昇進したい気持ちがあるにも関わらず、いざ昇進するとプレッシャーに押し潰されそうになり逃げ出したくなる。
責任のある仕事を任さたい反面、“面倒臭さ”や“疎ましさ”といった何とも言えない抵抗感を感じる。
社会的承認や地位といった “権威” を受け取ることに“葛藤”を感じることから、“権威との葛藤”と呼ばれるものがあります。
“権威との葛藤”が強いと、自分自身が権威的な立場に就くことに強い抵抗感を感じてしまい、後輩や部下ができた時に「私をあてにしないでください」「私を頼らないでください」という態度になってしまいます。
その結果、“頼りない先輩”や“威厳の無い上司”というレッテルを貼られてしまい舐められてしまう、なんてことにもなりかねません。
ビジネスシーンにとどまらず、親になることへの抵抗感や、リーダーシップを発揮することに消極的、といった具合に、ありとあらゆる場面で問題として現れることがあります。
“権威との葛藤”のルーツは、依存時代(弱い立場の時)に権威(目上の人)との間で、ネガティブに感じた(傷ついた)経験が元になっていることがほとんどです。
例えば、「新入社員のころ、上司や先輩が高圧的な態度で苦しかった」「学生時代、先生に分かってもらえず悲しかった」「幼少期、親に厳しく叱られて怖かった」など、幼少期にまで遡って見ていくことができます。
このように見ていくと、誰しも一度は権威との間でネガティブに感じた経験があるのではないでしょうか。
それだけ“権威との葛藤”というものは一般的で、多くの人が抱く葛藤と言えるのです。
権威との間でネガティブに感じる経験からは、落ち込む反面、「あの考えは古い」「あのやり方は間違っている」「ああはなりたくない」といった怒りや、反発心といった否定的な感情も覚えます。
その否定的な感情が感覚として残っていると、他の権威者に対しても嫌悪感や反発心を無意識のうちに抱いてしまうことがあります。
結果として、権威(目上の人)と効率性や正当性をめぐって言い争いになったり、競い合って良好な関係を築くことが難しくなるなどの問題として生じてしまいます。
そして、権威に向けた怒りや反発心などの否定的な感情が強ければ強いほど、自分自身が権威的立場になるときに部下や後輩から、同じように怒りや反発心、敵意や否定的な感情を向けられるのではないか、という不安や恐れを感じやすくなってしまいます。
もし、権威的立場である上司、先輩、経営者などの目上の人に対して、嫌悪感や反発心を持ってしまったり、自分自身が権威的立場に就くことに抵抗感を感じているなら、そこには“権威との葛藤”があると言えます。
この“権威との葛藤“に気付くだけでも、大いに意味のあることです。
気付かなければ、ただ漠然とした葛藤を抱き不快感を感じるだけですが、気付いたなら、過去の痛みを癒したり、権威の気持ちを理解し認めていくなど、解決の糸口を見つけることができるのです。
そして権威に対するネガティブな感覚に変化が生まれると、自分自身が”権威との葛藤“を乗り越えやすく、リーダーシップを発揮しやすくなります。
”権威との葛藤“は、誰しもが抱く葛藤と言えます。
もし、部下とそりが合わないなら、相手も過去の痛みから反発しているのかも知れません。
もし、上司からの強い圧力を受けているなら、相手も突き上げを恐れて高圧的に押さえ込んでいるのかも知れません。
相手も同じように葛藤を抱えているのではないでしょうか。
だからといって、「あなたには権威との葛藤があるから、その問題に取り組んで下さい」なんてことを相手に伝えると、トラブルになりかねませんのでご注意を。
心理学は、誰かを変えるためではなく、自分自身の心の平穏のために使って下さい。
そして、”権威との葛藤“に苦しむのではなく、その苦しみを知ったからこそ、誰かを理解し、受け入れ、認めるために使ってあげて下さい。
そうやって、理解され、受け入れられ、認められた誰かは、また違う感情や感覚を覚えるのではないでしょうか。
”権威との葛藤“に気付いたということは、理解し、受け入れ、認め合える、良好な関係性を築いていくためのリーダーシップを受け取るチャンスなのかも知れませんね。