パワー・オブ・コミットメント

「あの目標に、必ず向かっていく」と決めること

こんばんは。

神戸メンタルサービスの平です。

今回は“コミットメント”のパワーについてお話しさせていただきたいと思います。

“コミットメント”とは、日本語に直訳すると、「決意する」、「決断する」、「心に強く決める」といった言葉になります。男女関係の場合は、「なにがあっても、彼についていく」とか「彼以外の男性には見向きもしない」などの意味になると考えていただくとよいかと思います。

私の先生はアメリカ人の心理学博士なのですが、その先生から、コミットメントとは、アメリカ的にいうと、「契約書にサインするようなかんじかなぁ」と教えてもらったことがあります。サインしたかぎり、もう逃げられないわけです。

このコミットメントという考え方を学んだとき、まだ20代だった私は、「なんか不自由なかんじだ」とか「拘束されそうだなぁ」という印象をもちました。

そんな私に、昔、スゴ腕のプレイボーイであったわが師は言ったものです。「僕もじつはそう思ったんだよね。でも、実際はね、コミットメントしたことで、僕はほんとうの意味で自由になったんだよね」。

そのころ、私は独身で、ちょうどいまの奥さまとつきあいはじめた時期でした。

私は実家に住んでいたので、お給料は丸々お小遣いといえるような暮らしで、いわば自由な独身貴族だったわけです。

そんな私にとって、結婚するということには、もちろん、「大好きな彼女といつも一緒にいられる」というメリットもありましたが、その一方、「不自由になったり、拘束されたりしてしまいそうだ」という感覚もやはりありました。

そこで、「なぜ、コミットメントできないのか?」ということを、自分の心の奥深くに入って、じっくり検討してみたのです。

すると、最初に出てきたのは“疑い”でした。

「ほんとうに、ほんとうに、この娘に決めてしまって大丈夫なのか?」、「彼女以上に好きになる人は、もう一生、現れないんだろうな?」、「結婚してから、もっと素敵な女性に出会ってしまったら、どうしよう?」‥‥。

自分の心の中に、ものすごい数の疑いがあったのです。

しかし、そのすべては、「コミットメントしないですませる」ための言い訳のようなものでした。

そして、私が腹をくくれていない度合いだけ、私の愛情はいろいろな局面で、浅く、軽く、上っ面だけのものであるかのように、彼女にも感じさせていたのです。

迷っているということは、「前に進もうかなぁ」と右足を一歩出したところで、「でもなぁー」と考え直し、出した右足を元に戻す、「でも、やっぱり行くか」と決めて、もう一度、右足を出したものの、「でもなー」と思い直し、その右足をまた引っ込める‥‥。

こんな作業を繰り返しているようなものなのです。当然、一歩も前には進めませんよね。

それに対し、コミットメントするということは、「あの目標に、必ず向かっていく」と決めることです。

当然、あなたにとって、「やめる」という選択肢はありません。

だから、どんな問題が出てきたとしても、「どんなふうに、乗り越えようか」、「どうやって先に進もうか」ということしか考えません。

すると、あなたは、もてるすべてのエネルギーを使って、前に歩いていくわけです。

それは、とてもクリエイティブなことでもあります。

迷ってばかりいて動けず、状況が滞っている人とは対極に、あなたはさまざまな工夫や方法を取り入れながら、状況を変える力を発揮しているのです。

また、そこには、心理学でいう“吊り橋効果”もあります。

ものすごく恐い吊り橋の向こう側に、缶ビールが1本置いてあると思ってくださいね。あなたは、とても恐い思いをしてその吊り橋を渡って、その缶ビールを飲みます。

それは、ものすごくおいしいと思いませんか?

なぜなら、そのビールがまずかったとしたら、大きなリスクを冒した意味がなくなるからです。

人間の心とはおもしろいもので、こういうときは必ず自分の行動を正当化するかのように、ビールがすごくおいしく感じられるようにできているのです。

同じように、あなたがパートナーにコミットメントした度合いだけ、あなたの目にはパートナーがいっそう魅力的に映り、愛おしく感じられます。

すると、パートナーもあなたに心から愛されていると感じられるので、あなたをより愛してくれるわけです。

それを感じたあなたは、パートナーをもっともっと愛するようになる‥‥、こうして、ラブラブなスパイラルが完成するのです。

私たちがパートナーにコミットメントできないとき、その理由は“疑い”であるというお話をしましたが、ほんとうの“疑い”はじつは自分に向けられています。

「自分には、100%愛される価値があるのか」ということを、私たちはいつも疑っているのですね。そして、パートナーに100%愛してもらえたら、ようやく、自分も相手を愛そうと考えています。いつも愛を待っているわけです。

でも、コミットメントとは、「まず自分から相手を100%愛そう」という意欲をもつことなのですよ。

では、来週の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。