実際にするかどうかは別として、「転職しようかな?」と思ったことのない方はいないかもしれません。
私は30年間くらい、企業の人事や人材会社で採用関係の仕事をしてきましたので、「辞めたい」「入社したい」という方たちとたくさんお話してきました。
私自身も振り返れば8社で働いたことがありますから、8回は就職・転職活動をしているわけです。
私の若い頃は1つの会社で定年まで働くことが美徳のように考える時代でしたが、今は社会も価値観も変わっていますので、8社くらいではあまり驚かれないかもしれませんね。
かといって、転職というのはそんなに気軽にするものでもなく、それなりの動機と意志がないとできません。
そして、何が良い転職なのか?というのは、本当のところ、後々になってみないとわからないものです。
それでも、今まさに転職しようとしている方がいらしたら、少しでもご参考になれば幸いです。
◆辞めたい動機◆
よく「会社を辞めたい」という方のお話を伺っていると、「思ったのと違ったから」という言葉に出会います。
それはそうですよね。
「思ったとおり良い会社で、願ったとおりの仕事に就けた」と思っていたら、辞めたいとは思わないでしょう。
何かあてにしていたことが違ったので辞めたいわけです。
いろんな会社やいろんな仕事がありますから、考えていたことと違ってショックを受けたということもあるでしょう。
でももし、それが続いて何度も転職しているとしたら、ちょっと立ち止まって考えてみる必要があるかもしれません。
「私が思ったとおりの会社、思ったとおりの仕事って、どこにあるんだろうか?」
「あるとしたら、それはどんな会社でどんな仕事なんだろう?」
漠然と「良い会社」「良い仕事」と願っていても、それは向こうからやってきてはくれないものです。
より具体的にビジョンを描いて、自分から探しにいかないとならないのです。
そして、そのビジョンがなかなか現実にならない場合は、どこまで譲歩できるのか、見直しをしないといけない場合もあると思います。
それは諦めなさいという意味ではなくて、自分の「思ったの」がどこまで社会に受け入れられるかの基準を知っておくと、理想を現実化しやすいですよということです。
◆疲れる転職活動◆
転職活動をしていて、1回でさっさと決まれば疲れることもないかもしれませんが、たいていの場合は何社か面接を受けたり、落ちたり辞退したりすることがあるかと思います。
私もそうでしたが、それが続くと疲れてくるのです。
面接だけでも緊張して疲れるのに、その後に何度も不採用の連絡をもらうと、まるで自分を「いらないです」と否定されたような気持ちがしたものです。
そして自分を振り返って「自分のどこがいけないんだろう?」と落ち込んでしまったりすることもあるかもしれません。
自己否定というのは、とても疲れて、エネルギーを奪われるのです。
でもこれは採用をしていた側からの意見ですが、決して否定しているわけではないのです。
採用する側も、会社に合う人・募集している仕事に合う人に出会いたい。
「この方はすごく良い方だけど、相性や適性の問題でちょっと違うかもしれない。違うところに押し込めたらゆくゆくお互いのためにならない。」という苦渋の判断ということが多いのです。
ですので、もし不採用と言われても「合わなかったということね」「はい次」と手放せると、疲れる度合いも少しは軽くなるかと思います。
◆人のご縁は切れない◆
転職したくなる理由のひとつに「人間関係」というのは、大きな理由だと思います。
仕事はがんばれる。でもあの人には耐えられない。
またはあの職場の雰囲気には耐えられない。
ということもあると思いますので、どうしても耐えられない場合には、そこから出ていくというのも判断のひとつです。
でもそんな時にも、誰か1人でも良いので心に残る嬉しい出会いを見つけられると良いですね。
仕事量が多くて大変で、上司がものすごく厳しかったけれど、同期の仲間と励ましあったからがんばれた、とか。
競争の激しい職場で、誰も仲間がいなかった。
でもトイレで泣いていたら、お掃除のおばさんがとても優しく声をかけてくれて、すごく救われた…というような。
心に残る出会いを見つけられる人は、次の職場でもきっとまた新しく心に残る出会いを見つけられるのです。
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こう書いていると、転職活動というのは限りなく婚活に近い気がしてきました。
心理学では「良い仕事と良いパートナーは一緒にやってくる」と言われることもあるので、そういうことなのかもしれませんね。