自立と依存の逆転
自立と自立の対等な関係性の親子関係が、長く続けばいいのですが、だんだんと親の世代の健康問題が出てくると、親が子どもに頼ることが多くなってくる時代です。
今までできていたことが、できなくなってくると、誰かに頼らざるを得なくなるのですが、今まで自立して頑張ってきた人にとって、力が衰えてきたことや、助けが必要になってきたことを受け入れるのは、葛藤がともなうようです・
ですから、自立していた親が、どうしても子どもに何かを頼まなくてはいけなくなった時、「最近、自分でできなくなってきたからお願いね」とは、なかなか言いづらいようです。
つい、「やってくれてもいいじゃないか!」「やるべきだ!」のように、偉そうにお願いするということになってしまうこともあります。
これ、子どもが小さい頃、依存時代に子どもが失敗したら親のせいにしていた言動や、反抗期に親にとっていた悪い態度と似ているのです。
子どもは、依存から自立へ向かって成長していきますが、親子関係において、親は最初から自立の立場で、徐々に依存へと移行していくと私は考えています。
とは言っても、後退していくわけではなく、これもまた親子関係が成長していくことではないかと思います。
そもそも自立していた親は、自分の依存が受け入れられなくて葛藤しますし、子どもは、親に頼りない部分が出てくることが受け入れられなくて葛藤します。
「私は、しっかりしている!」「私は、できる!」と思っている親と、「もっとしっかりしてよ!」「簡単にできるでしょ!」と思っている子どもという時代です。
子どもからすると、親は自分を守り、育て、教えてくれる親であり続けてほしいと、感じているし、どこかで自分よりもできる人であってほしいと思っています。
そんな親が、体力が衰えてきたり、落ち込んで不安を抱えていたりすると、「もっとしっかりしてよ!親でしょ!」と思ってしまうのです。
親からすると、子どもの前では、親であり続けたいし、強くありたいし、頼られる存在でありたいと思っています。
でも、子どもから「もっとしっかりしてよ!」と言われてたり、扱われたりすると、そんな自分を責めてしまって、素直に「これができなくなったので、お願いね」と言えなくなってしまいます。
この時代に大切なのは、子どもは親が不完全な存在であると、改めて理解し、受け入れていくこと。
親も、自分の不完全さを、隠したりするのではなく、受け入れていき、子どもにお願いする、頼れるようになっていくことです。
そのために子どもは、親に抱いていた偶像を手放していく必要があるのかもしれません。
「親なんだからできるはず」「親なんだからわかってくれるはず」「親なんだから・・・」
親も一人の不完全な人間だったのだと理解してかなくてはいけないのです。
親は、子どもが成長したことをしっかりと受け入れていくことが大切です。
いつまでも子供扱いするのではなく、親自身の不完全さを補って、助けてくれるほど成長した大人であると認めていきましょう。
私たちは、親であれ、子どもであれ、みんな不完全です。
不完全だからこそ、補い合い、受け入れ合い、サポートし合うことが必要です。
子どもの頃は、大人よりもできることがあまりにも少なすぎるので、親が子どもを全面的にサポートしますが、子どもが成長して、大人になり、親の方ができることが少なくなってくれば、サポートしてもらっていいのです。
親子関係は、親が自立、子どもが依存という関係性からスタートしますが、やがて子どもが自立するための反抗期を迎え、その後、お互いが自立しているという関係性へ成長し、やがて親が依存、子どもが自立という関係性へ成長していくものなのかもしれません。
ですから、幼い頃から自立していて、親が子どもに依存していたり、子どもが自立することを親が妨げたり、お互いを尊重できずに対等な関係性を築けなかったり、親が自分の依存を受け入れられなかったり、子どもが親の依存を受け入れられなかったりと、それぞれの時代での関係性を過ごせないと、その親子関係が、その他の人間関係にも影響を及ぼすことになってしまいます。
この記事を読んでくださっている多くの方は、自立と自立の対等な関係性を築いておられる世代なのかもしれませんね。
現在の私は、自分の子供たちとは自立と自立という関係性を構築中で、自分の親とは、自立と依存が逆転する関係性を構築中です。
親の不完全さを受け入れ、親の衰えを受け入れている真っ最中というところです。
やがて私も、自分の子どもたちとの関係性で、自立と依存が逆転する時を迎えるでしょうし、親子関係というのは、変化し成長し続けるものなのかもしれません。
(完)
- 変化する親子関係(1)〜自立と依存〜
- 変化する親子関係(2)〜反抗する時代〜
- 変化する親子関係(3)〜自立と自立〜
- 変化する親子関係(4)〜自立と依存の逆転〜