『ファンタジー』の心理(2)

「ヴィジョンに生きる」

こんばんは。

神戸メンタルサービスの平です。

前回、ファンタジーに関してのお話をさせていただいたところ、とてもたくさんの人からご質問をいただきました。

私の説明が不十分だったせいもあり、誤解をされている方もたくさんいらっしゃったようなので、今回はもう少しファンタジーのお話を続けさせていただきます。

ご質問の中で一番多かったのが、「ファンタジーが満たされないものを埋め合わせるためのものだとしたら、ファンタジーを持つことは悪いことなのでしょうか?」というものでした。

誤解された方も多かったようなのですが、ファンタジーと似ているものに夢やヴィジョンというものがあります。

私が言いたかったことをわかりやすく例えると、「ハワイのパンフレットやハワイのテレビ番組を見ただけでハワイに行った気になって満足してしまう」といったことをやめましょうということなのです。

仮に、あなたが実際にハワイ旅行を計画し、ゴールデンウィークにハワイに行くことを決めたとします。あなたはきっと旅行ガイドやパンフレットを見ながら夢をふくらませていることでしょう。

今は、2月なのでゴールデンウィークまではまだ3ヵ月もあるのですが、ガイドブックを読んでいるとき、あなたの気分はまるでハワイにいるかのようで、心は喜びであふれています。

この状態というのはある意味で、体は日本にいながら、魂はハワイに飛んでいるようなもので、3ヵ月先の喜びを今体験しているといってもいいかもしれません。

当然、そんな気分のときのあなたは、満面の笑みをたたえ、幸せのオーラを振りまいていることでしょう。まわりの人は、そんなあなたを見て、「いったいどうしたの?」と思わず聞いてしまうかもしれません。

あなたがあまりにも幸せそうなので、あなたを見ている周りの人まで幸せな気分になってきて、「私もハワイに行こうかなぁ?一緒に連れてってよ」など周りの人を幸せのオーラに巻き込んでしまうようなことが起こるのです。

こういう状態を「ヴィジョンに生きる」といいます。

ゴールデンウィークが近づくにつれて、あなたの喜びはますます大きくなり、あなたの顔はニヤけっぱなしになります。周りの人からも「いよいよハワイが近づいてきたね」などど言われ、周囲が楽しい雰囲気に包まれます。

そして、旅行当日はまるで「Dreams Come True」。夢が成就して、とても幸せを感じることになるのです。

ファンタジーというのは、あなたが実際に「何とかしてハワイに行こう!」と考える代わりに、ハワイには行ってみたいけど、お金もないし、一緒に行く友達もいないし、どうせ行っても楽しくないだろう、と思って実際に行くための行動をしないで、そのむなしさを満たすために、空想だけでハワイ旅行を楽しむといったことをいっているのです。

これを男女関係に置き換えて考えてみましょう。

もし、今パートナーがいない人なら、パートナーができたら、あんなこともしたい、こんなこともしてみたい、いっぱいデートも楽しみたいと、思い続けて、それを現実にしようとしたときに、あなたの人生の何かが動いてくるのです。

でも、「パートナーができても、初めはいいけどいつか別れることになるんじゃないか?」などという怖れや不安を抱いたり、「永遠に愛し合えるような関係など存在しない」と思っているために、かりそめの関係しか持てなかったり、今がよければいいなじゃいかと考えたり、人によっては、恋愛映画だけで自分のロマンスを満たしてしまう、という人もたくさんいます。そしてそれは、もったいなさすぎます。

昔、私のセミナーに車椅子の青年がやってきたことがあります。

彼は、交通事故でそのような体になってしまったのですが、その事故以来、自分は結婚することなどはできない、パートナーを持つことなどあり得ないと思ってしまい、自分の人生からパートナーシップを持つこと、自分人生に夢や可能性を持つことを閉ざしてしまったのです。

その彼にこういうワークをしました。

「何年か先に、もし仮に君が車椅子を手放すことができて、本当に健康な体になったとしたら、どう思いますか?そして、そのときの自分ってどんなだと思いますか?」

そして彼に、そのときの自分のような健康で元気あふれている自分を表す人をセミナーの参加者から選んでもらい、彼の10mほど前に立ってもらったのです。

彼のいる場所と彼の選んでもらった健康的な男の人との間の10mには彼の悲しみや絶望がつまっているわけです。

彼はこれまで、10m先にいるような自分にはなれるはずもないと思って、この自分を見ずに生きてきたわけです。

「もし仮にそうなれたらどう感じますか?」という質問をしてみました。

「もしそうなれたとしたら、うれしくてうれしくて号泣してしまう」と彼は答えてくれました。

「もしそうなれたとしたら、うれしくてうれしくて号泣してしまうのは君だけかな?」という質問をしたところ、「いや、それは・・・・・・」と言うと、泣き出してしまいました。

こんな体になってしまった自分をすごく責めている部分が、たくさん出てきたのです。

「自分を責めるよりも、気づいて欲しいのは、君だけじゃなくてみんなが君にそうなってもらいたいと思っていることだよ」

私の言葉で彼はセミナールームのみんなが本当に真剣なまなざしで彼を見ているのに気づきました。

「奇跡かもしれないけど、そんな健康な彼になってほしい」「あそこまで歩いて行ってみようよ」「なれるかどうかはわからないけど、夢の扉は開けていようよ」とみんなが応援していたのです。

そのとき彼は、目の前に立っている男の人をしっかりと見つめながら、そちらの方へ車椅子を動かし始めてくれたのです。そして、そんな彼をセミナールームみんなは応援てくれたのです。

彼は泣きながらこう言ってくれました。

「今もこんな人たちは僕の周りにたくさんいる。もし、ああなれたならみんな喜んでくれるだろうなぁ」

彼がその男性に近づいてしっかりゴールインできたとき、みんなの心は本当にうれしいという喜びで満たされました。

みんな彼のもとに駆け寄って彼を抱きしめてワンワン泣きました。そのとき、あの交通事故以来、彼の顔から消えていた笑顔と喜びが戻ってきたのです。

今あなたがどんな状態であったとしても、夢は今のあなたを輝かせる力を持っているのです。

では、次回の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。