パートナーを受け容れすぎてしまうという問題とその解決法
パートナーシップに関するご相談の中に「パートナーのことを受け容れすぎてしまっていること」が原因で問題が生じている場合があります。
例えば、「パートナーのために何でもしてあげたいと思って関わった結果、パートナーがとても依存的な態度になって何もしなくなってしまった」「パートナーの気持ちを理解したいと思っていた結果、パートナーがいつも不機嫌になったり、次第に荒い言葉を使うようになってしまった」などがその例です。
また、パートナーの気持ちを考えすぎてしまうがゆえに言いたいことが言えなくなってしまう、というケースもあります。
パートナーの気持ちを優先してあげたいという気持ち自体は素晴らしいものですが、いつも我慢ばかりしていたり、パートナーに言いたいことを伝えることに怖れや罪悪感を感じるとしたら、幸せを感じられなくなることもあるかもしれませんえ。
「相手にどう思われるか不安だから、つい受け容れすぎてしまうんです」
「自分の気持ちを伝えて、相手に悪く思われたくないから我慢してしまうことが続いています」
そんなクライエント様のお声を伺うと、どこか「相手に嫌われるのが怖い」という気持ちがあり、嫌われないため、相手を怒らせないために受け過ぎてしまっているようなのですね。もちろん「好きな人だから」という場合もありますけどね。
ただ、カウンセリングの現場にいますと、確かにご相談者様は「相手に嫌われるのが怖い」「相手が感情的になることが怖い」とおっしゃっているのですが、実際は全く別のことを怖れている場合が少なくないのです。
○「自分は相手に悪影響を与える」という気持ちがパートナーを受け容れすぎる理由になる
もし、自分自身がパートナーに何も言わず、相手のあり方を受け容れすぎてしまうとしたら、これは「嫌われる怖れ」だけでなく、そのように感じる理由「自分が相手と関わったり、意見を伝えること自体が悪いこと・まずいことだ」という認識が影響している場合が少なくありません。
言い換えるなら、自分自身の内面に「相手に悪影響を与えてしまう不安」があるから「相手に嫌われるのではないか」と怖れ、その怖れを現実化しないために相手を受け入れすぎてしまう、と考えてしまうわけです。
この「相手に悪影響を与えてしまう不安」」は罪悪感を示しています。
もし「自分は相手に悪影響を与える」と思っているならば、おそらくいい影響を与えたいと思う相手には積極的に関わることを避けようとするでしょう。そもそも「私は相手に悪影響を与える」と感じながら人と関わること自体苦しいことですし、避けたくなるでしょう。
つまり「パートナーを受け容れすぎてしまう」という状態は、「自らの意思でパートナーと関わることができなくなっているから、相手の言動や気持ちに触れず何もしないでいる」という状態に近いとも言えるのです。
〇受け容れすぎて「うまく関われない状態が」お互いの不信感を刺激する
もし、自分自身がパートナーに何らかの関われない事情を抱えれば、自分が辛いだけでなく、相手も「こちらに興味関心がないのではないか」と感じても不思議ではないのです。気持ちの面ではお互いに「上手に関わりたい」と願っていても、実際に感じるのは相手への不信感ばかりとなってしまうわけです。
しかし自分自身が「相手に悪影響を与えてしまう不安」を抱えていると、ほぼほの何らかのアクションを取ること自体が難しくなっているわけです。関わったほうがいいし、相手とコミュニケーションを取ったほうがいいと分かっているけれど、それがとても悪いことで、相手から責められるだろう、罰されるだろうと感じることにもなるのです。
こうなるとお互いが不安や不信をかかえますから、ともにいることが苦しくなってしまいます。その結果、受け容れすぎてしまう側はそれしかできない状態になり、相手側は不信感や不安などからあまり良くない態度を取り続けることになったり、こちらに積極的に興味関心を示さないようになることもあるでしょう。
もちろんパートナー側が良くない態度を取ること自体はパートナー側の問題なのですが、そこに「私は相手に悪影響を与える」という罪悪感がうまく噛み合ってしまうと問題化することになるのです。
○どうして「私は相手に悪影響を与える」と感じるのだろう?
この視点で「パートナーを受け容れすぎてしまう問題」を解決していくことを考えるならば、「自分はどうして相手に関わると悪影響を与えると感じるのだろう」という部分に興味を持ち、そこにある誤解なり怖れなりを解消するといい、となります。
実は「相手を受け入れすぎている」ということが「自分が相手に悪影響を与える」という思いから生じていると気づかない限り、おそらくパートナーと良い形で関わること自体が難しくなってしまうので、「関わらないこと(相手の好き勝手にさせること・何でも相手の希望に応じること)が愛の代わり」となってしまいます。
これではどれだけ我慢を続けても、相手を受け入れ続けても、二人の間にある問題は解決せず、絆を結ぶことも困難になります。
つまり「相手と関わることも自分の意見を述べることもできるが、今は関わらないと決めること」と「相手と関われない何かしらの事情があるから受け容れ続けている」ということは全く別物なのだという理解は必要なのです。
もし、あなたがパートナーを受け容れすぎてしまってお悩みになっているならば、いいか悪いかは別にして、この違いについてでしょうか見つめてみてはいかがでしょうか。
また、もしあなたが自分の意志でパートナーと関わることに抵抗感を覚えるなら、どこか自分を罰している状態が続いていると言えます。
パートナーと関われる自分になるために、自分を許したり、自分に対する思い込みに気づき誤解を解いていくといいでしょう。
具体的には
「自分がパートナーのためにできること・今まで与えてきたこと」を見つめ直して受け取ってみる。
今まで以上に「パートナーに与える意識」を持つ。
「パートナーと関わることは前向きな選択だと理解する」
など、自分の意識を変容させることがポイントになりますね。
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最後に、「相手に悪影響を与えるのではないか」という罪悪感を手放していくための一つの考え方・ヒントを書いておきますね。
もし、あなたが「相手に悪影響を与える」と感じ始めたとしたら、おそらくあなたは誰かに「いい影響を与えたい」と願ったことがあるはずなのです。
そう願ったけれど、しかし実際に良い影響を与える自信を感じられなかったから「せめて悪い影響は与えないように」とお考えになったのではないでしょうか。
どこか本来の自分の気持ちに気づき、そこに立ち戻って、本当に自分が表現したい気持ちを取り戻せれば、もう一度良い形でパートナーと関わることもできるようになることもあります。一度ご自分の気持ちからじっくり見つめてみてもいいかもしれませんね。
(完)
※2021年の月曜心理学講座は今回が最後となります。
次回の講座は2022年1月10日に更新いたします。
本年もご覧いただきありがとうございました。
良いお年をお迎えくださいね。