恋愛とは愛し愛されるものだから
こんばんは。
神戸メンタルサービスの平です。
恋愛とは愛し愛されるもの。
それは、愛のキャッチボールのようなものであり、そこにいちばんのよろこびもあるということができるのですが、人によっては、愛してばかりの恋愛や、また、愛されてばかりの恋愛をしている場合もしばしばあります。
私たちの多くは、思春期のころに初恋を経験します。
そのなかの何組かはそれが実って、おつきあいが始まったりしますが、この時期の恋愛はの多くは長続きしません。
そのいちばんの理由は、人を愛することはできても、愛を受け取るということが上手にできないことにあります。
恋愛に慣れていないこの時代、だれかを好きになったら、24時間でもその人のことを考えていることが楽しくてしょうがありません。
そして、自分のこのやり方と同じやり方で、人も自分を愛してくれるものだと思うものです。
たとえば、まだまだ大人になりきれていない思春期のこの時期は、依存性が強いので、とにかくパートナーと一緒に過ごす時間を求めます。
そのとき、「試験前だし、彼のためにもデートは控えなくちゃ」と、少し大人な愛し方をする人もいるわけですが、「いつも一緒にいることが愛」と思っている人にとっては、それが愛だとは感じられません。そうやって、私たちは何度も苦い思いを経験しながら、人それぞれ、いろいろな愛し方があるのだとわかるようになってきたわけです。
さて、以前、ある女性から、「おつきあいが1年を越えるころになると、いつも恋人にふられてしまう」というご相談を受けました。
彼女はとても献身的なタイプ。
いつも相手の男性のことを考え、気配りし、彼に合わせてあげることができる人で、愛することに関しては、ほぼ完璧といえました。彼女自身、そのことには自信があり、「いったい私は、さらにどんなふうに、相手を愛さなければいけないのでしょう?」と悩んでいらっしゃったというわけです。
そのとき、私が彼女に言ったのは、こんなことでした。「あなたは彼を愛することに忙しすぎて、彼から愛される時間をもっていないのではないですか?」。
じつのところ、そのカウンセリングのとき、彼女は私のアドバイスをあまり理解してくれなかったかもしれません。
しかしながら、その後、彼女は昔の彼氏ともう一度やりなおす機会を得たとのことで、その彼を連れて、ふたたびカウンセリングに来てくれたのです。
そこで、私は彼に聞いてみました。
「あなたが彼女を愛そうとする前に、彼女があなたを愛してしまうので、あなたはなにもできなくなるのではないですか?」。
すると、彼はまるで長年の疑問が急に解けたかのように、大声で答えてくれました。「そう! まさにそうです!」。
まったくもって、彼女はほぼ完璧に彼を愛していました。
ところが、「人を愛する」という気持ちいい行為を、彼女は彼にさせてあげていなかったのです。
もちろん、悪気などまったくなかったのですが。
彼女は昔から、とても気のきくよい子だったのですが、じつは深層心理の中に、「自分はなにかしないと愛されない」という強い思い込みがありました。
そして、なにもしていないと、不安で不安でたまらなくなってしまうタイプだったのです。
恋愛にかぎらず、沈黙していることや、なにもせずにゴロゴロするということもできず、スケジュール帳もいつもお稽古事や人と会う約束でいっぱいにし、つねに忙しい時間を過ごしている人でした。
そんな彼女ですから、「なにもしなくてもいいんですよ」、「なにもしなくても、いいんです」と言えば言うほど、その表情は不安でいっぱいになりました。
でも、「なにもしなくてもいいわけはね、あなたには愛される価値があるからですよ」と私が言った途端、彼女はわんわんと泣きはじめました。
「私には、愛される価値がある」。
そう、彼女は何度も何度も言葉に出しながら、わんわんと泣き続けていました。
そして、私は「人はみんな、あなたのことを愛したいんですよ。だから、愛されやすいようにしてくださいね」と頼んだのですが、この意味が彼女にはうまく理解できなかったのです。
すると、横にいた彼が、怒りはじめたのです。
「俺もおまえのことを愛したいのに、いつもおまえは“私はいい”って言う!」。そして、絶叫しはじめたのです。「俺もおまえを愛したい!!」、と。
人は、だれかを愛していないと、どうも不安になるようなのです。
では、来週の恋愛心理学もお楽しみに!!