幼稚園に入れないかも!

「幼稚園、もしかしたら入れないかも…」

発達障がいの診断を受けている息子の子育てで、この「幼稚園に入れないかもしれない問題」は、かなり苦しかった思い出です。しかし、本当のところ、なぜ苦しかったのかというと、私の「間違った思い込み」が、由来していたようなのです。

 

■発達障がい

発達障がいとは、できない、苦手があり、自分自身または周りが困っていて、一定の要件を満たしているとお医者さんが診断したときにおりる障がい名です。そんな息子の幼稚園選び、難航しました。

住んでいる地域からもらった幼稚園一覧の書類には、障がい児の受け入れ可能だと明記されている幼稚園はたったの1園しかありませんでした。

・難航する幼稚園入

藁をもつかむ思いで私はその幼稚園に連絡しました。
返答は
「お子さん本人と園児全員の健全な育成のため、親御さんも園から大丈夫ですと言われるまでは、常時お付き添いください。難しい場合は、お受けするのは難しいです」
とのことでした。目の前が、真っ暗になりました。

 

■私は迷惑な存在なんだという思い込み

今なら
「親子で通園してくだされば、在籍可能です」
と、言ってくださっていることを言葉のまま受け取れます。しかし、当時の私のずっと心の奥にあり続けた
「たしかに手はかかる。だからやっぱり迷惑な存在なんだ。みんなが通える幼稚園の一席すら、与えてもらえないんだ」
という誤解が、一気に吹き出してしまいました。

・わたしたちは、思い込みどおりに世界を見ようとする

私たちは、思い込みどおりに世界を見ようとします。検索エンジンに入力し、エンターをおすと検索結果が並ぶように、思い込みどおり
「やっぱりどうせそうだった」
という世界を見続けてしまったりします。

やっぱりそうだった。そう思う時、
「やっぱりって、なんでそう思うの? 今回だけじゃないの?」
「今回だけじゃないとしたら、一番最初にそう思った出来事は、いつ頃あって、当時何があった?」
そんなふうに、過去の未消化な心の痛みや間違った思い込みがあるのなら、今こそ癒すチャンスがきているのかもしれません。

 

■思い込みは、なぜつくられるのだろう

わたしたちは心も体も一つも傷つくことなく成長することはなかなか難しいものです。傷つく体験をすると、もう傷つきたくないので、どうにかしようとします。その一つが
「どうせやっぱり私は○○な存在だ」
と、ネガティブな判断、思い込みを持つことだったりするようです。その思い込み、普段はあまり意識しないかもしれません。しかし、心の傷に触れるようなネガティブな出来事があったときにふと顔を出す

「やっぱり私って…」
そんな感覚、大なり小なり、多くの人が持っているものなのかもしれません。

H3・「まったく違う世界のものの見かた」があるとしたら

私たちは、痛みとともに刷り込まれた思い込みにふれると、反応します。体の怪我にふれると、
「痛い!」
と、反応することによって、怪我を保護します。

でも、心の場合は、
「本当は誤解だよ! まったく違う世界のものの見かたがあるんだよ!」
という痛みであることがとても多いのです。今、目の前に起こっている出来事で感じていることは、本当の本当に、真実なのでしょうか。それとも、過去の心の傷に反応しているだけなのでしょうか。

 

■被害者意識と加害者意識と、無害者意識

私は学生時代に居場所がないと感じることがたびたびあり、その過去の傷、思い込みに反応したのだと思います。
「私たちは歓迎されてないんだ、いないほうがいいんだ」
という被害者意識と、
「私たちは迷惑かける存在なんだ」
という加害者意識で、幼稚園のことをみてしまっていました。

しかし、息子はそんな私の渦巻く負の感情とこじらせぶりに巻き込まれることなく、ニコニコと楽しそうに
「僕は世界から歓迎されているんだ!」
と、元気いっぱい、通園します。息子は優しくて、笑顔のかわいい幼稚園の先生が大好きになりました。先生のいうことを思った以上によく聞き、先生によく抱っこしてもらっていました。先生が、息子のことも他のお子さんのことも大切に思い、しっかり見てくださっていること気づきます。あんなに子ども思いの優しい先生のことを
「私たちのことを迷惑で、いないほうがいいと思う人にちがいない」
という目で見てしまっていたのは私だったことに気付き、私は本当に恥ずかしいことをしてしまったなと、当時も今も思うのです。

・無害者意識とは

息子も、ある時期から一人で幼稚園に過ごせるようになりました。お友達もできました。今でも、一緒に遊ぶ当時の友達親子もいます。暖かい思い出に変わりました。

無害者意識という、心の世界の一つの考え方があります。被害者も、加害者もいない、誰も傷つかず、誰も傷つけず、愛でつながる世界のことです

私は被害者H3・加害者意識のない世界は、私に縁のないものかもしれないなと思い、諦めてもいました。なぜなら、その世界が、過去の私のすべてでもあったからです。でも、息子は今を楽しそうに生きているのです。

「いったいそれはどんな世界なのだろう」
と、恐る恐る息子の世界をのぞいて見ました。私とは全く違う世界の見かたをしていました。私がずっと願い、でも、諦めていた無害者意識、愛でつながる世界だったのです。私が、癒された瞬間だったのです。

 

■間違った思い込み、手放せたらこの世界は天国にもなる

みなさんも、子育てには心配がつきないと、思われる方もいるかもしれません。親御さん自身がたくさんの心の傷を抱えて、苦しまれていることもあるかもしれません。でも、実は隣にいてくれるお子さんこそが、思い込みなどが少ない純粋な愛の目で世界を見ているのかもしれません。

お子さんは、どんな世界を今、見ているのでしょうか。
お子さんは、どんな世界を、本当は見たいと願っているのでしょうか。
機会があれば、親子で話しあってみることや、お子さんの世界観に興味を持って観察することなどを、してみてもいいのかもしれません。

その機会をもつことで、一番癒されるのは親御さんご自身であることは、少なくありません。

・思い込みは、書き換え可能

誤解から間違った思い込みをしてしまったとしたら、その思い込み、本当は何度でも書き換え可能です。実際、私たちはたくさんの思い込みを、無意識に何度でも書き換えてきて生きているものです。

しかし同時にまた、思い込みの力は強力です。同じ出来事を体験しても、この世界は天国にも地獄にもどうやらなるようなのです。

親御さんは、お子さんをとおして今、どんな世界を見ていますか?
もしかしたら、過去のご自身の痛みや思い込みから見ている可能性はありませんか?
「まったく違う世界のものの見かたがある」としたら、本当はどんな世界を見てみたいですか?

みなさまの何かのお役に立てることがあれば嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

来週は、小川のりこカウンセラーです。
どうぞお楽しみに。

 

[子育て応援]赤ちゃんの頃から、思春期の子、そしてそんな子どもたちに関わる親とのお話を6名の個性豊かな女性カウンセラーが、毎週金曜日にお届けしています。
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恋愛・夫婦・子育て・人間関係など、生きづらさや悩みを抱えたかたに、穏やかに、寄り添うことを大切にしている。「話すことのすべてを大切に聴いてもらえる安心感」がある。あらゆる人のなかにある豊かな才能・魅力に光をあて、生きる力を一緒に育む。共感力の高いカウンセラーである。