子犬のような彼を助けてあげたいということではなかったようです。
彼とつきあっていくことで、あのころのような純粋な自分にもう一度、戻れるのではないか、そんな気がしていたのです。
たしかに、彼は計算ずくという表現とはほど遠いタイプで、お金はないくせに、コンビニで募金箱を見つけると、つい寄付をしてしまうようなところがありました。
そんな彼の世界観に彼女もどんどん引きずられ、影響を受けるようになっていました。
そして、計算ずくの自分より、彼と一緒にいるときの自分のほうが心地よいとも感じるようになっていたのです。
「いままでさんざんバカにして、相手にもしてこなかったようなタイプの人が、私のいちばんしたかったことを教えてくれるなんて‥‥」
彼女はただただびっくりしているのでした。
では、来週の『恋愛心理学』もお楽しみに!!