親子関係は時間経過とともに変化していくもの
全ての人間関係の基本になっているのが、親子関係です。
私たちが生まれて初めて、関係性を築き、身近な存在として生活し、あらゆることを学ぶのは、親子関係からです。
小さな子どもと、親との関係性は、子どもが依存であり、親は自立。
この関係性で、子どもは面倒を見てもらい、ニーズを叶えてもらい、危険から守ってもらいます。
赤ちゃんの時代であれば、それこそ何から何まで面倒を見てもらうことになりますが、自分でできることが増えてくると、「自分でやりなさいね」と躾が始まります。
自立の親だって、完璧ではありませんから、完璧にニーズを叶えてあげることもできないですし、うまくいかないこと、手が回らないこと、余裕がなくなって、怒ってしまうことなども出てきます。
そんな時、依存側の子どもは、傷つきます。
「昨日まで面倒を見てくれていたのに!」
「昨日は、優しかったじゃないか!」
「○○くんのお母さんは、あんなこともこんなこともしてくれるのに!」
自分の面倒を完璧にみてくれなくて、ニーズを完璧に叶えてくれない体験をすることで、不満をもつのですが、不満を持つと同時に、「面倒をみてくれないのは、私が悪い子だからだ」とか、「おもちゃを買ってくれないのは、私がダメな子だからだ」というように、自分を責めます。
親に怒りつつ、自分にも怒るという具合ですね。
そこで、何とか状況を改善しようと、親に頼らなくても自分でできるようにと、自立する準備を始めていきます。
だから、生まれてこの方、ずっと完璧に面倒をみてもらって、ニーズを満足するまで満たしてもらって、危険は初めから排除してとんでもなく安全な場を与えられたとしたら、ずっと依存のままで居続けるということになってしまいます。
実際には、そのような環境はないでしょうが、もしそのような環境があったのとしたら、その子どもが自立していくことが、とても困難になってしまいます。
社会に出たときに、周りの人たちが、完璧に面倒をみてくれることが当たり前だと思いますし、ニーズは満たしてもらえるものだと思います。
自分で何もできないという状態になってしまうのです。
そうなってしまうと、この関係性が、人間関係のベースになってしまっているわけですから、成長していっても周りの友人や、恋人に親のような対応を求めてしまうことになり、人間関係にトラブルが起こります。
では、この時期に子どもがニーズを満たしてもらえなかったら?
面倒をみてもらえなかったら?
あてにしても、ダメなわけですから、親のことをあてにしなくなり、自分で何とかしようと、早くから自立していくことになります。
期待しても、傷つくだけですから、「一人で何とかしよう」「強くなろう」とするのです。
自立していくことは、悪いことではありませんが、この時期に満たされなかった思いは、成長した後も、持ち続けることになりますから、親密になった特定の人限定で、親に叶えてもらえなかったニーズを爆発させてしまうなんてことも起こります。
ただ、基本的には、自分の依存を嫌って、周りに期待することなく自立していますので、周りの人と壁を作って、「何を考えているかわからない」なんてことを言われてしまうこともあります。
ものすごく簡単に、親子関係の自立と依存について書かせていただきましたが、親子が10組あれば、10通りの関係性があるわけで、必ずしもこのようになるというわけではありません。
ただ、親子関係のスタートは、親が自立、子どもが依存という状態からスタートするのです。
この時期、子どもは「愛を受け取る」ということを、学んでいるのかもしれません。
ですから、この時期に何らかの事情により、十分に愛を受け取れなかった場合、その後の人間関係で、愛を求め続けることになるか、「愛なんていらない!」と拒絶するようになる可能性が高くなります。
この頃の子どもは小さいわけですから、なかなか記憶に残っていないことが多いものです。
大人になって、「親は愛してくれなかった」と思っていたとしても、小さな頃には、あなたと愛おしく存在として面倒をみてくれ愛してくれていたのかもしれません。
ある意味、親が自立で子どもが依存というこの時期は、子どもにとっては、天国のような時代なのかもしれません。
愛をひたすら受け取る時代ですからね。
子どもにとって親は、「すごい人」であり、親にとって子どもは「愛おしい存在」という時代なのです。
また、親は自分の愛を受け取ってくれる存在がいることは、本当に幸せなことで、大きな喜びを感じられる時代なのです。
自立である親の状況にもよりますが、親子関係のロマンス期がこの時代なのかもしれません。
(続)
- 変化する親子関係(1)〜自立と依存〜
- 変化する親子関係(2)〜反抗する時代〜
- 変化する親子関係(3)〜自立と自立〜
- 変化する親子関係(4)〜自立と依存の逆転〜