本当の感情って何?
◆怒りを使って感じたくない感情に蓋をしている
みなさんは、怒りが二次感情であることをご存じでしょうか?
二次感情というのは、一次感情が発生したあとに感じる感情のことをいいます。さきほど「怒りは感情の蓋」であると言いましたが、怒りの下の感情は一次感情のなかにあると言い替えることもできます。
では、一次感情がどんなものかというと「心配、寂しさ、落胆、悲しみ、悔しさ、期待、不安、虚しさ」などの感情のことをいいます。
私たちがイライラしているとき、じつは最初に感じているのは怒り以外の感情です。つまり一次感情を感じている。しかし、その感情を感じることがあまりにもつらいときに怒りで蓋をしてしまうので、怒りしか感じていないと誤解をしているのです。
蓋をするにはするだけの目的があります。悲しみを感じるぐらいなら怒っているほうがマシ、寂しさを感じるぐらいならば怒っているほうがマシなのです。
怒りを感じたときには「どういう感情が隠れているのか」を考えてみることがとても大切です。核心にある気持ちにたどり着かない限り、怒りの感情はくすぶり続けるからです。
怒りをぶつけるだけだと後味が悪く、スッキリしないのはそのためです。それは、怒りだけを伝えて、本当の気持ちを伝えていないからです。
私たちは怒りながら言っている言葉を、自分の本心を伝えているのだと誤解しています。どれだけの誤解であるのかは、ここから先の説明を読んでいただけるとおわかりいただけることでしょう。
◆怒りの下にある本当の気持ち
怒りが本当の感情(本心)ではないと証明するような例え話があります。この例えは、ちょっと心が痛くて申し訳ないのですが、わかりやすい例え話だと思ってお読みください。
たとえば、お友達がなんらかの事情で突然に亡くなってしまったとします。そんなときの私たちは悲しみを怒りで表現することがあります。「なんで死んじゃったんだよ!」「ふざけんなよ!」「絶対に許さないからな!」というように。
お友達が亡くなってしまったのに、なぜ怒っているのでしょうか?それは、悲しくて悲しくて仕方がないからです。怒っていれば、悲しみを感じなくて済みます。怒っている間だけは、怒りだけを感じていられるからです。
言葉では「なんで死んじゃったんだよ!」「ふざけるなよ!」「絶対に許さないからな!」と怒っていますが、心で感じているのは「死んでしまうなんて悲しい」「こんなことになって悔しい」「あなたがいなくなるなんて寂しい」という感情です。
私たちは感じる感情があまりにもつらいときに、怒りの感情を使います。語弊をおそれずに言うのであれば、感情をすり替えることもできるわけです。
◆悲しみが大きいほど怒りも大きくなる
一次感情が大きければ大きいほど、二次感情も大きくなります。つまりは、心配、寂しさ、落胆、悲しみなどが大きければ大きいほど、怒りも大きくなります。
私たちは、心配、寂しさ、落胆、悲しみなどの感情がわいてきたときに、その感情がふきこぼれないように、怒りで蓋をしてしまうわけです。すると、怒りだけを感じているような気がするわけです。
怒りの下には必ず何らかの感情が隠れているので、怒りで蓋をして抑え込むのではなく、その下にある感情を丁寧に扱ってあげる必要があります。
「私は悲しくて怒っているんだな」「私は心配のあまりイライラしているんだな」「私は期待を裏切られた気がして腹を立てているんだな」とその感情をきちんと認める。その感情を認めると怒りが怒りだけではなくなっていきます。
「ああ、私はこう感じていたのだ」とわかる。怒りの下の感情を認めることができると、その手にもった感情を投げつけるのか、自分の本心として伝えるのか、自分自身でその気持ちを抱きしめるのか、選ぶことができます。
怒りを感じたときには「どういう気持ちが隠れているのか」と寄り添うことがとても大切だということです。これが怒りの取り扱い説明書の基本ですので、知っておかれると良いでしょう。
(続)
- 悲しみを感じるぐらいなら怒っている方がマシ
- 怒りで押しつぶした気持ちはいったい何だろう?
- 不機嫌さという怒りについて考えてみる
- 怒っている人は困っている人