「夜中に恐怖を感じて死をも考えてしまう」というご相談をいただきました。
私たちは常日頃から、いろいろな思いを感じて生活しています。喜びや悲しみ、怒りと同様に怖さもそうでしょう。
でも、怖さを感じたいと思う人はあまりいませんよね。だから、意識的にその感情をかき消し、ないように振る舞ってしまうこともあります。その感情が夜中や明け方にあがってくることがあり、それはもの凄く怖いものだと思います。
ただ、怖さは受け入れてみようとすると、そこに気付きがあります。怖さはデメリットだけではないのです。
今回の心理学講座ではその怖さをどう受け入れ、どのように向き合っていけば良いかを書かせていただきました。
◎リクエストを頂きました◎
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夜中に目が覚めると、日中には感じたことのない恐怖を感じます。
とても居心地の悪い感じで、死を考えたりもしています。
自分の親が亡くなってしまう怖さや、自分の死がとても怖くなります。
こんな時、どうしたら平常時のいつもの自分に戻れるのでしょうか。
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●怖れは誰にでもある
怖れというのは喜びや悲しみ、怒りなどと同様に本来、誰しもが心の中に持っているようです。
だからこそ、その怖れや恐怖心とどう向き合い、どのように付き合っていくのかということが大切になってきます。
そのひとつに「怖れを否定しすぎない」ということが挙げられます。
誰でも怖れや不安などは感じたくないでしょう。でも、その怖れや不安・心配事があるからこそ、私達はそうならないように対処しようとします。
問題を回避するにはどうしたらいいか考え、行動します。そうすることで大きな打撃を受けずに済みます。
そのように「怖れ」というのは私達に何かを気付かせてくれる存在と考えてみると、否定せずに受け入れられるのではないでしょうか。
●大事なモノほど、失うのが怖い
例えば、あなたが友人の引越しのお手伝いをしているとしましょう。そのときにあなたの友人にある物を運んでほしいと頼まれたとします。
それが100円のプラスチックの箱であれば、あまり何も考えず、サラッと運ぶことができるしょう。
でも、それが3億円もする壺だったとしたら、どうでしょう。どこかおっかなびっくり運ぶと思いませんか?
決して値段=大事なものではありませんが、それだけ、高価なものであれば大事な物に違いない。もしも、この壺を割ってしまったら、大変なことになる。
そのような思いが怖さにつながるのです。
それはモノだけに限らず、パートナーとの関係や人との絆も同様で、大切に思えば思うほど、失いたくないという思いがつよくなり、怖さが増すようです。
大事なモノ、大切な人ほど、私達は失うのが怖いんです。
●夜中や明け方のマインド
ご相談者の方は特に夜中に恐怖を感じるとのことでした。
先ほども書いたように私達は怖れや心配事を抱えながら生きていますが、それでも日中は頑張ろうと意識し、乗り越えようとします。
「クヨクヨしてもしょうがない」
「仕事なんだから、やるしかない」
「私がやらなければ誰が家事や育児をするの」
こんな風にです。
それは日頃から、
「クヨクヨしちゃいけないよ」
「男なんだから、いつまでもメソメソ泣いていないで頑張りなさい」
「ネガティブに考えるからいけないんだよ」
などと周りから言われていたのかもしれませんし、そう親や先生から教えられたのかもしれません。
勤勉で頑張り屋の多い日本では弱音やネガティブな感情を表現するのは良くないという風習が残っているせいもあるかもしれません。
だから、みんな頑張るんですよね。
でも、私達は眠っているときに無意識の層が上がってくると言われています。
日中は意識して、ポジティブに考えていますが、本当は不安や恐怖心を抱えているのです。
その気持ちが眠りにつき、少し時間が経った夜中や明け方に無意識となって出てくるのです。
日中、意識的に抑えていたモノが溢れ出てくるのです。
●そう感じていると受け入れる
その時に大切なことは、その感情を受け入れることです。
ご相談者の方であれば、ご両親やご自身の死について、自分は怖れていると認めることです。
逆説的ですが、その感情を一旦認めると、怖れは遠のいていきます。
そして、次の感情が湧いてくるんです。
確かに大切な人の死は怖いですよね。その人の体が冷たくなり、もう2度と会話ができなくなると想像しただけで、胸が詰まる思いになるでしょう。
でも、それだけ、ご両親やご家族のことを大切に思っている証なのだと思いますし、「自分は今、心から親孝行がしたいんだ」と気付けるかもしれません。
ご自身の死への不安であれば、それはもっと生きたいという思いの表れかもしれませんし、「もっと自分らしく生きたい、その分岐点に今、自分はいるのだ」と気付かせてくれているのかもしれません。
受け入れることで大切なことに気付ければ、そこから何かが始まります。
●私のエピソード
最後に私が一番苦しんでいた頃のエピソードをひとつお伝えさせて頂きます。
私が一番苦しんでいた頃(今から10年位前)、毎日、明け方に胸が痛くて目が覚めてしまいました。
日中は頑張ろうと意識し、心のキズを見ないようにしていました。でも、明け方になると胸が痛み、つらいことや失ってしまったモノや人、悲しいことが蘇ってきたのです。
その度に私は自分はダメな奴だ、弱い人間だと自分を責めました。そして、そのまま、朝まで眠れず、モヤモヤした気持ちのままで日常を過ごすので、またそこで失敗し自信を失っていきました。
でも、ある時、こう思ったのです。
「ああ、自分はまだ傷ついているんだな」「それだけ悲しいことが続いたんだ」と。
すると、不思議と胸の支えが取れ、スーッとラクになり、それなら「今、自分の傍にいてくれる人を大切にしよう。自分にも優しくしよう」と思えたのです。
胸の痛みは約2年ほど続きましたが、それでも徐々に和らいでいきましたし、今思うと不安やネガティブな感情を受け入れたときから、前に進みだしたと確信しています。
そして、失う怖れよりも、今、傍にいてくれる人、今あるものに感謝ができるようになったのです。
怖れというのは私達に大切な何かを、気付かせてくれているのかもしれませんね。
ちょっと怖いですが、怖れを受け入れること、チャレンジしてみてくださいね。
その怖れを受け入れたとき、ご相談者の方の言う心の平和を取り戻すことができると私は自らの体験を通して感じています。