怒りを言葉で表現する人、表現しない人
◆怒りを言葉で表現する人
「何度言ったらわかるんだ!」「この前も言っただろう!」「なんで出来ないんだ!」と怒鳴り散らすような人、見たことありませんか?
なぜこの人はこんな言い方しかできないのか、ちょっとだけ考えてみましょう。
その多くは「怒鳴らないと言うことを聞いてくれない」「怒鳴らないと動いてくれない」「怒鳴らないと助けてもらえない」と思っているようなのです。
怒りを使わないと、人が自分のために動いてくれないと思う人は、どんな気持ちなのでしょうか?穏やかな態度でお願いしてもいいのに、それができないのはなぜ?
それはおそらく自己価値が低く、自己嫌悪や自己否定が強くなければそうならないのです。だって、自分のお願いなんて聞いてもらえないと思っているから、怒鳴ってやってもらうしかないと思っているわけですからね。
そんな自分であることを感じたくないから、怒りで相手を動かそうとしてしまう。でもこのやり方だと人がどんどん離れていくのです。
このように怒りを言葉で表現する人もいるのですが、怒りを言葉で表現しない人もいます。そんな人がよく使うのは「不機嫌さ」です。
◆怒りを言葉で表現しない人
怒りを言葉で表現しない人は「不機嫌さ」をよく使います。「黙り込む」「視線を合わせない」「返事をしない」「物にあたる」などがそれにあたります。
不機嫌さの多くは「甘え」から発生します。「この人なら大丈夫だろう」「この人なら受け入れてくれるだろう」という人の前でのみ発生するのです。その多くは「上司が部下に」「親が子に」といった上下関係で起こりやすくなります。
もちろん逆のパターンもありますが、一般的には自分のほうが上だと思っている人が、下だと思う人に対して不機嫌さを使うことが多いのではないかと思います。
言葉で表現しないところに「言わなくてもわかってほしい」という怒りがあります。これは、大人が使うには成熟した方法ではないのです。なぜならば、不機嫌さは私たちが子供時代に使っていた怒り方だからです。
◆子供時代の怒り方
みなさんは、自分が一番最初に怒ったのはいつ頃だと思いますか?
そんなことは覚えていないと言いたくなるかもしれませんが、勘の良い人ならわかるかもしれません。
そう、赤ちゃんの頃なのではないでしょうか。泣くことでしか自分の欲求(感情)を訴えることができなかった時代が私たちにはあったのです。
電車に乗っているときなどに、何をしても泣き止まない赤ちゃんを見かけることがあります。お母さんもいろいろしてあげているのに、どうにもこうにも泣き止んでくれない。お母さんもどうしたらいいのか困っています。
そんな時の赤ちゃんはかわいい泣き声というよりは、まるで火がついたかのようにギャンギャン泣き叫んでいます。あれってご機嫌でしょうか?いえ、あきらかな不機嫌さです。
不機嫌であることをお母さんにわかってほしくて、火がついたように泣き叫ぶ。この不機嫌さこそが、私たちの怒りの原型になる「小さな炎」なのではないでしょうか。
赤ちゃんは自分の欲求を言葉で伝えることができないので、泣いてお母さんにわかってもらうしか方法がない。でも、それがなかなかわかってもらえないときに、火がついたように泣き叫ぶ。
私たちは子供の頃から、その小さな炎をもって生きている。その炎を大きく燃やすと、自分の欲求が満たされるという経験をしてきている。ここに「言葉では表現しない。でも、わかってもらえた」という原点があるのではないかと想像するのです。
言語能力がまだ低い子供のうちは「怒る、甘える、泣く」の3種類を使い、自分の気持ちをわかってもらおうとすることがあります。床に転がって「買って!買って!」と泣き叫ぶ子供はわかりやすい例かもしれません。
子供だけでなく大人もそうですが、言葉を使って自分の感情を言い表せないときは、感情をボリュームの強弱で表現するようになります。たとえば、大声で泣き叫ぶ、大きな声で怒鳴る、机を叩く、物を投げるなどです。
当然のことながら、大人がこの方法を使ったら人が離れていきます。「なんで俺がこんなに怒っているのか、お前がわかれよ!」と言っているのと同じことだからです。
心理学では「怒りは感情の蓋。怒りの下に本当の感情がある」といいます。怒りの下にある気持ちは大きくわけると3つのパターンに分類することができます。
・愛してほしい
・わかってほしい
・助けてほしい
不機嫌さを感じたときには、怒りの下にある本当の気持ちに寄り添うことが大切だということです。まずは、自分が自分の気持ちをわかってあげることが必要なのです。
(続)
- 悲しみを感じるぐらいなら怒っている方がマシ
- 怒りで押しつぶした気持ちはいったい何だろう?
- 不機嫌さという怒りについて考えてみる
- 怒っている人は困っている人