潜在意識にあるミッション

私たちが決めた潜在意識下にあるミッションはパターンを作る

私たちは子供の頃に心に決めたミッションを持つ場合があります。
そのミッションを決めた理由は潜在意識に潜り込んで、心理パターンや行動様式が残る場合があります。
潜在意識に潜り込んだしまった、そのミッションを決めた理由がわかると、心理パターンや行動様式が変容する可能性があります。

私たちの意識は、今思っていることが意識できる顕在意識と、顕在意識から排除して今は意識できない潜在意識、更にその奥にある無意識の3層から成り立っていると考えられています。

さて、私たちは子供の頃に心に決めたミッションを持つ場合があります。

例えば、お寺の子供はお寺を継ぐ、商売をしている家庭の子供は商売を継ぐ、公務員の家庭の子は公務員になるなどという例はよく見かけます。
また逆に、商売で苦労された家庭の子供は、商売は継がずにサラリーマンになることもありますね。
これらの例は、無意識的というより、どちらかと言えば顕在意識的なミッションです。小さい頃から言われ続けた刷り込みもあるかもしれません。

一方、顕在意識ではなく、潜在意識やその奥にある無意識的なミッションも存在します。

潜在意識的なミッションはほとんどの場合、感情にリンクしています。
自身が傷ついた出来事や、誰かを助けたいと思った出来事、何かを肯定しようと思ったり、否定しようと思ったりなどした出来事など、感情が大きく動く何らかの出来事を経験したときに顕在意識でそのミッションを何となく決めるのです。

しかしその後、決めたこと自体を忘れ去り、そのミッションは潜在意識下に埋もれてしまうのです。
その埋もれてしまったミッションから、その人の心理的なパターンや行動パターンが形成され、何かに操られでもしているようについつい同じようなことを繰り返してしまいます。
もっとも、先にお話をした顕在意識的なミッションについても、その奥底にはこの潜在意識的なミッションが潜んでいることがあります。

無意識的なミッションは、生物として、人類として、人間としてのミッションです。説は色々ありますが、潜在意識は何かのきっかけで私たちの顕在意識に登ってくることがありますが、無意識は感覚的なものであり、顕在意識で意識することができないものだと言われています。

例えば、今日はなぜだか無性に辛いラーメンが食べたいと思い食べたとします。
食べている最中にふと昨日見たテレビ番組のことを思い出し「そういえば昨日見たテレビ番組でおいしそうな辛いラーメンを食べていたな」などと気付くことがあります。

これは潜在意識下で働いていた力が、辛いラーメンを食べるという行動を起こさせ、その潜在意識下にあった動機が顕在意識化されたということです。

このように潜在意識は何かのきっかけで顕在意識化されることがありますが、無意識はこのようなことは無いと考えられています。

例えば、なぜ多くの人は異性を求めるのか、なぜ人は子孫を残そうとするのか、なぜ人は生きようとするのかなど、生物学的な側面や進化論的な側面からは解釈されていますが、心理学の無意識的側面からは十分に解釈をされていないように思います。

さて、先に潜在意識下で決めたミッションはその人の心理的パターンや行動パターンを形成するとお話しました。

では、具体的にどのようなケースがあるのでしょうか?

私の友人は魚を食べることがほとんどできませんでした。特にお刺身は箸も付けない状態でした。
お酒が大好きで、よく私と酒席をともにしましたが、酒の肴はもっぱら肉と野菜でした。
あるとき「いつから魚を食べなくなったの?」と水を向けてみると、「はっきりは覚えていないが、随分小さい頃は食べていたように思う」との話でした。「何かきっかけがあったの?」と重ねてみると「特にきっかけは無いと思う」とのことでした。

魚嫌いの人で一般的に多いのは、子供の頃に魚の骨が喉に刺さって痛い思いをしたとか、お腹を壊したとか、匂いが駄目だとかといった類のネガティブな記憶です。

しかし、そのようなことは無かったと思うとのことでした。
ではなぜ、その友人は魚を食べなくなったのか?

心理学では、良い悪いは横に置いて“人がそうするには訳がある”と考えます。私は、友人が魚を食べないのには、きっと何か理由があると思いました。
「魚を食べないのには、きっと何か理由があると思うよ。ひょっとしたらネガティブな理由ではなく、ポジティブな理由でそう決めたのかもしれないね」と伝えました。

その次にその友人と酒席をともにしたときのことです。前回私が話をした“魚をなぜ食べないのか”が気になっていてずっと考えていたとのことでした。
それで「思い出したことがある」と話が始まりました。

「父はお酒が好きで、毎日晩酌をしていた。お母さんがお父さんだけにもう一品プラスで、父が大好物だった刺身をよく付けていた。末っ子の私は自分のご飯が済んだあと、父親の膝の上によく座っていた。父はそんな私に“食べるか?”とよくその刺身を食べさせてくれた。あるとき、母から“お父さんのおかずをそんなに取っちゃだめですよ”と優しく言われた。どうもそれがきっかけで、それ以来魚を食べなくなったのかもしれない」

母親にたしなめられたからではなく、大好きなお父さんのおかず=魚を取ったらお父さんがかわいそうという思い、父親を思う思いが、どうやら友人に魚を食べることを禁止させたようでした。

その次の酒席、友人が「食べたらおいしい」と言って、その時は魚料理を注文するようになっていました。

その友人は“ミッション”として、自ら決意して魚を食べないという選択をした訳ですが、自ら決めたミッションを、大人になってようやく終了させることができたようです。
行動様式だけが残っていた「魚を食べない」という行動が、潜在意識下に埋もれていた過去の記憶が甦るとともに行動変容に結びついた出来事でした。

さて、今のあなたの行動を形作っているミッションは何でしょうか?

(完)

この記事を書いたカウンセラー

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恋愛や夫婦間の問題、家族関係、対人関係、自己変革、ビジネスや転職、お金に関する問題などあらゆるジャンルを得意とする。 どんなご相談にも全力投球で臨み、理論的側面と感覚的側面を駆使し、また豊富な社会経験をベースとして分かりやすく優しい語り口で問題解決へと導く。日本心理学会認定心理士。