仕事を休むのが怖い!?
「私には何の価値もない」と感じてしまう感情のことを無価値感といいます。無価値感の強い人ほどハードワークになりやすいということをご存じでしょうか?なぜならば、ハードワークしている間だけは「価値のない自分」を感じなくていいから。そんな自分を感じることが怖くて仕事にのめり込み止れなくなってしまうのです。
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◆ハードワークには2つのタイプがある
ハードワークには2つのタイプがあります。本当に仕事が好きでたまらない人もいれば、心身ともにボロボロになりながら仕事をしている人もいます。後者のタイプに無価値感が強い傾向があるようです。
多くの人にとって仕事は一日の大半を費やすもの。時間を費やすほどに「自分=仕事」になっていきます。いつのまにか仕事が自分のアイデンティティを表すものになり、自分と仕事の一体化が起こります。アイデンティティとはなにかといえば、自分とは何か、自分とはどういう存在かという身分証明書のようなもの。
ハードワークの人に話を聞くと「何かをしていないと居心地が悪くなる。頑張ることをやめることが怖い」と言うのです。「暇になるとどうしていいかわからなくて、することを探してしまう」という人が多いようです。
休まないというよりは、休めないのですね。何もしない時間が苦手で、自分を忙しくさせるクセがあります。「自分がここにいられるのはこれだけの仕事をしているからだ。これだけの仕事をしなければ自分の居場所がなくなる」と思うのです。
◆仕事以外の自分が消滅をしていく
頑張っているからここにいられる。頑張っていない自分はここにいてはいけない。つまり、自分の居場所を確保するために頑張りすぎてしまうパターンがあります。すると、次第に自分のことを「仕事をする以外に価値のない人間だ」と思うようになります。
これは無価値感がもたらす罠で、仕事に費やしている時間がほとんどなのですから、仕事以外のところにある個人的な価値に目を向けようがなくなるのです。なぜならば、仕事ばかりをしているので、仕事以外の自分がどんどん消滅していくから。
たとえば、マイホームパパと呼ばれる人たちは、仕事以外に家庭人としての顔があり、子供にとって必要とされる父親の顔というアイデンティティをもつことができます。また、趣味をもっている人は、会社以外の地位や肩書の関係ないところで、スーツを脱いだ普段着の自分というアイデンティティをもつことができます。
ですが、仕事人間になると仕事そのものが自分のアイデンティ、つまりは自分の身分証明書や存在価値になってしまう。ゆえに、無価値感の強い人のなかには、地位や肩書にこだわりのある人が少なからずいるともいわれています。
◆ハードワークの行きつく先
また、自分は何をしても出来が悪いとか、無能であるというような無価値感をもっている人は、ハードなワーク(過酷な仕事)になりやすいようです。
ブラック企業だとわかっていながらも辞められない、誰もしたがらないような過酷な仕事ばかり選ぶ、とても安い賃金で長時間労働をするなど、自分の心身を犠牲にしてしまうことがあるのです。
「ここを首になると他では雇ってもらえないだろう。だからここにいるしかない」という気持ちが強くなってきたら、ハードなワークの罠にはまっている可能性があります。ハードワークもハードなワークも行く先は、犠牲、無気力、燃え尽きなど、デットゾーンへ向かっていくことが多いといわれています。
仕事をする以外に価値のない人間だと思うと、このようなことが起こりやすいのです。ハードワーク問題を抱える人は、仕事をしなくても、頑張らなくても、犠牲をしなくても、自分には価値があることを受け入れる必要があります。
「え?じゃぁ、仕事しなくてもいいの?」と思うかもしれませんが、ここでいいたいのは「そこまで頑張らなくても愛される」ということです。
日本人の多くは病気などになることで「もう、いいよ。休んだほうがいいよ」と、ようやくまわりの人からの愛を受け取ることになる人がとても多いのです。
逆にそこまでいかないと、頑張らない自分でも愛されることがわからないし、頑張りすぎている自分を見てまわりがどれだけ心配しているかにも気がつけないのです。
ハードワーク問題の多くは、まわりの人の愛を受け取ることで歯止めがかけられることが多いので、カウンセリングではこんなご提案をします。
「友達に弱みを見せてみましょう」
「奥さんにしんどいと言ってみてください」
「チームのみんなに助けてほしいと頭を下げてください」
「部下を信頼してもっと仕事を任せてみませんか」
デットゾーンのときは、これだけはやりたくないということをしないと抜け出せないというのは、心理学でもよくいわれること。
皆さんはどうですか?頑張らない自分には何の価値もないと思っていませんか?
(完)