頼ることで相手に肯定的な感情を感じさせてあげられる
●相手に嫌な思いをさせたくない
頼ること(助けを求めること)が苦手というお話をお聞きすることがあります。
その理由は人それぞれなのですが、「相手に迷惑かけたくないから」とか「相手に嫌な思いをさせたくないから」という理由から頼ることがしづらくなるというお話をお聞きすることがカウンセリングをしていると結構あります。
「頼られて迷惑だったなぁ」
「相談をされてしんどかったなぁ」
「嫌な経験したな・・・」
などなどの言葉は違えど、相手に嫌な思いをさせたくないという思いから、頼ること(助けを求めること)がしづらくなってしまうという理由です。
相手に嫌な思いをさせたくないと思いがでてくるというのは良い人ですね。
そのような考えから頼りづらくなってしまっているのですが、はたして相手は嫌な思いをするのでしょうか?
前提が、相手が嫌な思いをするになりすぎてはいないでしょうか?
●頼ることで肯定的な感情を感じさせてあげれる
嫌な思いはする人も中にはいると思います。
しかし、そうじゃない人もたくさんいるようです。
カウンセリングをしていると頼られて肯定的な気持ちを感じたお話をお聞きすることが多々あります。
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例えば、
ある男性がデートの最中に彼女の様子がいつもの様子といつもと違うと感じたとします。
様子が変だと思ったので「元気がないね、どうしたの?」と聞いたところ、彼女は彼に気を使わせまいとずっと隠していたけど職場の人間関係で悩みがあったことを打ち明けてくれます。
彼女は泣きながら悩みを打ちあけたとします。
彼は元気がない彼女を更に落ち込ませないように神経を削りながら、彼なりに寄り添ったり、励ましたり、アドバイスをしたりしたとします。
労力を使うわけです。
彼女は3時間ほど話したあと、
「話せて良かった、明日からまた頑張れそう」と言って、その話が終わったとします。
その時に彼はどんなことを思うのでしょう?
「3時間も楽しくものない話を長々と聞かされて良い迷惑だったなぁ」
だと思いますか?
「せっかくのデートなのに暗い時間になって一日台無しになったなぁ」
だと思いますか?
もしあなたが彼の立場だと、どんなことを思うでしょうか?
「彼女の役に立てて良かった」
そのような感想をおっしゃられるようなお話は多々お聞きします。
例え話は彼氏、彼女という恋愛関係での例え話でしたが、
恋愛関係だけの話だけではなく、友人関係、職場の仲間の関係、親子関係でも、そのようなお話をお聞きします。
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人は自分が頼られて、関わることで、
“自分は人の役にたてれる存在だ”
“自分は人の喜びなれている”
“幸せに貢献できた”
などなどの肯定的な感情を感じられることがあります。
このことを角度を変えて言うと、
頼ることで、人に良い感情を感じるチャンスを与えられるという言い方もできます。
私のカウンセリングの経験からの話だけでなく一つの文献をご紹介します。
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社会心理学者のハイディ・グラント氏は、著書の 『人に頼む技術 コロンビア大学の嫌な顔されずに人を動かす科学』にて、人を助ける行為が助けた人に良い気分をもたらす実験を紹介し、
「誰かに助けを求めることは、その相手に長期的なメリットを享受することでもあるのです。助けを求めないことは、むしろ利己的な行動だとすら言えるかもしれません。人生において、幸福感を高めるためのもっとも信頼できる機会を、相手から奪うことになるからです」
と書いています。
【引用:ハイディ・グラント 『人に頼む技術 コロンビア大学の嫌な顔されずに人を動かす科学』小島修訳(徳間書店、2019年)、72項】
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このことからも人は頼られることで肯定的な感情を得られると言えるようです。
●前提を肯定的な感情を与えるチャンスに変えてみよう
もし、前提が、頼られることで相手は嫌な思いをするんじゃないか?になりすぎてる方は、「頼られることで肯定的な気持ちになれることも多い」という前提に変えみてはいかがでしょう?
そして、“自分は人の役にたてる存在だ”、“自分は人の喜びなれている”、“幸せに貢献できた”という感情を感じるチャンスを相手に与えるつもりで頼ってみてはいかがでしょうか?
そう考えてみると良い物を与えるイメージで頼るという行動が取れるかもしれません。
良い物を与えるとイメージにすることができると、頼ることの遠慮や、躊躇感が和らげるのに役立てられるのではないかと思います。
何かのヒントや、参考になれれば幸いです。
(完)
- 負担をかけたくない自立の人〜負担をかけない為に頼ると考える〜
- 頼るのが苦手〜自分をダメさを感じるのを避けたい心理のケース〜
- 相手は断れないかもしれないから頼るのが苦手というタイプの人
- 頼ることは肯定的な感情を感じさせてあげられるチャンス