相手の問題を肩代わりしてしまう「癒着」を解消するために
なぜか周りから依存されて、いつも自分が受け入れる側になって気がつくと疲れ果てている。
人間関係と聞くとしんどいことばかり思い出される・・・
そんな問題が繰り返されているとしたら、「癒着」というテーマに取り組んでみると良いかもしれません。
■癒着があると心の境界線を越えてしまう
周りの誰かとの心理的な距離が近づき過ぎてしまうことを「癒着」と言います。
癒着の状態になると、相手との心の境界線が曖昧になってしまい、相手の問題なのに自分の問題のように感じてしまうのです。
とは言え、私たちは日常的に周りにいる人たちから様々な感情的な影響を受けいていますので、相手の感情が伝わってきたり、それによって気づかないうちに自分の感情が感化されてしまうのは特別なことではありません。
たとえば、目の前に重そうな荷物をいくつも背負ってしんどそうにしている人がいたら、「ちょっと持ちましょうか?」と手伝ってあげたくなったり、その人を「助けて楽にしてあげたい」気持ちになることは想像しやすいかと思います。
これがまったくの他人であれば、今は急いでいるからと見過ごしたとしたとしても、多少の心苦しさを感じを感じるくらいで済むでしょうし。逆に余裕があるので手助けをして相手から感謝をされたら、「良いことしたな」とその日は良い気分で過ごせるかもしれません。
ただ、もし相手があなたの家族、恋人、友人など大切な人だったとしたら、「助けたい」気持ちは比べ物にならないくらい強くなるのではないでしょうか。
■家族関係を見直してみると
癒着の状態にあると、この「助けたい」という気持ちが相手との境界線を越えてしまい、自分が「助けないといけない」ような気持ちになってしまうのです。
無意識的に他人の感情を自分のものだと思い込んでしまう上に、他人の問題を「自分が何とかしなければ」と思い込んでしまうわけです。
恋愛のカウンセリングをしていると、いつも「助けたい」パートナーとばかりつきあってしまうという相談をお聞きすることがあります。
そういう人の家庭環境や生育環境をくわしくお聞きすると、
・両親の仲が悪くいつもケンカをしていた
・逆に両親の仲が冷え切っていてお互いの距離が遠かった
・家族の中の誰かがDV、アルコール、病気などの問題を抱えていた
というお話が出てくることは少なくありません。
たとえば、お父さんお母さんがしんどそうにしている。家族の誰かのことでみんなが暗い顔をしている。
すると子供の豊かな感受性は、そんな家の中の重たい空気を敏感に察知します。
そして、くわしい事情は分からなくとも「何とかして、自分が両親を家族を助けたい」という気持ちを抱えて、子供なりに必死に頑張るわけです。
もし子供時代からこうした感情を抱え続けていたとすれば、成長してからも誰かの感情を境界線を越えて混同してしまい、相手の問題を自分のものだと思い込むようになっても無理はないんですね。
恋愛であれば、本来はパートナーの背負っている『何らかの問題』や『しんどい感情』を無意識的に肩代わりしてしまい、「なぜか知らないけど恋愛をするといつもしんどい」という問題になるんです。
■癒着を解消するためにできること「気づく」「自分に目を向ける」
自分の境界線を取り戻すために大切にしたいのは「気づく」こと、そして「自分の問題に目を向ける」ことです。
「これって私の感情?それとも相手の感情?」
という気づきを持てるように、いつも心の片隅にそんな意識を置いておこうと思ってみてください。
誰しも頭では分かっているんです。自分と相手は別の存在だと。
しかし癒着の厄介なところは、心の中でいつの間にか相手と一心同体になっていることなのです。ですので「気づく」ために意識することが大切なんですね。
自分が癒着していたなと気づけたら、次に相手ではなく「自分の問題に目を向けてみる」ことを意識してみます。
パートナーの感情や問題と癒着していたとしたら、本当は自分の親子関係の癒着が向き合うべきテーマなのかもしれません。または過去のパートナーとの関係に未完了の感情があるのかもしれません。あるいは「かうて助けたかった誰か」を助けられなかった罪悪感から、それを今の関係性で解消したいと心の奥で感じているのかもしれません。
自分の本来の問題に向き合いたくないがために、癒着を使って問題をすり替えていることも少なくありません。
しかし逆から言えば、本当に取り組むべき問題を解消できた時には、同時に癒着も解消できるということです(利用する必要がなくなるので)。
自分も相手も尊重できる。そんな距離からあらためてお互いを理解したい、関係性を育んでいきたい、という思いでつながりを感じられた時には、相手との間に本当の信頼と親密感を感じることができますからね。
(完)