自分への扱い方を変えてあげると、周りの世界も変わります
そんなときは、自分自身をないがしろにしていることがあるようです。他人だけでなく、自分自身を大切にすることが、解決の糸口となるようです。
Aさんはいつもたくさんの友だちに囲まれて、週末はショッピングや映画、たまには旅行なども行くことがあるそうで、充実した毎日を過ごしているように見えます。
ところがAさんには悩みがあるそうなのです。
それは、Aさんは友だちがいっぱいいるけれど、いつもAさんが気を使っていて、なんとなく疲れることが多いというのです。
例えば洋服のショッピングに行くと、友だちと自分のファッションの趣味が違う場合、たいていAさんは、相手がどこのお店に行きたいのかなどの話を聞いて、「じゃあ、そこに行こう。私も行きたいと思っていたの。」と、さも自分もそのお店に行きたかったかのように提案するのだそうです。
相手は喜んでくれるけれど、自分は本当は興味がないので、本心では楽しくないそうです。
相手が楽しんでくれるので、それでいいか、とも思うし、相手の笑顔を見ると、つい自分も嬉しそうな態度を取ってしまうのが悪いのかとも思うそうです。
そうやっていつも、Aさんにとって友だちとは、「付き合ってあげる相手」であって、一緒に楽しむ相手ではないとのことなのです。
自分が本当に興味あることや、楽しみたいこと、行きたい場所などは、自分一人のときに行ったりやったりすればいいと思っているのだそうです。
ところがAさんは時々思うそうです。みんなの意見や要望はAさんが聞いてあげるけれど、自分の意見や要望は誰も聞いてくれないんだなと。
そう思うと、Aさんは、自分が誰にも大切にされていないような気がして、寂しくなるとのことでした。
Aさんのように、相手の行きたい場所や、やりたいことを、なんとかして叶えてあげるのが上手な方がいらっしゃいます。
相手はまだはっきり口に出してもいないのに、会話の中からそれを感じ取ったりすることもあるようです。
そして、相手に変な気を使わせないように、あたかも自分が行きたいと思っていたとか、やりたいと思っていたというように伝えることもあるかもしれません。
すると相手は、「あなたとは気が合う」と喜んでくれるけれど、Aさんとしては気配りしているだけなので、誰も理解してくれないなと思うそうです。
自分のことを後回しにして、相手の喜ぶ顔を見たいというのは、Aさんがとても気遣いができて優しい人であるとも言えます。そのため周りの人たちもAさんのことが好きなのですが、Aさん自身が、誰にも分かってもらえず、大切にもされていない気がしてしまうのです。
心理学では投影と言うのですが、私たちの心には、心の内の世界を、外の世界に映し出すしくみがあります。映し出しているものとしては、自分が感じている感情、過去に出会った人、過去に経験した出来事などがあります。
投影という考え方を用いてみると、Aさんが誰にも自分を理解してもらっていないような気がしていたのは、Aさん自身が自分がやりたいことよりも、他人がやりたいことを優先しているという心の内の世界を投影し、他人もまたAさんの気持ちに無頓着でAさんが何をしたいと思っているのか興味がないかのように、Aさんが感じてしまっていることが考えられるのです。
Aさんは、自分がやりたいことにもう少し意識を向けたり、自分を大切にするようにしてみると、それをまた投影するので、他人もまたAさんを大切にしてくれるように感じられるのかもしれません。
とはいえ、自分を大切にするというのは、何をしたらいいのかわかりませんとAさんは言いました。エステに行ったり、美味しいものを食べたり、綺麗だなと思う景色などを観ればいいんでしょうか?とおっしゃいます。
もちろん、そのような方法も自分を大切にすることと言えるかもしれません。
ところが、Aさんは、自分の意見や要望を誰も聞いてくれないことで、大切にされている気がしないのですから、まずは自分の意見や要望を自分で聞いてあげることが良いかもしれません。
それも、一人で行動するためではなく、誰かと行動するときの、Aさん自身の行きたい場所ややりたいことを自分に聞いてみるのです。
慣れないうちは、誰かと一緒ならば、相手の意見や要望を叶えるほうが楽だと思ったり、自分の意見や要望は考えても出てこないと思うことがあるかもしれません。
それでもAさんに意見や要望がないということではありません。いつの間にか自分の願いを抑圧してしまっていると考えられるのです。
抑圧とは、本当はあるのに、あると思うと苦しいので、心の中であたかも無いもののようにしてしまうことです。
Aさんは、自分が本当にやりたいことを諦めてきたのかもしれません。
もう一度そんな自分の願いに耳を澄ませてみること、そして勇気を出してそれを気の置けない友だちなどに話して、一緒に実現するという経験を何度か積んでみてはいかがでしょうか。
自分の思いを大切にすることは、周りの人に大切にしてもらうことでもあるのではないでしょうか。
(了)