自分を大きくみせる嘘
嘘はつかれたくないものですし、つきたくないものです。
今では当たり前になった「盛る」という言葉があります。
SNSなどで、実際よりも見た目を美しく加工した写真をのせたり、豪華に見せたりする時に「盛る」と言うようですが、今回お話しする嘘は、盛る嘘とも言えます。盛るのは自分で、実際よりも自分を大きく見せるために話を盛る嘘です。
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嘘をついてしまう様々な心理を解説するシリーズ3回目は、【自分を大きくみせる嘘】についてです。
自分を大きくみせると言っても、もちろん肉体を大きくみせるという意味ではありません。
自分の価値や、影響力、存在を大きくみせるためです。
自分の価値や、影響力、存在感を大きくみせることで、何らかの利益を得たいという思いが隠れている場合もあれば、自信のなさを隠そうとしている場合もあります。
また、自分の価値や、影響力、存在感を大きくみせることで、誰かを守ろうとしていることもありますので、複合型とも言えるかもしれません。
誕生日パーティーに10人集まってくれたというときに、100人集まってくれたと嘘をつく。
収入を実際の倍あると嘘をつく。
部下が10人いるのを、100人いると嘘をつく。
その道5年なのに、10年やっていると嘘をつく。
5か国に旅行に行ったことがあるのを、20か国旅行したと嘘をつく。
3人から告白されたことがあるのを、10人から告白されたと嘘をつく。
というように、実際の数字よりも大きく言う嘘です。
誕生日パーティーは嘘ではないのです。
収入はあるのです。
部下はいるのです。
その道は歩んでいるのです。
海外旅行には行っているのです。
告白されたことはあるのです。
無いものを有ると言う嘘とは違い、有るものを盛るのです。
ですから、全くの嘘というわけではないので、ある意味見破られにくい嘘なのかもしれません。
数や大きさ、程度を盛ることによって、自分が価値ある存在だとアピールしたかったり、こんなに影響力があるのだと伝えたかったり、多くの人から好かれていると伝えたかったりするときについてしまう嘘です。
誰もが自分の価値を認めてもらいたいと思っていますから、誰もがついてしまうかもしれない嘘です。
盛る理由の大元は、自分の価値や、影響力、存在を大きくみせたいということなのですが、そうしたい事情は様々あります。
シリーズ1回目でご紹介したように、怖れが強いために自己防衛する必要がある場合、自分を大きくみせることで、好かれたり、尊敬されたり、価値ある存在だと思ってもらうことで、嫌われる怖れや、怒られてしまう怖れから自分を防衛するために、自分を大きくみせる嘘をつきます。
またシリーズ2回目でご紹介したように、誰かを守るために、「この私が言っているのだから、大丈夫ですよ」という安心感を与える効果を狙って、自分を大きくみせる嘘をつくこともあります。
もちろんこの場合は、やさしさから相手へ安心感を与えようとしています。
そして、これは次回詳しくご紹介しますが、悪意がある嘘の場合も自分を大きくみせるための嘘をつくことがあります。
誰かに不利益を与える目的で、信用させるために自分を大きくみせるための嘘をつくのです。
自分を大きくみせる事情は、様々なのですが、何かを得ようとする嘘とも言えます。
価値を大きくみせることで、評価を得たかったり、影響力を大きくみせることで、人望を得ようとしたり、存在感を大きくみせることで、利益を得ようとしたりするのが、嘘をつく動機となります。
自分を大きくみせる嘘の場合、その嘘がばれてしまったときに、元々あったその人の価値や、影響力、存在感がなくなってしまうこともあります。
その人には価値や、影響力、存在感が元々あったのですが、嘘をついて盛ってしまったために、全てを失くしてしまうのです。
有るものを盛ると、有ったものを失くしてしまうという何とも悲しい状態になってしうのですから、皮肉なものですね。
自分を大きくみせる嘘で、例え誰も傷つけないとしても、嘘をついていることは自分が一番よくわかっていますから、むなしさを感じることもありますし、罪悪感をもつこともあります。
また、何かを得ようとしてつく嘘ですが、嘘によって何かを得たとしても、心から喜ぶことはできないということを理解しておく必要があります。