■子どもの「苦手」・「嫌」・「やりたくない」を一旦受け入れてみる
わたしには、発達障害を持つ息子がいます。とはいえ、パッと見た感じや普通に会話をしているだけだと、多くの人は息子の障害に気づきません。
小さい頃や小学生の頃は、言葉でのコミュニケーションが苦手で、自分の思っていることや感じていることを伝えウrことができず、癇癪をおこしたり、暴れたりすることもありました。親であるわたしも、息子が伝えたいことを理解できずイライラしたり、自分の伝えたいことが伝わらないことにイライラしたりすることも多く、「どうしてこんなことも分からないの!」「この子何を考えているんの?」とよく思っていました。
今では、息子も言葉で自分の気持ちを伝える力を身につけ、「オレ、10人以上の人がいるとドキドキしてしまうねん。」「初めての場所に行ったら、まず全体を見て回って何があるか知りたいねん。そうしないとめっちゃ不安になるんや。」「たくさんのことをいっぺんに言われたら、何を言われているかわからなくなるねん。」「知らない人と急にしゃべるのが苦手やから、マクドの注文とかめっちゃ緊張するねん!」というように自分の苦手なことについて話してくれます。
そんなとき、わたしは息子の主張を「そうなんやね~」「そらしんどいなぁ」「それやのにがんばってんねんなぁ」などと受けとめながら聞いたあと、こんなことを問いかけます。
「じゃあ、誰が助けてくれたらできる?」「どんなふうに助けてもらいたいの?」「どうしても、苦手なことをしないといけないときは、どうする?」「そんなに苦手なら、苦手なことをやらずに済む方法をないかなぁ・・」
息子が感じている、「苦手な気持ち」や「やりたくない気持ち」をいったん認めて、「それでもやらないといけないとしたら、どんなサポートがあればいい?」と息子と一緒に考えてみるのです。そんな話し合いに息子がのってくるのは、4~5回に一度くらいですが、それでも時折「これならできる」が見つかります。「これならできる」がわかると、チャレンジしてみようかなぁという意欲もわいてくるようです。
■「困った・苦手」は特性だとわかっていても「乗り越えて欲しい」のが親心
息子がちょっとしたことを「困った・苦手だ」と感じる理由のひとつには、生まれ持った「脳」の使い方 の特性が影響しています。でも、そんなことを知らなかったら「気が弱い子」「勝手な子」と思ったと思います。そうして、「そんなことくらい、根性で乗り越えなさい!」と思ってしまったかもしれません。
わたしたちは、子どもから大人へと成長していく過程で「甘えないで一人でやりなさい!」と育てられ、一人で生きていく力を身につけていきます。そして、親になると、同じように「ひとりでできるように」と様々なことにチャレンジさせたり、「自分でやりなさい!」と教えます。できないことに立ち向かう勇気や苦手なこともやってみる強さを身につけて欲しいとも思います。
でも、子どもによっては、優しすぎたり、繊細すぎたり、脳の使い方が違ったり、という個性を持つために、ちょっとしたことに怖れを感じたり、自信を無くしたりする子もいます。そういった子どものがんばりは、周りからは見えにくく、「がんばりがたりない」「甘えている」と言われたり、思われたりしがちです。
親としては、これくらいのことは乗り越えてほしいし、頑張って欲しいと思うのですが、子どもにとっては、がんばったけどできなかった、今も一生懸命がんばっている、でも、それをどう伝えていいかわからない、という状態が重なり、親の目から見るとやる気がないように見えたり、逃げているように見えたりするのです。
すると、親は「なんで頑張れないの!」「ちゃんとやりなさい!」と言ってしまうんですね。この状態は、親も子も苦しくて辛い状態です。
■「子どもの数だけ個性はある」から「その子独自」のやり方でいい
好奇心が旺盛で、いろいろなことにどんどんチャレンジしていく子。
安心・安全を十分に確認してから動き出す子。
たくさんの情報がいっぺんに入ってきて、整理するのに時間のかかる子。
おしゃべりが大好きでいっぱい話す子。
自分が感じている世界をただただ感じて味わっている子。
子どもの個性は様々です。「子どもの数と同じだけ、個性はある。「といえるかもしれません。
違って当然。違うのがあたりまえ。興味も表現方法も好みも一人一人全部違うんですからね。
子育て辛くなったとき、「こうなって欲しい」「これくらいできて欲しい」という親として思いを少し横に置いて、目の前にいる子どものことを興味をもって見てみることにチャレンジしてみませんか。
この子は、どんなことに、どんな形で、興味関心を示すのか?どんな表現をするのか?
といった部分に視点を向けて子どものことを眺めてみると、「へぇぇ~、この子はこういう風にするんだ~。」「こんなところに興味があるんだ~。」というように今まできついていなかったわが子の個性が見えてきます。
その子の視点や個性を「あぁそうか」と受け入れることができれば、今度は「この子が社会のルールを学ぶには○○なやり方がいいかも?」と見つけやすくなります。
■「心の余裕」は、子どもを理解して受け入れる鍵
子どもの視点や個性を受け入れるために必要なもの、それは、お母さんやお父さんの「心の余裕」です。「子育ては思い通りにはいかないもの」とわかっていても、子育ての真っただ中にいると、「○○できていないと・・」「△△くらいできないと」と思いすぎて、そうではない現実にイライラして心の余裕をなくしてしまうからです。
時には、思いっきり笑ったり、バカなことを言ったり、私だってやってるのに~と愚痴をこぼしたりして、いっぱいいっぱいになっている心を緩めて「心の余裕」を取り戻しましょうね。
次週は池尾千里カウンセラーが担当します!
お楽しみに。