夫婦の問題。必ず夫婦がともに同じ感情を共有しています
こんばんは。
神戸メンタルサービスの平です。
今週は、前回の続きをお届けします。
前回のお話を振り返ると、相談者の奥様が、トップセールスマンのご主人に恋をして結婚したのですが、不況が深刻になるとともに、ご主人の営業成績がどんどん下がり、それに比例して彼のお給料も下がったために、夫婦の仲が険悪になったという内容でした。
今では奥様は、「ビールが飲みたけりゃもっと稼げ」とご主人に辛らつな言葉を浴びせかけるような状態です。
表面的に見れば、奥様はご主人に活を入れて、もっと稼がせようとしているのですが、深層心理的には、奥様はご主人にトップセールスマンに戻ってほしくはないのです。
奥様は、昔、トップセールスマンの彼に恋をして結婚したわけですから、彼がもう一度トップセールスマンになると、世界中の全ての女性が彼に魅力を感じ、その結果、自分は捨てられてしまうのではないかと恐れているのです。
今のやり方を続けていくと、ご主人がいつかトップセールスマンに返り咲いた時には、「稼げなかったので辛抱しいていたけれど、これだけ稼げるようになったんだから、好きにさせてもらうよ」とご主人に背を向けられてしまう確率がとても高くなります。
すると、奥様は自分の恐れを証明することになってしまいます。
夫婦間の問題というのは、必ず夫婦がともに同じ感情を共有しています。
この夫婦の場合、ご主人は「しっかりと稼げていない」という罪悪感を感じおり、奥様もそこを攻撃しています。
しかし、奥様の方にも何らかの罪悪感があるはずなのです。
奥様は、意識的にはそのような罪悪感を感じていませんので、奥様に質問してみました。
「もし仮にあなたがご主人に、「申し訳ない」と罪悪感を感じていることがあるとしたらそれは何でしょう?」
そうすると奥様は、「もし、あるとしたら・・・」と長い間考えて「私と結婚したから、彼はトップセールスマンから落っこちちゃったんじゃないかしら・・・」と言ってくれました。
奥様は、深層心理的には、すばらしい成績をあげていた彼が、トップセールスマンの座から滑り落ちたのは、結婚して以降のことなので、それがまるで自分のせいではないか、と感じていらっしゃったようなのです。
人間は、罪悪感を感じると、そのあまりの痛さから、「自分のせいではない。あの人が悪いのだ」と誰かを責めることにより、自分の罪悪感を隠します。
実は、奥様は、この罪悪感を隠すために、ご主人のことをひどく責めていたようなのです。
この罪悪感のフタを開け始めると、奥様は、自分をひどく責めるように「きっと、私と結婚したからだ・・・」と何度も何度も口にされました。
一方、その様子を隣で見ていらっしゃったご主人は、もうびっくりです。
あれほど辛らつにご主人のことを責め続けていた奥様が、実は自分自身をこれほど責めていたとは、まったく知らなかったわけですから。
「何を言っているんだ。悪いのは営業成績を上げられないこの俺の方なんだから」とご主人が奥様に声をかけても、
「あなたの運を私が全部吸い取ったのよ」
「何をバカなことを言っているんだ。営業成績のことはお前とは関係がない」
お気づきになったでしょうか?この夫婦の関係がどんどん変わってきているのを。
奥様から見ると、ご主人のやさしさがどんどん際立ってきていますし、ご主人から見ると、奥様をサポートし、愛せる自分になってきたわけです。
そして、奥様:「本当に本当に私のせいじゃない?」
ご主人:「当たり前じゃないか」などという会話ができはじめるころには、2人の雰囲気はとてもロマンチックに変わってきました。
私は長い間、男女関係のカウンセリングをしていますが、いつも思うことは、「自分は愛されていない」と感じて、愛を止めてしまうのは、いつも罪悪感なのです。
すべては誤解なのですが。
もし、あなたの関係性が、昔ほどロマンスにあふれていないとしたら、どこかで自分を責めていらっしゃるのかもしれませんよ。
では、来週の恋愛心理学もお楽しみに!!