カウンセリングの現場から(後編)

夫婦の問題。必ず夫婦がともに同じ感情を共有しています

こんばんは。

神戸メンタルサービスの平です。

今週は、前回の続きをお届けします。

前回のお話を振り返ると、相談者の奥様が、トップセールスマンのご主人に恋をして結婚したのですが、不況が深刻になるとともに、ご主人の営業成績がどんどん下がり、それに比例して彼のお給料も下がったために、夫婦の仲が険悪になったという内容でした。

今では奥様は、「ビールが飲みたけりゃもっと稼げ」とご主人に辛らつな言葉を浴びせかけるような状態です。

表面的に見れば、奥様はご主人に活を入れて、もっと稼がせようとしているのですが、深層心理的には、奥様はご主人にトップセールスマンに戻ってほしくはないのです。

奥様は、昔、トップセールスマンの彼に恋をして結婚したわけですから、彼がもう一度トップセールスマンになると、世界中の全ての女性が彼に魅力を感じ、その結果、自分は捨てられてしまうのではないかと恐れているのです。

 

今のやり方を続けていくと、ご主人がいつかトップセールスマンに返り咲いた時には、「稼げなかったので辛抱しいていたけれど、これだけ稼げるようになったんだから、好きにさせてもらうよ」とご主人に背を向けられてしまう確率がとても高くなります。

すると、奥様は自分の恐れを証明することになってしまいます。

夫婦間の問題というのは、必ず夫婦がともに同じ感情を共有しています。

この夫婦の場合、ご主人は「しっかりと稼げていない」という罪悪感を感じおり、奥様もそこを攻撃しています。

しかし、奥様の方にも何らかの罪悪感があるはずなのです。

奥様は、意識的にはそのような罪悪感を感じていませんので、奥様に質問してみました。

「もし仮にあなたがご主人に、「申し訳ない」と罪悪感を感じていることがあるとしたらそれは何でしょう?」

そうすると奥様は、「もし、あるとしたら・・・」と長い間考えて「私と結婚したから、彼はトップセールスマンから落っこちちゃったんじゃないかしら・・・」と言ってくれました。

 

奥様は、深層心理的には、すばらしい成績をあげていた彼が、トップセールスマンの座から滑り落ちたのは、結婚して以降のことなので、それがまるで自分のせいではないか、と感じていらっしゃったようなのです。

 

人間は、罪悪感を感じると、そのあまりの痛さから、「自分のせいではない。あの人が悪いのだ」と誰かを責めることにより、自分の罪悪感を隠します。

実は、奥様は、この罪悪感を隠すために、ご主人のことをひどく責めていたようなのです。

この罪悪感のフタを開け始めると、奥様は、自分をひどく責めるように「きっと、私と結婚したからだ・・・」と何度も何度も口にされました。

一方、その様子を隣で見ていらっしゃったご主人は、もうびっくりです。

あれほど辛らつにご主人のことを責め続けていた奥様が、実は自分自身をこれほど責めていたとは、まったく知らなかったわけですから。

「何を言っているんだ。悪いのは営業成績を上げられないこの俺の方なんだから」とご主人が奥様に声をかけても、

「あなたの運を私が全部吸い取ったのよ」

「何をバカなことを言っているんだ。営業成績のことはお前とは関係がない」

お気づきになったでしょうか?この夫婦の関係がどんどん変わってきているのを。

奥様から見ると、ご主人のやさしさがどんどん際立ってきていますし、ご主人から見ると、奥様をサポートし、愛せる自分になってきたわけです。

そして、奥様:「本当に本当に私のせいじゃない?」

ご主人:「当たり前じゃないか」などという会話ができはじめるころには、2人の雰囲気はとてもロマンチックに変わってきました。

 

私は長い間、男女関係のカウンセリングをしていますが、いつも思うことは、「自分は愛されていない」と感じて、愛を止めてしまうのは、いつも罪悪感なのです。

すべては誤解なのですが。

もし、あなたの関係性が、昔ほどロマンスにあふれていないとしたら、どこかで自分を責めていらっしゃるのかもしれませんよ。

では、来週の恋愛心理学もお楽しみに!!

この記事を書いたカウンセラー

About Author

神戸メンタルサービス/カウンセリングサービス代表。 恋愛、ビジネス、家族、人生で起こるありとあらゆる問題に心理学を応用し問題を解決に導く。年間60回以上のグループ・セラピーと、約4万件の個人カウンセリングを行う実践派。 100名規模のグループワークをリードできる数少ない日本人のセラピストの1人。