「意欲がない」「気力がない」、燃え尽きてしまったら
心がエネルギー切れを起こし、疲れきって意欲をなくしていませんか。まるで車のガソリンがなくなったように、今までと同じようには走れなくなってしまうことがあります。
例えば、「意欲を持って取り組んでいた仕事に対して、急にやる気が出なくなった。」「これまでがんばれていたことががんばれなくなって、どうでもいいとなげやりになってきた。」「目標を達成して、さあこれからという時なのに、気力がない。」など。
この心が燃え尽きたように意欲を失った状態を、バーンアウト・シンドローム(燃え尽き症候群)と言います。
◆バーンアウト(燃え尽き症候群)の特徴
バーンアウトの概念は、1974年に精神心理学者のフロイデンバーガーによって提唱されたものです。その後、社会心理学者のマスラックによって「情緒的消耗感」「脱人格化」「個人的達成感の低下」の3つから定義されました。ここでは簡単にご紹介しますね。
◇情緒的消耗感
情緒的消耗感とは、感情的なエネルギーが枯渇している状態です。身体も疲れているのですが、特に心の面で力を出し尽くした消耗感が特徴的です。
相手を思いやり、誠実に接しようとするけれど、思うようにいかないことは多々あるでしょう。ひとつひとつは超えられるストレスだったとしても、それらが積み重なっていくと、意欲が高かった人や責任感のある人ほど燃え尽きてしまいやすいのです。
◇脱人格化
脱人格化という言葉だと、とんでもないことのように思うかもしれません。実際には、人に対して気遣いをする余裕がない、人に興味が持てなくなる、人の気持ちに共感しづらくなる、コミュニケーションがおっくうになるといったことです。
自分にエネルギーがない時に、人に優しくするのは難しいでしょう。自分を守るためには省エネで稼働するしかなくなり、人のために使うエネルギーを節約した結果、ドライな対応や相手を深く理解せずに決めつけてしまうといったことが起こりやすくなります。
◇個人的達成感の低下
バーンアウトする前は意欲的に取り組み、それなりの成果や達成感があった人が、やる気を失いがんばれなくなったとしたら。パフォーマンスの質の低下は避けられないでしょうし、以前のような結果は出せなくなるでしょう。
そうすると、達成感ややりがいが低下したり、自分自身の能力への疑いが出てきたりもするでしょう。本来、心のエネルギーになるはずのポジティブな感情が感じにくくなるので、ますます悪循環になります。人によっては、以前のようにはできなくなった自分をひどく責め、さらに心を苦しくしてしまうこともあります。
◆心のエネルギーを取り戻すために
もしバーンアウトしてしまったら、心のエネルギーを取り戻すためにどんなことをしたらいいのでしょうか。バーンアウトの予防にも必要なことを紹介します。
◇心を休める時間をつくる
燃え尽きた状態を例えていうなら、心のエンジンが熱暴走して、正常に稼働する上限を超えて機能停止しているようなものかもしれません。「今のやり方では、もうがんばれないよ。」という心からのサインが出ているようです。
睡眠や休養といった物理的なお休みを取るのと同時に、心を休める時間を積極的に作っていきましょう。いくら体が休んでいても、ずっと仕事のことを考えていたり、自分のダメなところを考えていたりでは、心は休まりません。
ぼーっとリラックスしたり、くだらないことで笑ったり、無駄に思えるくらいの過ごし方も大切です。あるいは、逆に集中できる何かに打ち込むことも、心の休養になります。例えば、ぬり絵や写経、編み物やプラモデル、運動などに打ち込んでいると、自分を苦しめる考えと距離を取れる時間になるでしょう。
◇価値観を見直す
バーンアウトは「これまでの延長ではどうにもならない」という地点に立つことで、「自分にとって何が大切か?」を自分に問うきっかけでもあります。考え方・感じ方の調整や、環境に働きかけることで、より自分らしい生き方を手に入れるチャンスでもあります。
考え方・感じ方の調整では、「こうでなければならない」という完璧主義をゆるめたり、自分や他人への期待を手放したり、優先順位をつけて取捨選択したり、できない自分を受け入れたりしながら、新しい価値観を整えていきましょう。
そして、自分は何が好きで、何が喜びで、何が楽しいのかを感じてみましょう。それには、仕事が忙しくてあきらめていたことや、これまで自分に我慢させていたことにチャレンジしてみるのをお勧めします。本格的に何かに取り組もうとすると負担に感じることもありますから、遊びの要素があるものを「プチ体験をしてみよう」くらいからがいいでしょう。
楽しさや喜びを心に取り戻すことができたら、心に活力が帰ってくるでしょう。心にエネルギーが満ちてくると、新たな行動をする意欲につながります。焦らずに、整えてみてくださいね。
(完)