思い返せば昔は苦手だったけれど、今は好きになれた。
皆さんは、そんな体験をしたことはありますか?
今でこそプロフィールに「猫が好き」と書く私ですが、実は子供の頃は猫が苦手でした。
野良猫に引っかかれてしまってから「猫って怖い」と思っていたんです。
そんな私が中学生になる頃、ある晴れた日に部屋の窓を開けるとベランダに一匹の猫がお昼寝をしていました。
威嚇されるんじゃないか…と身構えたのですが、その猫はとても人に慣れていたようで、伸びをしてまた眠り始めました。
「今までの猫と違う」
そんなふうに思いながら、近所で見かけるたびに何となく気になっていました。
人懐こい猫はすぐに近所の人に好かれ、しばらくすると子猫を6匹ほど産んだのです。
生まれた子猫の可愛さに、猫が苦手という私もすっかり魅了されてしまいました。
そして、その子達の成長を見ているうちに気付いたのです。
「猫」と言っても、それぞれに性格や気質が全く違うんです!
人間が大好きですぐ甘える子。
ずっと警戒心むき出しの子。
繊細で撫でさせてはくれないけれど、名前を呼んだら返事はする子。
そんな個性豊かな猫達と一緒にいるうちに、私はいつの間にか「猫って苦手」から「猫が好き」に変わっていたのです。
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5月も半ばを過ぎて新しい生活や場所に慣れてきた頃、私達カウンセラーの元には「苦手な人」の相談が多く寄せられます。
私も職場に苦手な人がいたりして、心理学を学ぶまではこの時期はたくさん悩んできました。
でも、あなたが見ているその「苦手な人」は、本当にその人自身と言えるのでしょうか?
過去の出来事や、あなたの中にある「人はこうあるべきだ」という期待を通して、その人を見ていませんか?
とても変な質問ですよね。
けれど、私達には「投影」という自分達の感情を他人や物事に映し出して見てしまうクセがあるのです。
昔、私が猫に引っかかれて「猫って怖い」という思いを持ってしまった時、どうしてもそれ以降はどの猫を見ても「同じことをするんじゃないか」としか思えませんでした。
それに「動物は可愛いもの」と思い込んで期待した分、違う反応をされてショックを感じていました。
これも「投影」の一つだったんだなと後からわかったのです。
人間関係で感じる「苦手」も自分を見つめ直してみると、「投影」が入っていることが少なくありません。
でも、投影しているのかもと頭では理解できても、苦手なものは苦手だったりしますよね。
少なくとも、私はそうでした。
そして、そう思う時は「苦手」から「好き」に変わった猫達との関わりをよく思いだしていたのです。
どんなに可愛い子猫だって、怖がりな子はどうしても威嚇してきます。
もし、そこで私の「苦手だ」という気持ちを無視して距離を詰めれば、私にとっても猫にとってもお互い良い関係は作れなかったでしょう。
人間だって同じなのです。
あなたが我慢して上手くいく場合はいいのですが、あなた自身が燃え尽きてしまいそうな時は、まずは「苦手でもいい」と自分の気持ちを受け入れた上で「どんな関係にしていきたいか」を決める必要があるのかもしれません。
私が目指していたのは、お互いが怖いと思わなくていい距離感でした。
そのためには、「どんな子猫なのかな。何が好きなのかな」と子猫の個性を理解する必要があったのです。
猫にそこまでしなくても…とは思いました。
でも、他の子猫と接するには威嚇する子も近くにいるのでどうしても目に入るのです。
そうなると気になってしまうので、少しでもお互いラクな距離感でいたかったのです。
どんな子猫なのか興味を持ってみていると、段々とあまり見ない方がいいんだなとか、お肉味が好きなんだなとか、運動神経がいいんだなとか他愛ないことがわかってきます。
そうなると自分の怖いと言う緊張も少しずつほぐれていきました。
人間も動物も同じで、一方が怖いと感じてしまうと警戒されたと感じ取った相手は同じように緊張したり、防衛的になったりしてしまいます。
けれど、ただ「どんな人なのかな」と警戒せずに、その人そのままを見ているうちは相手も警戒されているとは感じません。
もちろん、人の方がもっと複雑な関係性や個性があります。
けれど、あなたがその人を「苦手」だと感じた時に、「苦手」と感じている自分が相手に近づいていったところで「受け入れてもらえる」と感じるでしょうか?
むしろ「苦手だと思っている自分の気持ちが相手に知られたら、好意的に思ってくれるはずがない」と思いませんか?
そう思ってしまうと、ますますその場から離れたくなったりしませんか?
でもそれは、その人自身が嫌なのではなく、そこで感じている感情から離れたいのかもしれません。
けれど、もし、その人がどんな人なのか興味を持って相手の人を深く知ることができた時。
そして「思っていた人と違った」「なんだ、こんな可愛いところもあったのか」「そんなふうに思って生きてきたんだ」…そんな相手の一面を知れた時、あなたの中の苦手な気持ちも好きに変わっている可能性も充分あるのです。
それを反転させてくれた相手は、生涯にわたってあなたの中の忘れられない大切な人になるでしょう。
そして、あなた自身も自分の器の大きさや優しさ、愛情に気付けるかもしれません。
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人懐こかった子猫も威嚇していた子猫も、私にとっては好きに反転した瞬間に、どれもキラキラした可愛い個性に見えました。
いつも威嚇していた子が、手から餌を食べてくれた瞬間は今でも忘れることができません。
私は、あの子達に出会えて猫の可愛さだけでなく、苦手な人を好きになるヒントもプレゼントしてもらいました。
今、どんな猫を見ても可愛いなと思えます。
でも、あの子達と同じ猫はどこにもいないのです。
それは、人間も同じです。
苦手だと感じる人も、好きだと感じる人も、皆、誰かの大切な一人で同じ人はいません。
苦手な人に出会った時、思い出を嫌な記憶にしてまた誰かとの間で引っ張り出してくるのか、それとも自分にとっても相手にとっても素敵な思い出にするのかはいつでも選ぶことができます。
こう話すと「今まで人間関係を避けてきた私はダメなんです」という声もお聞きします。
でも、超えられない問題は、あなたの感情を揺さぶることはありません。
あなたの「苦手」が「好き」に変わった時には、いっぱいその世界にハマってください。
そんな「これから」を一緒に探していきましょう。