大切な人と理解し合い、愛し合うために
ただ、いくら「私は私でいい」と思ったとしても、なかなか愛し合う関係に至らないというご相談は少なくありません。そこで今回は「自立」から「愛し合う関係」につなげていくプロセスについて解説したいと思います。
最近は、パートナーシップに関するご相談をお寄せいただく方が既に自己肯定感という言葉をご存知で「私はは私でいいのだ」と思うことの重要性について理解しておられる方が増えています。
それは本当に素晴らしいことだと感じています。
ただ、いくら「私は私でいい」と思ったとしても、なかなか愛し合う関係に至らないというご相談は少なくありません。
そこで今回は「私は私でいい」から「愛し合う関係」につなげていくプロセスについて解説したいと思います。
○「自分は自分でいい」は様々な意味で使われる
「私は私でいい」と捉えることの意味の一つは、「自分が生きやすくなる」ことにあります。
「自分がしっかり生きていれば大丈夫」と思えることも重要ですし、自立できておらず「〇〇のせいで思うようにならない」と思えば、それが大きなストレスとなる可能性も否定できません。
自立することで「私は私でいい」と感じることも一つのプロセスにおいて重要な考え方ですし、自分の意志を持ち、それに従って行動し経験を重ねることは自信を獲得するために必要なことです。
ただ、ここでの「私が私でいい」という感覚を「今の私の考えが間違っていない」とだけ捉えてしまうと、本意ではなくとも相手の考えを否定し、幸せな恋愛・結婚生活を作り上げる際の障壁になってしまうことがあるのです。
どちらにもそれぞれの意見、考えがあるだけなのですけどね。
恋愛や結婚などのパートナーシップは、常に「完ぺきな者同士が共に寄り添う関係」を指しているとも限りませんし、既存のパートナーシップに対する価値感を二人でトレースしていくようなものだとも言い切れないでしょう。
お互いが価値感を共有し、二人のやり方を確立していくこと、理解し合い、気持ちを分かち合うことが恋愛や夫婦関係を楽しむ秘訣です。
いくら自分の考え・やり方が正しくとも「私の考えが間違っていない(相手が間違っている)」といった姿勢を突き通すことで、相手の価値観を否定するという意味でパートナーシップの障害になります。
これは恋愛や結婚だけでなく、多くの対人関係でも同じことが言えるでしょう。
実際、カウンセリングでも「私の理想のパートナーシップを望んでいる」という方のお話を伺うこともあります。そしてそのお気持ちは理解できるのです。今まで頑張ってきた自分にふさわしい未来がほしいと思う気持ちを誰も否定できないでしょう。
ただ、もし「愛し合う関係」を求めていくならば、「自分の理想」を含めた「とても柔軟で、お互いが支え合い、分かち合える関係」を目指すことがポイントになるでしょう。
つまり、愛し合う関係を求めようとする時に障害となるのが「不十分さを自力で乗り越えてきたという経験」になります。
いくら「自分は自分でいい」と思えていても、それを通じて相手の不十分さの愛さず、相手の不十分さを問題だと理解すると、柔軟でお互いを分かち合えない感覚が生じてくるのです。
○「私が私でいい」の目的は「私もあなたもそれでいい」
実は、私達は「自分は自分でいい」と十分に思うことを通じて、「相手も私と同じように大切な存在で、愛されるべき存在である」という気持ちを持つことが可能になります。
自分の価値を受け止めることで、人も同じ存在なのだと理解できるようになります。
逆に、自分を不十分だと感じて隠していたり、その不十分さが露呈することを恐れて理論武装したり、自分を隠そうとしてしまうと、相互に愛し合うことが難しくなります。
たとえ自分からの愛情を発することができても、相手からの愛情が自分に届かなくなりますから、いわば頑張っても報われないという状態が出来上がります。
これは一つの「相手の気持ちを受け取れない」という状態であり、恋愛や結婚生活の中で「幸せになるはずだったのに幸せではない」といった思いを抱く理由になります。
そもそも私達の愛情は相手の不十分さを愛するために存在します。相手の素晴らしさを愛でることだけでなく、相手の弱さを受け容れ、支えることが愛することにつながります。
つまり、自分に対する理解を深めることを通じて、他者を理解し、愛する目を持つことが、「愛し合う関係」につなげていくプロセスそのものだと言えます。
相手との違いを認めながら「私もあなたもそれでいい」と思えることが「愛し合う関係」そのものです。
これを相互理解、相互依存といった言葉で表現することもありますね。
この相互理解、相互依存という関係に向かうために、まず「私は私でいい」と感じていることが必要だというわけです。
この目的を見失うと「私は私でいい」けれど、その先がない、ということになります。
もしあなたが「愛し合う関係」を望まれるならば、あなたが自分を癒やし、許し、大切にしていただき、どんな自分をも受け入れる経験を通じて、人も自分と同じぐらい大切な存在であることを理解されることを願ってやみません。
そのような意識をもったときに、心から愛したい、理解したいという気持ちを実感し、自分に向けられた愛を実感することができるでしょう。
(完)