それが「愛を止めている」ということ
こんばんは。
神戸メンタルサービスの平です。
クライアントのみなさまから、「パートナーシップを手に入れたい」とか「よりよい関係をパートナーと築きたい」といったご相談をよくいただきますが、もう一つ、とても多いのが「失恋」にまつわるご相談です。
そして、恋愛は愛憎の物語といわれることもあるように、失恋によって傷つき、「あの人だけは許せない」という思いを抱えて苦しんでいる人も、そのなかには多くいらっしゃいます。
たとえば、よく聞くフレーズは、「あの憎い男を思い出すだけで、ゆうべも腹が立って、腹が立って、一睡もできなかったんです!」というものです。
一方、憎まれているその彼といえば、たぶん、きっと、ゆうべも爆睡していたことでしょう。
「彼は私のことを愛さなかった」とあなたが思っているとしたら、そんな彼のことをあなたは愛してはいないですよね。
もっと言うならば、これは、愛を止めている状況なのです。
もう少し詳しく言うならば、あなたは、「彼が私を愛してくれなかったから、断腸の思いで私も彼への愛を止め、そして、それがこんなに苦しいの」と言っているようなものなのです。
さらに、もう少し言い換えるならば、つまり、あなたは、「もし、あなたが私のことをもう一度愛してくれるなら、私もあなたのことを愛してあげましょう。そうしたら、私は幸せになる」と言っているようなものです。
どうも、私たち人間というのは、理由のいかんに関わらず、なにかを、だれかを、愛していないとき、とても苦しくなるようなのです。
失恋をはじめとした男女関係の別れでつらくなるのは、「嫌いなものを手放す」からではありません。
そうではなく、「大好きなものを嫌わなくてはいけない」、「大好きなものを愛してはいけない」からつらくなるようなのです。
そして、まったく逆説的なのですが、別れるために、大好きなものを憎んだり、嫌いになったりしようとしている人もじつはとても多いのです。
たとえば、単身赴任のご主人をもつ奥さまに、夫婦ゲンカに関するアンケートをとったことがあります。
それによると、ケンカが起こるのは、週末などに家に帰っていたご主人が、赴任先に戻っていく日の前夜か当日の朝であることが圧倒的に多いことがわかりました。
つまり、大好きなまま、彼が私のもとを離れていくのが耐えられないわけです。
ケンカでもして、彼の存在をちっぽけなものにしておかないと、手放すのがつらくなってしまうのです。
それで、ついつい、ケンカが起こってしまうようなのです。
というように、私たちはどうも、心の中で愛を止めた結果、苦しくなってしまうことが多いようなのです。
というお話をすると、「失恋相手を愛したところで、もっとつらくなるだけではないですか?」と思う人は多いかもしれませんね。
たしかに、それはすでに“恋愛”という愛ではなくなっているのかもしれません。
しかしながら、私の長いカウンセラー人生でわかったのは、別れた彼やご主人に、“感謝”するという愛を送ることで、あなたの心の傷が大きく癒されるという事実なのです。
なぜなら、別れた人をあなたの心が攻撃しているとしましょう。
それは、一見、その人を攻撃しているだけに見えますが、じつはあなたはひどい自己攻撃をしているのです。
だって、そのパートナーを選んでしまったのは、あなたですから。
「あんなやつ」がいると、同時に「あんなやつを好きになった私」や「あんなやつを見抜けなかった私」も必ず存在し、そして、その「私」のことが許せないわけです。
さらに、その許せない「あんなやつら」と一緒にいた時間や空間までも、私たちは許せなくなり、その結果、人生に空白の期間が生まれてしまうことがあるのです。
失恋をすると、彼とおつきあいしていたあの時間が、結果的には無駄に終わってしまったと思うかもしれません。
でも、じつのところ、その時間の大半は、とても素晴らしい思い出や、楽しかった時間で溢れているのではないでしょうか。
恨んでいる側の人は、往々にして、相手のことが最後まで大好きだったという場合が多いようです。
つまり、そのぐらい大好きになれる人と巡り会い、その人と一緒にいられたわけです。
それは、あなたの人生で光り輝く時間だったはずなのです。
ところが、あれだけ光り輝いていたあなたも、あの時間も、失恋とともに、あなたの心の中から、あなたの手によって消え去っていくのです。
それに対し、“感謝”とは、傷つきはしたものの、「二人の間にそういう時間がたくさんあったのだ」とあなたが気づくことかもしれません。
もし、彼に感謝することができるならば、その瞬間にあなたのハートはもう一度開かれ、愛の力により、穏やかな夜が戻ってくるのかもしれません。
では、来週の恋愛心理学もお楽しみに!!