別れたあとでよく見えるのではなく、そもそも相手のことが見えていなかった?
恋愛やご夫婦のご相談の中で「別れた途端、相手のことがよく見える」というお話を伺うことがあります。
「どうしてあんなことを言ってしまったのか」と自分を責めながら「なんとかやり直せないか」と思う方もいるのでないでしょうか。
ただ、こういった恋愛を繰り返したり、どうしても後悔が手放せないなら、相手ではなく自分の心理的な要因が影響している可能性があります。
そこで今日はどうしてこのような後悔が起こるのかについて解説していきます。
○相手を減点方式で評価している
人を好きになるとき、やはり相手の良さを感じますから、相手がよく見えているのです。
しかし実際に関わるとなると、人間完璧ではありませんから、相手の欠点やアラが見えてくることは十分にありえます。
その結果、つい相手を減点方式で評価するようになってしまうのです。
例えば「こんなところがあったんだ」「こちらのことを考えてくれていない」と思うことが増えるのです。
どんどん「好きだと思った相手のイメージ」が崩れていき、相手の悪い部分ばかり目につくようになるんですね。
・パートナーを減点方式でみる事情は男女で違うもの
一般的に男性は、好きか嫌いかを直感的に判断する特徴があると言われています。
つまり「好き」になったときの気持ちが最大となることが多いわけです。
一方、一般的に女性は、長く関わることを前提に考え「相手を知るプロセス」を重視する人が多いと言われています。
相手の良さを感じたり、相手の喜びを分かち合える経験が積み重なり、いつの間にか大好きになる事が多いようです。
この違いは男女の恋愛への期待や、相手に失望していく理由の違いを作ります。
例えば、男性は、好きになった相手の欠点ばかり見る自分に失望してしまうこともあるでしょう。
一方、女性は、相手をよく見て好きになったはずなのに、相手に失望する自分を感じて苦しくなることもあるでしょう。
○癒着の影響
私たちは、恋愛や結婚を通じて相手と心理的距離が縮まると、子供の頃にため込んだ感情が出てくることがあります。
だから、相手との心理的な距離が近づくほど
「親子関係で満たされなかった欲求(ニーズ)を満たしてもらえるのではないか」
と期待してしまうのです。
この期待はなかなか自覚されることがないことが多いものです。
人によっては「好きなのだから当然」と正当化されている場合も少なくありません。
その結果、相手が自分の期待通りではないことで「愛情をもらえていない(失った)」ように感じるのです。
このとき、あまりに相手との心理的距離が近すぎると癒着状態になります。
癒着とは「心と心が接着剤でくっついているような状態」です。
いわば自分の感情と相手の感情の境界線が分からなくなるのですね。
例えば、自分の顔の近くに手を近づけると手のシワが見えませんよね。
同じように、相手との心理的距離が近すぎると、相手のことがよく見えないわけです。
が、実際は相手と癒着しているからこそ「相手のことが見えている」と感じるのです。
だから、相手の欠点を見るたびに「私を愛していない」と感じ、強い怒りや不満が出てきます。
これが「もう無理」「別れたい」と思う理由になることも多いです。
が、実際に相手との関係を解消すると、一時的にこの癒着が解消されることがあります。
すると、途端に相手の良さが見えるようになり、後悔することにつながるのです。
○別れた後悔は自分への失望とリンクする
また、好きな相手への期待、恋愛やパートナーへの期待が崩れるということは
今の自分自身に失望しているとも言い換えられます。
別れた後悔そのものが「望んだ恋愛を手に入れられなかった自分への失望」なのです。
つまり、望んだ恋愛ができない自分に失望しているからこそ
「相手への失望」を理由にして別れるのです。
ただ、相手と別れたところで自分への失望が消えるわけではありません。
だから「あのとき別れなきゃよかった」と後悔してしまうのでしょう。
○別れて後悔しない自分になるために
自分への失望を抱えたなら別れを経験すると「そもそも好きだった相手の姿」を思い出すものです。
このとき自分の中で「相手をよく思う自分」と出会います。
だからこそ、どうにか相手を振り向かせたい、今なら上手に愛せるのに、と感じるわけです。
ただ、これは別れたあとの「気持ちの一時的な変化」とも言えます。
いわば自分自身の本質的な変化や相手の事情を考慮しているわけではないのです。
もし、あなたが「別れて後悔する」という恋愛や結婚を繰り返しているならば。
自分の期待、相手との心理的距離などに興味を持ち、癒やしを進めるといいでしょう。
そもそも期待や癒着には「自分への失望や過小評価」が隠れていることが多いです。
これを罪悪感と呼ぶこともありますね。
今の自分は愛されるような存在ではないと感じていると、つい相手に期待したり、癒着を引き起こします。
そんなときほど、もっと自分を丁寧に見つめてみてはいかがでしょうか。
愛されるにふさわしい自分を感じることで、相手の欠点もまるっと愛せる自分に近づけるでしょう。
それこそが本当に自分がやりたかったことだと思えたとき。
きっとお互いに対等で、胸を張って相手と愛し合える自分に近づいていけるでしょう。
(完)