怒りで押しつぶした気持ちはいったい何だろう?

怒りの下にある感情とは

私たちは怒りにまかせて言っている言葉を、自分の本当の気持ちを伝えているのだと誤解をしています。それがどれほどの誤解であるのかについて知っておきましょう。

私たちがイライラムカムカするとき、最初に感じているのは怒り以外の感情です。それを一次感情といいます。一次感情は「心配、寂しさ、落胆、悲しみ、悔しさ、期待、虚しさ」などのことをいいます。

怒りは二次感情ですので、一次感情のあとに感じる感情です。ですが、怒りはとても強い感情なので、あっという間に一次感情を押し潰してしまいます。つまりは、もともと感じていた心配、寂しさ、落胆の気持ちを潰して、怒りだけを強く感じてしまう。

なので、心理学では「怒りは感情の蓋。怒りの下に本当の感情がある」と表現されています。本当の気持ちが怒りで押し潰されているので、あたかも自分は怒りしか感じていないと誤解しやすくなるのです。

すると、相手には怒りのエネルギーだけが伝わり、本当の気持ちはなにひとつ伝わらないということが起こります。ですので、怒りがわいてきたときには、怒りの下にある感情を救いあげる必要があります。

今回は具体的な例を使って、怒りの下にある感情の扱い方について考えてみましょう。

◆人は心配なときほど怒る

怒りの下にある感情については、こんな親子の話がわかりやすいかもしれません。
みなさんは、4歳のケンちゃんという息子をもつママになったつもりで、ここから先を読んでみてくださいね。

あなたは息子のケンちゃんを連れて、近くのショッピングモールにお買い物に出かけました。その日はバーゲンセールということもあり、いつもよりたくさんの人で賑わっていました。

「バーゲンかぁ。最近、自分の洋服なんて、ゆっくり見る暇もなかったから、今日は一枚ぐらい買ってもいいかな。」

「ケンちゃん、ママのそばにいてね。絶対に離れちゃダメだからね」と言い聞かせて、ほんのちょっとだけ洋服を見ることにしました。

「へぇー、今はこんな洋服が流行っているのね」と興味津々でほんの数分見ていると、いるはずのケンちゃんがいません。

「あれ?ケンちゃん、どこに行ったの?ケンちゃん!!」名前を呼びましたが返事がありません。もっと大きな声で呼んでみましたが姿が見えないのです。

「あの、すみません。4歳ぐらいの青いTシャツを着た男の子を見ませんでしたか?さっきまでここにいたんですけれども」とまわりの人に聞いてみましたが、みんな首をふるばかり。

「どうしよう!もしかして連れ去られたのでは!」胸がぎゅっと締めつけられ、背中は冷や汗でビッチョリ、ママの目からは涙が溢れ出しました。

すると、ピンポンパンポーン!「青いTシャツを着た男の子が迷子になっています」という館内放送が。「あ、ケンちゃんだ!!」ママは大急ぎで迷子センターまで走っていきました。

「ケンちゃん、ごめんね。ケンちゃん、ごめんね。」さぞかし不安な気持ちで泣いているだろうと思いきや、そこにいたのはお菓子をもらってニコニコ笑っているケンちゃんの姿が。

ケンちゃんを見た瞬間にママがとった行動は、バッチーンと手打ちでした。「ケンちゃん、あれほどママから離れちゃダメって言ったでしょう!!!」

「だって、僕、退屈だったんだもの」とケンちゃんは泣き出しました。「二度とこんなことしないでちょうだい!いいわね!」とママは自分でもびっくりするぐらいに怒ってしまったのです。

◆怒りで潰されている感情を救いあげる

このような出来事は、皆さんもどこかで見たり聞いたりしたことがあるのではないでしょうか。では、ここで思い出してみてくださいね。ママの怒りの下にある本当の感情はいったい何でしょうか?

怒りは二次感情ですから、一次感情のなかに本当に気持ちがあります。そうですね、ママはケンちゃんのことが心配で仕方がなかったのです。

「ママはね、ケンちゃんがいなくなったらどうしようって。ママは心配でたまらなかったわ。ケンちゃんが無事で本当によかったわ」というのが、本当の感情なのです。

なので、このまま平手打ちバッチーンだけで終わってしまうと、いつかまたケンちゃんは迷子になってしまうかもしれません。だって、ママの本当の気持ちは何ひとつ伝わっていないからです。もし、怒ってしまったとしても、後からでも本当の気持ちを伝えることをおすすめしたいのです。

「ケンちゃんがママのそばからいなくなって、もしかしたら知らない人に連れて行かれたかもしれないと思って、ママはすごく心配したんだよ。だって、ケンちゃんはママの宝物だからね。ちゃんとそばにいてね。」

こんなふうに言われたら、迷子にならなくても済むかもしれないですよね。怒りはとても強い感情なので一瞬で本当の気持ちを押し潰してしまいますが、後から伝えてもいいのです。

「あの時、本当に伝えたかった気持ちはなんだろう?」とちゃんと見つめ直すことが、怒りで潰されていた感情を救いあげるコツなのです。

(続)

心理学講座4回シリーズ/同シリーズ記事はこちら
  1. 悲しみを感じるぐらいなら怒っている方がマシ
  2. 怒りで押しつぶした気持ちはいったい何だろう?
  3. 不機嫌さという怒りについて考えてみる
  4. 怒っている人は困っている人
この記事を書いたカウンセラー

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失恋からの立ち直り、都合のいい女からの卒業、本気の婚活、浮気や離婚問題を乗り越える、夫婦関係の修復、離婚から再出発など、恋愛&男女関係の相談が多く、恋愛・結婚生活に悩む人の駆け込み相談所的な存在である。 30歳からのうまくいかない恋愛と40歳からのこじれた男女関係の解決を提供している。