深刻さから脱出する方法とは
私たちは危機に瀕すると深刻になる場合があります。
特に几帳面な人、真面目な人、失敗してはいけないと物事を完璧に成し遂げようとする人はその傾向が強くなります。
深刻さは怖れが原点です。
「こんな事が起こるのではないか」と起こって欲しくない状況や出来事を想像したとき、怖くなり、そうならないようにどうすればいいのかと考えるのです。
考えて、そうならないように解決する方法が見つかれば、深刻にはならずにそれを実行するのですが、その方法が見つからない時、もしくは実行するハードルが高いと感じるときには、よい方法はないかと考え、より深刻になり、深刻さの罠に陥ってしまうのです。
そもそも、深刻になればなるほど自分の持っている知識や経験をフル動員して考えに考えているのですから良い方法などなかなか見つかるものではありません。
また考えることは、そもそも悪い事態を想定しているのですから、考えれば考えるほどより悪い事態が想定されることにもなります。
深刻さのスタートは、ほんの些細な問題だったかもしれませんが、考えれば考えるほど深みにはまり、深刻になっていくのです。
では、深刻にならないようにするには、どのような方法があるでしょうか。
一つ目は、自分が持っている知識や経験を一旦横に置いて、冷静に物事を眺めてみる方法です。
深刻になっているときには、視野がとても狭くなるものです。その狭い視野を解き放ち、物事を俯瞰で眺めてみることです。
「樹を見て森を見ず」という言葉がありますが、目の前の事柄にのみ捉われていると、起こっている出来事の全体の構図が見えなくなります。森の中に迷い込んでしまったら目の前の樹しか目に入りませんが、少し上空から森全体を眺めてみると今自分のいる位置がどの辺りなのか、どうしたらこの森から抜け出ることができるのかが見えてきます。
「こんなことの為に生きているわけじゃない」という気持ちで、起きている事柄や怖れている事柄を見直してみると、視界が広がることが多くあります。
二つ目は、考えを止めることです。
私たちには、考えていいことと、考えると悪いことがあります。
考えていいのは、自分で決められることです。例えば、何を着ていくか、どこに行くか、何を食べるかといったような事柄は自分で決められます。
このような事柄は考えても自分の中だけで結論が出せるので問題にはなりません。
一方、考えると悪いことは、他人の気持ちや起こるかもしれない状況など、自分で決められない事柄です。
自分で決められない事柄を考え出すと、いつまで経っても結論が出せないのでどんどん深みにはまります。
これは“自己価値”や“自信”など、自分自身の問題と絡み合って複雑化します。
例えば、メールを送ったのに返事が来ないとします。最初は「なぜ返事が来ないのだろう」と思いますが、やがて「私何か悪いことしたかな」とか「嫌われているのかな」などと考え始める人もいらっしゃるのではないかと思います。
これは他人の気持ちを考えていることになり、メールの返事が来ないだけで自己攻撃をはじめ、「嫌われる私」など自己の価値を棄損し、自信が無い私を感じさせます。
メールの返事が来ないのは、ひょっとしたら相手が昼寝をしていただけかもしれないのですが・・・。
人間は防衛本能から怖れに興味を抱くので、本当は触れたくない自分の内側にある「怖れ」についつい目を向けてしまうのですね。
考えると悪いことを考え始めてしまった場合には、深みに入らずにそこで考えることを断ち切る必要があります。
考え始めてしまったことに気が付いたら、声に出して「と思った。(マル)」と言ってみてください。
例えば「彼がどう思っているのか、と思った。(マル)」という塩梅です。
1度で効果があるとは言いませんが、これを習慣づけると、やがて深みにはまらない、深刻にならないようになります。
三つめは、手放しです。
深刻さは執着が生み出します。
「それを何とかしたい」という執着心が、事態や人をコントロールしようとしているのです。
例えば「彼とお別れすることになったらどうしよう」と考えているということは、「彼と別れたくない」という気持ちであり、彼にしがみつこうとしている状態です。
執着は、握りしめていないと離れてしまうという彼への”疑い”や、「私は彼にふさわしくない、愛される存在ではない」という”自信の欠如”、「こうなった原因は自分にある」という”自責の念”、「もう二度と素敵な彼は現れない」という”未来への絶望”などがその根底にあります。
本当の手放しは、執着の根底にある自分に対するネガティブな思い込みから自分を解放すること、すなわち執着するそもそもの原因を取り除くことなのですが、これは心のかなり深い部分に根差しているので一朝一夕にはいかないかもしれません。
そこで、より簡便に執着を手放すには“委ねる”という方法を意識して用いることです。
何に委ねるのか、それは執着の対象になっている人、状況の推移、あるいは神様のようなものなど、執着している対象により様々です。
何とか状況などをコントロールしたいと思っているのに、委ねることはとても怖いことかもしれません。
しかし、今までのやり方でコントロールして上手くいかなかったのですから、ここは作戦の変更が必要です。
深刻さから抜け出すために、委ねるには「なるようになるさ」「これでいいのだ」という言葉を口に出して使ってみてください。
これを習慣化すると、状況を委ねやすくなります。
以上、深刻さから脱出する三つの方法をお話してきましたが、深刻さの罠にはまりそうになったら試してみてください。
きっと、何らかの道が開けると思います。
(完)